まなびの森通信

まなびの森通信

自然あふれる富士山2合目の「まなびの森」フォレストアークから
四季折々のようすやボランティア活動についてお伝えします。
みなさん是非「まなびの森」へ足をお運びください。
お待ちしております。
富士山「まなびの森」フォレストアーク副館長・管理人
沢田明宏

【第216回】夏のよそおい、梅雨の季節

2023年 6月30日

 ウツギやエゴノキが白い花を沢山咲かせ、サンショウバラのピンクの花弁と美しさを競うようになると「まなびの森」も梅雨に入ります。ウツギのそばやエゴノキの下では甘い薫りに包まれ、思わず顔がほころびます。
 ヒメシャラとそれよりもう1廻り大きな花を咲かせるヒコサンヒメシャラもたくさん白い花を咲かせますが、樹上高い所で咲くので地面に落ちて来て初めて分かります。
 光合成をしない無葉ラン(菌従属栄養)のキバナノショウキランは毎年違う場所、それも予想できないほど離れたところで花を咲かせるのがとても不思議です。
 ちょうど目の高さで沢山のサルナシが花を咲かせました。秋にはミニ・キーウィーフルーツの美味しい実が食べられそうで、今から楽しみです。
 長老シナノキの傍に特徴ある野鳥の羽根が散乱していました。模様などからキツツキの仲間、アカゲラと分かりました。羽根が噛み切られているので猛禽類に襲われたのではなく、イタチの仲間テンに襲われたのでしょう。
 今年はコロナ禍の行動制限が緩和されたお蔭で「まなびの森」に子どもたちの賑やかな声が戻ってきました。この3年間は自然体験教室に来た子どもたちは静かに食事をしていましたが、今年はとても元気におしゃべりをしながら楽しそうに過ごしていました。
 また、富士市の団体による観察会にもたくさんの方にお越しいただき、富士山南麓の豊かで多様性に富む自然を堪能していました。
 6月22日には東京で富士山の世界文化遺産登録10周年の記念式典が盛大に行われました。10年前のこの日に世界遺産登録決定がプノンペンで発表されたのでした。
 こうして6月が慌ただしく過ぎていくうちに、「まなびの森」は夏山となってきました。

  • 「まなびの森」の6月を代表する花の1つ、ウツギ

  • エゴノキが沢山花を咲かせています

  • フォッサマグナ特有のバラ、サンショウバラ

  • 小さなコップ状のキノコ、シロキツネノサカズキ

  • 普段は林床に生えるクモキリソウが苔むした樹の幹に

  • 長老シナノキの傍に散乱していたアカゲラの羽根

  • 自然体験教室の子どもたちが作った「葉っぱのグラデーション」

  • 楽しそうに昼食を摂る子どもたち

  • 観察会に参加した皆さん

  • 今年はバイケイソウが沢山咲いていて、辺りに昔の粉せっけんの匂いが漂います

  • ヒコサンヒメシャラ(左)の花はヒメシャラ(右)より一廻り大きい

  • フォレストアークのすぐ近くに咲いたキバナノショウキラン

  • サルナシの花が沢山咲いたので秋が楽しみです

  • 世界文化遺産登録10周年記念式典の会場にて @東京

  • 世界文化遺産登録10周年記念ロゴ

【第215回】新緑からドンドンと深緑に

2023年 5月31日

 5月に入って清々しい新緑の季節となり、晴れた日には木洩れ日が鮮やかでマイナスイオンが溢れています。林床にはヤマシャクヤクやヤマクワガタ、クルマバソウ、ヤマトグサの花が咲き、サラサドウダンやカマツカと言った樹木も花を沢山つけています。中でも、ヤマトグサは日本固有種であり、現在放映中の朝ドラの主人公である牧野富太郎博士が第一号に和名をつけた植物として知られています。地味な花ですが、雄蕊(おしべ)がカンザシの房飾りのように垂れ下がり、風にユラユラ揺れている姿はなんとも可憐です。牧野博士が日本を代表する植物として命名したヤマトグサですが、日本各地で絶滅危惧種に指定されていると言う悲しい現実があります。
 今年は沢山のブナの実生が林床に芽生えています。場所によっては50㎝四方に30本以上芽生えているところもあるくらいです。ブナの実は多くの森の動物のエサとなります。そして、数年に1回動物が食べきれないほどたくさん実を付けて子孫を残そうとします。
 去年、初めて「まなびの森」で見かけたキイロスッポンタケが今年もたくさん発生しました。粘液状の胞子に異臭があり、その臭いに誘われて虫がやって来ます。キイロスッポンタケは虫媒花と同じ仕組みで子孫を増やしています。
 森が深い緑になっていくにつれて、オオルリ、コルリ、キビタキ、カッコウ、ツツドリなどの夏鳥の啼き声も賑やかになってきます。「まなびの森」はもうすぐ梅雨を迎えようとしています。

