まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第198回】冬本番

2021年12月31日

■12月管理人日記

 樹々の落葉が終わるといよいよ本格的な冬となります。寒さのため霜柱は大きく育ち、10㎝以上にもなります。ササの葉には霜が朝日を浴びてキラキラと宝石のように煌めいています。
 見通しの良くなった森の南西には駿河湾と美保の松原が見え、北側には真っ白に雪化粧した富士山が見られます。殺風景な冬の森からのせめてもの贈り物と言えます。
 シカも食べ物探しに苦労しているのでしょうが、その中でも好物があるようです。キハダの樹皮です。地面に近い根ぎわの幹やむき出しになっている根の樹皮をセッセとかじって食べているのです。周りにはブナやケヤキ、カエデの仲間などいろんな木が生えていますが、かじっているのはキハダばかりです。樹皮が剥けると黄色いので「黄肌」の名前が付いたのですが、樹皮は「黄柏(おうばく)」と呼ばれ有名な胃腸薬となります。木曽の「百草」や奈良の「陀羅尼助(だらにすけ)」はキハダのエキスから作られた胃腸薬として有名です。胃腸薬以外にも薬効があるようですが、まさかシカも胃腸薬代わりにキハダをかじっているわけではないでしょうが… それでも、なにか薬効を求めているかも知れないと疑いたくなるほどにキハダはかじられています。
 「まなびの森」植樹エリアの少しひらけた場所で尖った枯れ木に干からびたものがぶら下がっていました。よく見ると干からびたものはミミズでした。と言うことは「モズの早贄(はやにえ)」です。早贄はモズの冬の備蓄食料と言う説が有力ですが、ほかにも餌を食べる時に固定して食べやすくするとか、モズの習性だとかいろいろな説があるようです。植樹エリアの樹々が育ってきて草原性のモズをあまり見かけなくなった「まなびの森」ですが、少しひらけた場所にはまだモズがいることを証明してくれました。
 冬はキノコにはなかなか出会えません。そんな中で硬いサルノコシカケの仲間がみられます。古い倒木にはまるで瓦葺の屋根かと思うほど重なってビッシリとキノコが生えています。名前は見たままで、カワラタケです。
 2021年もいよいよ終わりとなります。今年1年ご愛読ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • 真冬の風物詩、大きな霜柱

  • ササの葉にキラキラと霜の芸術が出来ました。

  • 木立の向こうに駿河湾と「美保の松原」がみえます

  • 真っ白に雪化粧した富士山も木立の向かうに

  • シカはなぜかキハダの樹皮が大好きなようです

  • 植樹エリアで見かけたモズの早贄(はやにえ)

  • 古い倒木に瓦葺屋根のように重なって生えるカワラタケ

【第197回】前半は意外に暖かかった11月...

2021年11月30日

■11月管理人日記

 11月にはいるとメッキリ寒くなるのが普通ですが、前半は小春日和の暖かい日が続きました。そんな中、今年最終の14校目となる「自然体験教室」を無事終えることができました。当日の午前は本降りと言う天気予報のため、「教室」を午後にずらしたことで森での活動ができました。子どもたちが森を歩きながら思い思いの落ち葉を拾い、それをフレームに挟んで日にかざすと素敵な「森のステンドグラス」が完成します。
 先月ご紹介した落ち葉が甘い薫りを漂わせるカツラですが、巨木が「フォレストアーク」のすぐ近くにあることを不覚にもいままで知りませんでした。「フォレストアーク」の前に直径20㎝ほどの若いカツラがあるのですが、反対の裏側になんと直径1mを越える「カツラの親分」が生えていたのです。
 森の中でひと際鮮やかに紅に染まっている一角があります。メグスリノキと言う樹で、葉は3枚の複葉なので一見分りづらいですがカエデの仲間です。メグスリノキはその名の通り日本で古くから小枝や葉を乾燥させたものを煎じた汁を眼病の洗眼に用いたことに由来します。科学的にも炎症を抑える、血行を良くするなどの薬効が認められています。メグスリノキの落葉が森の中でも一番最後の方なので、落葉シーズンの終わりを告げる樹でもあります。そして、森はウラジロモミやヒノキ、広葉樹に付いているヤドリギやツルマサキだけが青々としている冬枯れの風景となります。
 小春日和の暖かさが続いたお蔭か、陽だまりにいるとこの時期には珍しいアキアカネが飛んできて作業ズボンの上に留まって動こうとしません。
 そして、「フォレストアーク」の戸締りをしている夕暮れにザトウムシが餌であるイナゴを捕まえたところを見かけました。普段はゆっくりと動くザトウムシですが、イナゴを捉えているのには少し驚きました。ザトウムシは「千と千尋の神隠し」に出てくる「窯爺(かまじい)」のモデルと言われているクモに似た虫です。
 寒い冬枯れとなり今年もいよいよ最後の月を迎えようとしています。

