ニュースリリース(2017年)

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2017年03月09日

住友林業株式会社
北野天満宮

~菅原道真公ゆかり 平成の飛梅とびうめプロジェクト~
北野天満宮の御神木「紅和魂梅べにわこんばい」の培養苗が里帰り
DNA分析により接ぎ木の可能性も

 住友林業株式会社(社長:市川 晃 本社:東京都千代田区)は2009年より『北野天満宮“御神木の梅”研究開発プロジェクト』に着手し、御神木の梅に関する調査、研究を行ってきました。

 この度、2015年に組織培養に成功し、その後大切に育ててきた京都・北野天満宮の御神木「紅和魂梅」を、北野天満宮に里帰りさせます。

 また、樹齢300年以上と推定される「紅和魂梅」の遺伝子を調査した結果、接ぎ木によって増殖された可能性が高いことが科学的に証明されました。

 「紅和魂梅」は菅原道真公が大宰府(現、大宰府天満宮)へ赴任した際、道真公を慕って一晩のうちに大宰府に飛来したという“飛梅伝説”伝承の木と言われています。今回の里帰りは北野天満宮および全国の天満宮・天神社の歴史文化の継承に大きく寄与するものと考えています。


■ 御神木「紅和魂梅」接ぎ木の可能性

 御神木である「紅和魂梅」の保護・保存の取り組みを進める過程で、DNA技術で分析したところ、地上部(葉)と地下部(根)はそれぞれ異なる遺伝子型を持っていることが判明しました。このことから「紅和魂梅」は接ぎ木で増殖されたと推測されます。このような報告はこれまでないことから、今後、古木や名木などを本手法で調べることにより、栄養繁殖により受け継がれてきたか否かを判別できる可能性が示唆されました。また、「紅和魂梅」の樹齢は350年と推定されていることから、350年前には現在の御神木の先代の御神木から接ぎ木により増殖が行われていたこととなります。今回の結果により、北野天満宮では貴重な御神木の形質が変わらないよう、接ぎ木により御神木を受け継いできたと考えられます。

 植物の増殖技術に関する歴史研究者の報告によると、接ぎ木に関する最も古い記述は、平安時代に編纂された『月詣和歌集(ツキモウデワカシュウ,平安後期)』にある八重桜の接ぎ木です。梅については平安時代後期~鎌倉時代の書物に接木や挿し木といったクローン増殖の記述があります。今回の研究ではDNA分析と推定樹齢から、江戸時代までの接木の歴史を証明することができましたが、今後、さらに樹齢の高い樹木のDNAを調べることにより、接木の歴史を遡ることが可能と考えられます。

 

 

■  今後の取り組み

~「紅和魂梅」を全国へ、そして後世へ~

 このたび里帰りした苗は、紅和魂梅の保護・保存に加え、京都の景観維持や文化の継承に大きく寄与するものであると考えています。本プロジェクトチームでは本宮にある他の梅についても組織培養技術での保護・保存を進め、北野天満宮の景観を後世に渡って守り、皆さまに楽しんでいただけるよう、引き続き調査研究を進めます。

 また住友林業では、全国の梅の名木・古木の増殖に関するご相談をお受けしています。詳しくは、担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト http://sfc.jp/flrc/)までお問い合わせ下さい。

 

■  組織培養による増殖を行なった背景とこれまでの経緯

 近年、ウメやモモなどのバラ科植物に広く感染する“ウメ輪紋ウイルス(plum(プラム) pox(ポックス) virus(ウィルス) 以下、PPV)が世界各地に広がっており、2009年には東京都青梅市の梅で国内初のPPV感染が確認されました。PPVに感染した植物は葉や果実の表面に斑紋が現れ、商品価値が失われてしまいます。治療法や予防薬は現時点で見つかっていないことから、これまでに全国で40万本以上のウメがPPVにより伐採・焼却されています。

 北野天満宮は予防策を強化していますが、不測の事態を想定し、歴史的に貴重な紅和魂梅を後世に引き継ぐべく、様々な樹木の組織培養・苗生産技術の成功実績を持つ住友林業へ技術協力依頼がありました。

 研究開発に携わった住友林業筑波研究所は、これまでに成功したサクラなどの培養実績や文献を参考に組織培養による紅和魂梅の増殖に取り組み、5年の歳月を経て2015年、成功に至りました。その後、筑波研究所にて培養苗を育成し、2016年4月には研究所内の畑に定植し約1年育成を続けました。苗は順調に生育し160cmほどの高さまで成長したことから、北野天満宮へ里帰りすることとなりました。

今回の里帰りが実現したことにより、紅梅の培養苗の大量生産に目途がついたと考えており、今後は他所の紅梅についても受託を始める予定です。


【参考資料】

■ 「平成の飛梅プロジェクト」 これまでの取り組み

2009年 4月 東京都青梅市の梅で国内初のPPV感染が確認される
2009年 12月 北野天満宮 “御神木の梅” 研究開発プロジェクトに着手
調査研究方針の決定、保護・保存対象木の選定
2010年~2011年 組織培養技術の予備研究・開発に着手
2012年 1月 北野天満宮 “御神木の梅”からの材料採取を開始
2015年 2月 組織培養による御神木の梅の増殖に成功



■  組織培養法による増殖技術概要

【組織培養の流れ】

① 冬芽を採取し、その中から芽の分裂組織(茎頂けいちょう部)だけを顕微鏡下で摘出する。

② 御神木の梅用に開発した培養液を入れた試験管中に茎頂部を入れ培養することにより、茎頂部は大量の芽の塊(多芽体たがたい)に成長する。写真1

③ 多芽体を固体培地で培養することにより、多芽体から芽が伸長する。写真2

④ 伸長した大量の芽(シュート)を1本ずつ切り分け、発根を促す培養液を添加した人工培養土に植えつけると、4週間程度で発根し、完全な植物体(幼苗)が再生される。ここまでは、無菌条件下で行なわれる。写真3

⑤ 外の条件に慣らすため温室内で育苗する(順化処理)。写真4

⑥ 温室内で十分に成長した苗木は畑で育成する。写真5

⑦ 苗木は畑で育成することによって、大きく伸びる。写真6





■  DNA分析法の概要

【DNA分析の流れ】

① 葉および根からDNAを抽出する。

② マイクロサテライト1を含む領域をPCR2により増幅する。

③ 増幅したDNAをDNAシーケンサにより分析する。

1 ゲノム上に存在する反復配列(例:ATATATAT)。多型性が高く、ヒトの個体識別等に利用される。

2 ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)。2時間程度で目的のDNAを100万倍以上に増幅することが出来る手法。



根の組織の採取



【結果】

 ゲノム中に散在するマイクロサテライトを含む領域の内、11領域を調べたところ、葉と根で全て異なる遺伝子型を示した。例として2つの領域の結果を以下に示す。


※横軸はDNAの長さを表し、右に行くほどDNAが長い。マイクロサテライトの反復回数の違いにより、DNAの長さが異なる。葉と根でDNAの長さ(赤矢印のピーク)に違いが見られる。


以上

≪リリースに関するお問い合わせ先≫

住友林業株式会社

コーポレート・コミュニケーション室 橋本・大西

TEL:03-3214-2270

北野天満宮社務所 神原・東川

TEL:075-461-0005

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