  • 澄んだ青空に新緑が目に眩しい

  • 林床を覆いつくすバイケイソウの大群落

  • 日本を代表する草であると牧野富太郎博士が命名したヤマトグサ

  • 今年はブナの実生が大発生 この写真の中だけでも10数本あります

  • キイロスッポンタケ 緑黒い胞子粘液が雨で洗い流され、色鮮やかな傘がハッキリ見えます

  • 今にも開花しようとする白いボールのようなヤマシャクヤクの蕾

  • ヤマシャクヤクが花開くとひと際美しい

  • ヤマクワガタの花をいくら眺めても名前の由来はわからない 実ができて初めてわかる

  • 可憐なサラサドウダンが今年はたくさん花を咲かせました

  • カマツカの花はきれいな梅鉢型

  • 5㎜ほどの小さな花を咲かせるクルマバソウ

  • 枝の先端でしきりに囀る若いコルリの雄

  • 背中や胸の黄色が鮮やかなキビタキは森の中では意外に見つけにくい
    ※野鳥の写真はいずれも先月に引続き「野鳥の会」会員の望月さんのご厚意で提供していただきました。

【第214回】春爛漫から新緑の季節

2023年 4月30日

 暖かな3月から一転し、4月に入ると肌寒い日が続きました。4月8日には最低気温が氷点下となり、地面には沢山の霜柱が出現しました。思い返せば、4年前「まなびの森」に赴任した最初の年、4月に雪が積もって通勤できなくなったことがありました。
 朝夕が肌寒い所為でしょうか、フデリンドウがなかなか開花せず、4月半ばにやっと可愛らしい花を開きました。マメザクラやほかの草花は2週間以上早く咲きはじめたのに… 今年の気温変化にフデリンドウはついていけなかったのかもしれません。
 マメザクラが満開になり、「まなびの森」入口のゲートにあるトウゴクミツバツツジが同時に咲き出したのには驚きました。この4月で5回目の春を迎えた訳ですが、マメザクラとトウゴクミツバツツジが同じ時に咲いているのは初めてのことです。
 春になって小鳥たちも忙しく啼き交わし、巣作りの準備に余念がありません。シジュウカラがシカの毛やコケなどが混ざったものを咥えて運んでいた時、フワフワと落ちて来たものがありました。咥えていた巣材の一部が嘴の先からこぼれてしまったようです。
 「まなびの森」は春真っ盛り、まもなく新緑の季節です。

  • 暖かな日が続いたと思ったら、急に冷え込んで 4月8日朝には霜柱が出現

  • マメザクラがほぼ満開に

  • トウゴクミツバツツジがマメザクラと共演しています

  • ブナなどの根に寄生するヤマウツボ

  • チョッと可哀そうな名前のヨゴレネコノメソウ 「汚れ」の由来は葉っぱを見ればわかる

  • シジュウカラが咥えていたシカの毛やコケなどの巣材がフワフワと落ちてきました

  • ヤマエンゴサクはケシ科の可愛らしい花 一目見た姿はスミレの仲間か、と勘違いします

  • モクレンの仲間のコブシの白い花

  • 春の訪れを告げるフデリンドウの可憐な花は今年は少し遅咲き

  • 小さな白い花はタニギキョウ 良く観察すると秋に咲くキキョウとよく似ています

  • ゴジュウカラが枯れ枝の中の虫を探しています

  • メジロが芽吹いた新芽を啄んでいます ※野鳥の写真はいずれも「野鳥の会」会員の望月さんのご厚意で提供していただきました。

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