多い時は30人もの仲間が集まってホームパーティを楽しむというSさま。新たに入手された土地は、高台ならではの眺望が大きな魅力です。プライバシーを守りながら、家族や友人と楽しく過ごせる住まいを希望されていました。
土地には、その土地ならではの魅力があります。それは、日当たりや心地よい風、周辺の豊かな緑、あるいは雄大な眺めなどです。その土地のもつポテンシャルを受け止める感受性をもつことが、設計担当者に託された役割だと思います。
ダイニングとリビングを、素晴らしい眺望の開けている東側に設け、いずれも大きな開口部でウッドデッキとつなぎました。街を眺めながら、くつろいだ時間を過ごしていただけます。
玄関ホールはそのまま和室に続き、大きな掃き出し窓の向こうには街の眺めが広がります。東に開けた高台という土地の魅力を最大限活かして、住まいのどこからでもその眺めが楽しめるようにしています。
道路は西側にあります。こちら側にガレージと玄関を設け、プライバシーを守るために窓は最小限に抑え、さらに格子を使って壁面をすっきりと整えました。セミオープンの外構計画とし、道路と建物の境界は主に植栽でつくっています。
「ごちゃごちゃさせない」ということをいつも考えます。いろいろな要素を盛り込みすぎると、大事なことか隠れてしまうからです。お客さまの要望を整理し、建築士としての私の思いも込めて、バランスを取りメリハリのあるデザインを目指します。
水まわりを2階に上げて2階をプライベート空間、1階をパブリック空間として、上下階で用途を明確に分けました。1階は、吹抜けのリビングと階段スペース、ダイニングを一体のものとしてデザインし、大勢で楽しめるようにしています。
ダイニングは階段スペースとともにシンプルにまとめ、人が主役となって楽しく過ごせる空間にしています。玄関ホールから続く床はダークオーク。表面に凹凸を付けた質感の豊かなものです。素材や色の種類も抑えています。
設計を進めながら常に繰り返す問いがあります。それは「心地よい空間になっているか?」ということです。光や風の入り方、窓の外の眺め、他の空間とのつながり、耳に聞こえてくるもの、照明をつけた時の夜の雰囲気……包容力のある空間をつくります。
この土地ならではの眺望を最大限活かすために、ダイニングは全開口型のサッシでウッドデッキとつなげました。開け放った時の開放感は格別です。ウッドデッキと一体の空間になるので、大人数でのパーティも楽しめます。
キッチンはオープンスタイルで、吊り戸棚などは設けていません。ここに立つと、ダイニングとリビングの大きな窓越しの眺めや、右手の窓からの庭の眺めが楽しめます。
2階のプライベートスペースからはさらに雄大な街の眺めが楽しめます。吹抜けを囲む回廊は、手すりにもたれながら景色を楽しむ特等席です。
玄関ホールの正面の和室は、引き戸を閉めれば独立します。夜は室内の照明が障子を明るく浮かび上がらせ、玄関から見ると大きな“行灯(あんどん)”のようにみえます。
ウッドデッキをL字型に囲むダイニングとリビングは、いずれも全開口型のサッシとしているので、開け放てば室内にいても大きな開放感が得られます。
ダイニングは街を見晴らすウッドデッキ側だけでなく、南の庭に向かっても大きな開口部を設けています。こちら側の緑の眺めも楽しめます。
階段と2階ホールの手すりは、細いスチールをシンプルにデザインしました。眺望や光を妨げず、明るく伸び伸びとした空間を演出します。
玄関ホールに続く和室は、縁なしの畳を使い周囲を板敷きにしました。和の空間ならではの端整な美しさが、お客さまを心地よく迎えます。
リビングの吹抜けの壁はタイルを張ってインテリアのアクセントにしています。使っているのは外壁と同じグレーで質感の豊かなもの。素材の種類や色を抑えることで、落ち着いた雰囲気の住まいにしています。
道路と建物の間に高い塀は設けていません。窓の配置の工夫や格子の活用、そして植栽の配置によって、道路と建物との間に緩やかな“間合い”を取っています。プライバシーを守りながらも、街に開かれ、街並みを美しく彩る外観です。