その担い手たちの横顔 Designers File

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永井 晃 建築士

個性的で美しい一棟をつくりあげる

お客さまは、さまざまなご要望をお持ちです。当然のことですが、それらは多岐にわたり、また、当初は優先順位も明確ではありません。お客さまとの対話を重ね、その価値観や想いを共有し、優先順位を分かりやすく示しながら、ご一緒に設計案をまとめていきます。お客さまの人柄がにじみ出るような、個性的で美しい一棟をつくりあげるために。

Work style

  • 敷地の特徴をつかみ、有効に活かす
  • 内と外のつながりや視線の広がりを大切にする
  • 「見せ場」のある住まいをつくる

Design

最近の設計実例から

東京都 Kさま邸

建ぺい率※が40%に定められた住宅地での新築です。空地(庭)として敷地の60%を残すことになりますが、それをいかに室内空間と融合させ、広がりとゆとりのある住まいにするかがテーマになりました。

※建ぺい率  敷地面積に対する建築面積(建物の上から平行光線をあてたときに地面にできる建物の影の面積)の割合。仮に50坪の敷地で建ぺい率40%であれば、建築面積は20坪が上限となります。

敷地の特徴をつかみ、有効に活かす

敷地の特徴を詳細に把握することは、設計の絶対条件です。道路との関係、日当たりや風向き、周囲の建物や街並、車や人の通行量……お客さまのご要望を念頭に敷地の状況をじっくりと観察していけば、どこにどのような用途の空間を配置すべきか、その答えが浮かび上がってきます。

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敷地の前の道路は「抜け道」として利用されているため、比較的交通量が多く、人通りもありました。そこで大きな開口は設けず、手前と奥に2枚の壁を立てて視線を防いでいます。そしてこの壁が建物外観のアクセントとしても魅力的なものになるように、質感の豊かなタイルを使い、植栽スペースを設けました。

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道路側の壁の一部は縦格子とし、視線を遮りながら光を採り入れ、風を通しています。また、部分的に格子を使うことで道路側の壁の大きさを抑え、植栽とともに街並にやさしい表情をつくりました。

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格子の内側は主庭と並ぶもう一つの「東の庭」です。ダイニングの正面になるように配置しています。またこの庭はガレージ側から玄関ホールに入る通路でもあります。

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リビングの正面となる南側には主庭を取りました。壁を立てることで道路からの視線を遮ります。また、隣地との境界に沿って背の高い木を植え、プライバシーを確保しています。

内と外のつながりや視線の広がりを大切にする

室内空間が心地よいものであるためには、光がたっぷりと差し込み、また、窓の外に心安らぐ眺めが広がっていることが必要です。たとえ限られた面積であっても、外への広がりのある空間は、ゆとりを感じさせてくれます。

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この敷地は東南の角が最も視線が抜ける場所でした。そこでここに吹抜けを設け、2面の大きな窓からたっぷりと光を採り入れました。天井の木やタイル壁を外に延長して内と外のつながりを強め、視線を外に誘って広がりが感じられる空間にしました。

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「リビングとダイニングは別に」というご要望がありました。しかし、それぞれを独立した個室にすると狭い印象になるので、間に、壁に引き込める戸を設けました。必要に応じて独立させることができます。開けておけば、リビングの吹抜けから採り入れた光がダイニングに届き、また、ダイニングからリビングの外の庭を眺めることもできます。

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ダイニングは東の庭に臨み、こちらから明るい光を採り入れます。掃き出し窓もできるだけ大きなものを採用しました。朝、2階の寝室からLDKに向かって階段を下りながら、気持ちのよい朝の光を感じることができます。

「見せ場」のある住まいをつくる

せっかく注文住宅を建てていただくのですから、「平均的」で特徴のない住まいではなく、お客さまのこだわりを貫いた「見せ場」のある住まいにしたいと思っています。お客さまをお迎えした際に「ここ、いいでしょう?」と自慢できるようなポイントをご一緒につくります。

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外壁のタイル壁をそのまま延長して室内の壁に使いました。吹抜けを彩るこの大きな壁が、リビングの見所です。タイルの茶色は22年の長寿を全うした茶色の飼い猫へのオマージュとしてご夫婦が選ばれたものです。

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イギリスのコッツウォルズ地方特産の天然石「コッツウォルズストーン」は、ガーデニングがお好きな奥さまがぜひ使いたいとおっしゃっていたものです。外側のタイル壁の足もとに積んで、植栽スペースをつくりました。前の道路を歩く人にも大変好評だそうです。

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2階バルコニーはタイル壁と接するところをシンプルに納めて、浮遊感のあるデザインにしました。ここだけを白い塗り壁の仕上げとし、また、透明感のある手すり壁を使って外観のアクセントにしています。

Photo gallery

  • case1
  • case2
  • case3
  • case4
  • case5
  • case6
永井 晃 建築士

設計を終えて 将来は1階だけで生活できるように、というご夫婦のご要望から必然的に1階のボリュームは大きくなりました。しかし建ぺい率の関係で敷地の60%は空地として残さなければなりません。そのため、室内空間の広がりや居心地に寄与するようにいかに庭を取るかが、設計のポイントになりました。Kさまご夫婦と一緒に考えたその答えが、2枚の大きなタイル壁の内側に確保した南と東の2つの庭です。近隣の方からも「『すてきな家を建ててくれてありがとう』と感謝された」と伺いました。私も大変うれしく思います。ご夫婦がこよなく愛するイギリスの住宅のように、この住まいが年月を経てますます味わいが増していくことを楽しみにしています。

永井 晃 建築士 Akira Nagai

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