人を招いて和やかに過ごすことがお好きだというご夫婦。リビングにはイタリア製のゆったりとしたソファを置きたいと考えていらっしゃいました。そのソファがしっくりと馴染み、集いを楽しむ空間をいかにつくるか、設計担当とも打ち合わせを重ねました。
インテリアのありかたを決めるのは、そこでお客さまが何をして過ごされるのかということです。ソファやダイニングテーブルをどれにするかという“もの”ありきではなく、“どんなふうに過ごしたいのか”、そこからお打ち合わせを進めます。ものはそこから必然的に導き出され、さらにそれを置く空間が決まっていくのだと思います。
ご夫婦は大勢の人を招いて楽しく過ごすために、ゆったりとしたソファを置くことを決めていらっしゃいました。このソファのボリュームと上質な革の質感に合うインテリアを、無垢の床やタイルなどの自然素材を重ねながらつくっていきました。
集いの場はリビングだけではありません。ダイニングにも大きめのテーブルを置きました。玄関土間からダイニングまでタイルの床が続くので、靴のままでも気軽に集まれます。冬は薪ストーブを囲んで過ごすことができます。
照明計画は、空間を心地よいものにするためにとても大切です。どこにどのような光を導くかはもちろん、明るいところと明るさを抑えたところのメリハリをつくることもポイントです。照明器具が見える場合は、その色やデザインもインテリアの雰囲気を左右する大きな要素になります。
リビングは座面の低いソファに合わせて天井を低くし、照明もフロアスタンドによる重心の低い光だけにして空間全体を落ち着かせました。手前のダイニングは勾配天井にした広がりのある空間で、梁にスポットライトを取り付けています。首を振って照らす方向を自由に変えることができるので、テーブルを動かしてもその位置に合わせることができます。
革張りのソファとウォルナットのテーブル、手織りのオールドキリムなど、質感のしっかりした重厚な雰囲気の空間の中で、フロアスタンドはあえてそれを崩す遊び心のあるものをご提案しました。赤は奥さまの好きな色であり、また、オールドキリムの基調色でもあります。
和室には、建築家の伊東豊雄さんがデザインした「MAYUHAMA2」を選びました。繭から糸を紡ぐようなイメージでデザインされたこの照明器具は、点灯していない時もとてもきれいです。
ご家族にはそれぞれ新しい住まいで実現したいことがあり、「理想の暮らし」を思い描いていらっしゃいます。しかし漠然としたものであることが多く、それを具体的なかたちにするお手伝いが、インテリア担当の仕事だと思っています。
人を招いて一緒にくつろいで過ごすだけでなく、旅行を楽しまれたり、ご主人はバイクの手入れやツーリングを、また奥さまは絵を描かれるなど、ご夫婦とも多彩な趣味をお持ちです。それらを楽しんでいただけるように、玄関の内と外に広い土間空間を用意し、また、室内には絵や小物を飾るスペースを確保しました。
洗面の壁面に奥さまの描かれた絵を飾るスペースを設けました。背景のクロスには奥さまの好きな赤を選んでいます。
リビングには壁一面をすべて使って本棚を造り付けました。ソファやオールドキリムの素材感に合う重厚感のある木製で、焦げ茶色に塗装しています。本だけでなく、奥さまの描かれた絵や旅先で購入された思い出の品物なども飾っていただけます。
リビングの一角にも、奥さまの絵を掛けるスペースをつくり、スポットライトで絵を照らしています。
本革のソファと奥さまの好きなオールドキリムは、最初からリビングの中心になることが決まっていました。それらに合わせて床はスギを焦げ茶色に塗装しました。赤いフロアスタンドを合わせることで、空間全体が重くなりすぎないようにしています。
座面の低いソファに合わせて天井高を抑え、センターテーブルも低いものを選びました。天井にはダウンライトを設けず、照明はスタンドだけ。落ち着きのある空間にしています。
オールドキリムは、遊牧民の自由な発想が紡ぎ出す独特の模様や、手織りならではの素朴な表情が魅力です。テーブルは木目が美しいウォルナット製のものを選びました。
この絵も奥さまが描かれたものです。焼きものならではの風合い豊かなタイルが油絵の質感によく合います。
外観は周囲の景観に溶け込ませたいというご主人のご要望に沿って、緩やかな屋根勾配のシンプルなデザインにまとめています。外構のアクセントに室内と同じ赤茶色のタイルを使った塀を設けました。
ガレージと別に車寄せを設けています。玄関を通らず、靴のままでダイニングに直接入ることができるので、ご友人たちも気軽に訪問できます。大きな荷物を持ち込むことも簡単にでき、雨の日も濡れる心配がありません。