  • 「自然体験教室」で出来上がった「森のステンドグラス」

  • 丸ハート形をしたカツラの落ち葉は甘い薫りを漂わせます

  • 「フォレストアーク」そばのカツラの巨木

  • 鮮やかに紅葉したメグスリノキ

  • メグスリノキの落ち葉は複葉(3枚の小葉)

  • イナゴを捉えたザトウムシ

  • 小春日和の暖かさに誘われてきたアキアカネ

  • ブナの巨木「千手観音ブナ」は葉を落とし、ツルマサキが青々と

  • 取りついた樹(多分イタヤカエデ)が倒木になっても力強く残っているツルマサキ

【第196回】晩秋から初冬の季節は

2021年10月31日

■10月管理人日記

 10月になると冬の訪れを告げる雪虫がフワフワと飛び、丸いハート型をしたカツラの葉が甘いカラメルの薫りをフォレストアーク周辺に漂わせ始めます。カツラの甘い薫りは葉が緑のあいだは気まぐれに時たまですが、黄色く色づきが進むに連れて毎日のように薫るようになります。
 アズマヤマアザミがかわいらしい花をつけています。山の中で作業をしていると足にチクチクと突き刺さるものがあります。アズマヤマザミの葉の鋭いトゲがズボンを通り抜けてくるのです。チョッと憎らしいアザミですが、花は大層かわいらしいです。
 強い風に煽られて枝が折れたのでしょう、ウラジロモミの球果が落ちていました。持ってみるとずっしりと重いです。ウラジロモミはちょうど「まなびの森」のある標高1,000mあたりから1,700mあたりまで分布しています。「まなびの森」のウラジロモミは国有林が植林したものです。ウラジロモミの巨木は諏訪神社の「御柱」に利用されていることで有名です。
 苔むした樹にヌメリスギタケが発生しています。ナメコに似た食感の美味しいキノコです。そして、地面に半分埋もれて朽ちかけたホオノキの実から黒く尖った堅い棒状のものが生えています。ホオノキの実から生えるホソツクシタケと言うキノコです。
 10月後半になるとブナやイタヤカエデが黄色く、オオモミジやイロハモミジは紅く色づきます。太陽高度が低いので、斜めに射す日差しにキラキラと森が鮮やかに彩られます。
 2ヶ月近く通行止めとなっていた「富士山スカイライン」が開通し、小学生が訪れ、社員ボランテイア活動もできるようになりました。
でも、季節は寒く静かな冬へと季節が移っていこうとしています。

  • アズマヤマザミ(東山アザミ)の花

  • ウラジロモミの球果(マツボックリ)は上向きに

  • ヌメリスギタケが苔むした樹に発生

  • ホオノキの朽ちかけた古い実から発生するホソツクシタケ

  • 緑から少しずつ紅葉が進んでいく(ブナの葉)

  • 朝の陽ざしに照らされた巨木ブナ

  • 青空にオオモミジの黄色と赤のグラデーションが映える

  • 葉の切れ込みが細かいコハウチワカエデは日差しに照らされてレースのように

ページの先頭へ戻る