その担い手たちの横顔 Designers File

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河村賢 建築士

対話を重ね、お客様に学ぶ

設計の仕事は、お客さまを知って初めてできる行為です。全霊をもってお客さまに向かい、お客さまに学ぶ気持ちをもって対話を重ねます。同時に、設計担当者として共感と信頼をいただかなければなりません。私が発する言葉や、私が持っている知識など、一つひとつが、その試金石になるという気持ちでお客さまと向き合います。

Work style

  • お客さまの生き方、美意識、その人生に学ぶ
  • 都市部では上からの採光を工夫する
  • 街と家をつなぐデザイン外構をデザインする

Design

最近の設計から

東京都 Kさま邸

Kさまは茶の湯の世界に親しみ、時に講談師として舞台に上がります。奥さまは、世界を旅して古今東西の文化に触れ、美の世界に遊びます。お二人が積み上げられてきた深い世界と洗練された美意識――対話の中でそれを学び、そこから私なりに空間を構成していくことが必要でした。

お客さまの生き方、美意識、その人生に学ぶ

お客さまに向かい合い、お客さまに学ぶことが設計のスタートです。しかし、ご夫婦の間で、好みやご要望が異なることは少なくありません。会話を積み重ね、その共通項を見いだしていきます。

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茶室は一般には北側に配置されることが多いのですが、居室として使うことも考慮して南に配置しました。細部のデザインや納まりは「不審庵」をお手本にしながらも、現代風のアレンジを加えています。

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水屋のしつらいは、細部の決まりを改めて学びながら機能的に作りました。

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茶庭は、茶室へ向かう精神的な導入部として、とても重要です。南側は道路があり、そのままでは茶庭が道路に続いてしまうので、周囲を高い格子の塀で囲いました。

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にじり口も本格的にデザインしました。しかし、茶室は生活空間につながっており、防犯等の配慮が必要です。そこで、にじり口の板戸の外にサッシを設けました。

都市部では上からの採光を工夫する

光は住まいの重要な要素です。都市部の建築で、近隣の状況から大きな窓を設けることができない場合は、上からトップライトで採光、その光をガラスを通して室内に回します。

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窓は通り側を避け、2カ所にトップライトを設けて上から光を採りました。ダイニングは1階中央にあり暗くなりがちですが、真上のトップライトから光が降り注ぎます。

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通りから室内の生活の様子を見せないようにしたいというご要望におこたえしながら、上からの採光で、明るいリビング・ダイニングを実現しました。

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トップライトから採った光を、大きなガラスの仕切りを通して玄関ホールに導きました。上からの柔らかな光が、まるで美術館のように絵をやさしく浮かび上がらせます。

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リビングの上には「光の通り道」を設け、2階のバルコニーに落ちる光を1階にも導くようにしています。ソファに腰を下ろすと、真上から柔らかい光がたっぷりと注ぎます。

街と家をつなぐ外構をデザインする

新たに誕生する建物は街並みを構成します。たとえ窓は大きく開けられなくても、建物の形や外構の工夫で、外に閉じながらも街とつながる工夫は常に必要だと思っています。

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近隣や往来からリビングの内部が見えるのを防ぐため、植栽による「カーテン」と深い軒で視線を遮りました。テラスを白いタイル張りにすることで反射光を室内に導きました。

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リビングは玄関よりもさらに奥に配置して、通りからの視線が届きにくいようにしています。それによって生まれた広い軒下空間は、さまざまな用途に使えます。

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周囲から住まいの中が見えないようにしたいというご要望から軒を深く出しました。プライバシーを守りながらも、街とのつながりを意識した外構デザインにしています。

Photo gallery

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河村賢 建築士

設計を終えて 私はご夫妻から多くのことを学びました。学ぶことなしに設計はできませんでした。お客さまの考えを受け止め、学び、自分にできることは何かと考える。そして、まごころを持って線を引く。それがよい設計を導く条件だと思います。お引き渡しの時に、空から落ちてくる光がダイニングを満たしている光景を見たとき、苦労はすべて報われました。この光がご家族をいつまでも包み続けることを願っています。

河村賢 建築士 Satoshi Kawamura

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