建ぺい率※が40%に定められた住宅地での新築です。空地(庭)として敷地の60%を残すことになりますが、それをいかに室内空間と融合させ、広がりとゆとりのある住まいにするかがテーマになりました。
※建ぺい率 敷地面積に対する建築面積(建物の上から平行光線をあてたときに地面にできる建物の影の面積)の割合。仮に50坪の敷地で建ぺい率40%であれば、建築面積は20坪が上限となります。
敷地の特徴を詳細に把握することは、設計の絶対条件です。道路との関係、日当たりや風向き、周囲の建物や街並、車や人の通行量……お客さまのご要望を念頭に敷地の状況をじっくりと観察していけば、どこにどのような用途の空間を配置すべきか、その答えが浮かび上がってきます。
敷地の前の道路は「抜け道」として利用されているため、比較的交通量が多く、人通りもありました。そこで大きな開口は設けず、手前と奥に2枚の壁を立てて視線を防いでいます。そしてこの壁が建物外観のアクセントとしても魅力的なものになるように、質感の豊かなタイルを使い、植栽スペースを設けました。
道路側の壁の一部は縦格子とし、視線を遮りながら光を採り入れ、風を通しています。また、部分的に格子を使うことで道路側の壁の大きさを抑え、植栽とともに街並にやさしい表情をつくりました。
格子の内側は主庭と並ぶもう一つの「東の庭」です。ダイニングの正面になるように配置しています。またこの庭はガレージ側から玄関ホールに入る通路でもあります。
リビングの正面となる南側には主庭を取りました。壁を立てることで道路からの視線を遮ります。また、隣地との境界に沿って背の高い木を植え、プライバシーを確保しています。
室内空間が心地よいものであるためには、光がたっぷりと差し込み、また、窓の外に心安らぐ眺めが広がっていることが必要です。たとえ限られた面積であっても、外への広がりのある空間は、ゆとりを感じさせてくれます。
この敷地は東南の角が最も視線が抜ける場所でした。そこでここに吹抜けを設け、2面の大きな窓からたっぷりと光を採り入れました。天井の木やタイル壁を外に延長して内と外のつながりを強め、視線を外に誘って広がりが感じられる空間にしました。
「リビングとダイニングは別に」というご要望がありました。しかし、それぞれを独立した個室にすると狭い印象になるので、間に、壁に引き込める戸を設けました。必要に応じて独立させることができます。開けておけば、リビングの吹抜けから採り入れた光がダイニングに届き、また、ダイニングからリビングの外の庭を眺めることもできます。
ダイニングは東の庭に臨み、こちらから明るい光を採り入れます。掃き出し窓もできるだけ大きなものを採用しました。朝、2階の寝室からLDKに向かって階段を下りながら、気持ちのよい朝の光を感じることができます。
せっかく注文住宅を建てていただくのですから、「平均的」で特徴のない住まいではなく、お客さまのこだわりを貫いた「見せ場」のある住まいにしたいと思っています。お客さまをお迎えした際に「ここ、いいでしょう?」と自慢できるようなポイントをご一緒につくります。
外壁のタイル壁をそのまま延長して室内の壁に使いました。吹抜けを彩るこの大きな壁が、リビングの見所です。タイルの茶色は22年の長寿を全うした茶色の飼い猫へのオマージュとしてご夫婦が選ばれたものです。
イギリスのコッツウォルズ地方特産の天然石「コッツウォルズストーン」は、ガーデニングがお好きな奥さまがぜひ使いたいとおっしゃっていたものです。外側のタイル壁の足もとに積んで、植栽スペースをつくりました。前の道路を歩く人にも大変好評だそうです。
2階バルコニーはタイル壁と接するところをシンプルに納めて、浮遊感のあるデザインにしました。ここだけを白い塗り壁の仕上げとし、また、透明感のある手すり壁を使って外観のアクセントにしています。
独立感のある間取り、表情豊かなチークの床やタイルの仕上げ、そして外からの視線を気にせずに過ごせる設計の工夫で、落ちつきのあるリビングになりました。
庭の緑をインテリアの一部のようにして室内に取り込み、広がりをつくるのがKさま邸の大きなテーマの一つでした。リビングからはもちろん、ダイニングや和室、浴室からも庭が目の前に広がります。
リビングの外にはウッドデッキを設けました。道路からの視線を気にすることなく、外の気持ちよい風に吹かれてゆったりと過ごすことができます。ここは愛犬アビちゃんの遊び場でもあります。
リビングの奥に和室を設けており、ここからも庭が楽しめます。今はリビングと一体で広々と使ったり、お客さまに泊まっていただくときに活用。将来はご夫婦の寝室にすることもできます。
浴室にも窓を設けました。浴槽から外の緑が楽しめます。
玄関ホールの壁は外壁と同じタイルで仕上げました。壁にガラスを採用し、その枠をぎりぎりまで細くすることで、タイル壁の内から外への連続感を強調、ダイナミックな広がりをつくりました。