その担い手たちの横顔 Designers File

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菊地 恭子 インテリアコーディネーター

お客さまの想いや人生観を形にする

天、地、人――インテリアコーディネートを考える時、私はこの3つのことを意識します。天は、お客さまの想い。インテリアは、その方が積み重ねてきた経験や知識、そこから生まれたものの感じ方や好み――すべてが表現されるものだと思います。地は、建物が建つ場所。そこにしかない光や空気、眺めがあります。そして人。家具や絨毯、建具や照明器具などの一つひとつにつくりあげた人の技や伝統が息づいています。天、地、人、それぞれの視点からお客さまに最もふさわしいインテリアをご一緒に考えていきます。

Work style

  • お客さまの想いやお人柄を知る
  • 建築地に立ち、光や風を体感する
  • ものづくりに携わる人の心を受け継ぐ

Design

最近のコーディネート実例から

静岡県 Kさま邸

長年にわたり世界を舞台に人材育成に携わってこられたKさま。人生の集大成として、日本の文化や心を伝える“国際セミナーハウス”のような別荘を計画されました。その想いにお応えするインテリアとは?――私にとっても大きなチャレンジでした。

お客さまの想いやお人柄を知る

住まいの新築という人生の大きなプロジェクトの中で、お客さまが何を求めていらっしゃるのか。いろいろな考え方、お好みの中から最もその人らしいものを選び出しご提案していくためには、まずお客さまの想いやお人柄、これまで歩んでこられた人生やこれからの夢をしっかりと受けとめることが必要だと思います。

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和室には本美濃和紙を使った3mの特注照明をご提案しました。ちょうどユネスコの無形文化遺産に日本の手漉きの和紙技術が登録されたというニュースが報じられたときです。Kさまの「伝統の継承」という想いと共通するものがあると考えました。

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「人が成長するには、仲間とのチームワークや良い刺激を与え合う人間関係が大切だ」というKさまのお話を念頭に、2階のラウンジはグラス片手におしゃべりをしたり、ソファでくつろいだり、大勢の人が自由なスタイルでコミュニケーションを楽しめるレイアウトを考えました。

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ラウンジのペルシャ絨毯は「世界の文化はシルクロードを通って遠く日本まで伝えられた。世界はつながっている」というお話のきっかけにながればと思ってご提案しました。

建築地に立ち、光や風を体感する

インテリアコーディネートは、机上のデザインワークとして進めることも可能です。しかし私はできるだけ現地に赴き、その土地ならではの光や風、空気を体で受けとめ、また歴史を知るようにしています。家を建ててそこで暮らすということは、その環境の中で新たな関係をつくることだと思うからです。

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2階ホールの窓は、この土地の花であるシャクナゲ、マメザクラ、アセビをデザインのモチーフにしたステンドグラスにしました。朝の光が静かなくつろぎの時をつくります。

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建築地は標高800mの高原で、夜は深い闇に閉ざされます。その場所にふさわしい「原始的な灯し火」を照明計画のコンセプトにしました。2階ラウンジの勾配天井には時間を掛けて探したスペイン製のペンダントを吊りました。

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玄関ホールには、たいまつのようなシンプルなデザインのブラケットライトを選びました。漆喰の壁が光をやさしく受けとめます。

ものづくりに携わる人の心を受け継ぐ

家具や照明器具、カーテンなど、インテリアコーディネートは、ものを選んで組み合わせていくことです。一つひとつのものにどんな技や想いが込められているのか――表面的なデザインだけでなく、その成り立ちをお伝えすることを心掛けています。それが新しい発見につながり、より愛着を持っていただけることにつながるからです。

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欄間には組子を採用しました。ダイニング側の長押(なげし)に入れた間接照明の透過光が細工の美しさをさらに引き立てます。

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手洗いの鉢に用いたのは日本を代表する陶器である有田焼です。間接照明の光でやさしく照らしました。

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数寄屋建築独特の下地窓の趣を楽しむ丸窓。竹を編み込んでいます。イサムノグチのスタンドを合わせました。

Photo gallery

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菊地 恭子 インテリアコーディネーター

コーディネートを終えて Kさまは、日本人ならではの気遣いや和の心を胸に、生涯を賭して世界を渡り歩いたビジネスマンでいらっしゃいます。「海外から招いたゲストに日本のすばらしい伝統文化を紹介しながら、大いに語り合いたい」というご要望に、プロジェクトに関わった全員がそれぞれの専門分野の知識や技術力を総動員し、Kさまへの尊敬と共感を胸にインテリアをつくりあげていきました。お引き渡し後「ここには長年の私の想いを形にしてくれた皆さんの努力の跡が数多く残されています。本当にありがとう」と嬉しい言葉をいただくこともできました。私にとっても、新たに多くのことを学んだコーディネートであり、このような機会に恵まれたことに、心から感謝しています。Kさまの想いがこの住まいとともに次の世代へと、受け継がれていくことを願っています。

菊地 恭子 インテリアコーディネーター Kyoko Kikuchi

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