「子どもが安心して遊べる広い庭のある家」というご要望にお応えしました。敷地の3方に道路が通っているため日当たりも風通しもよい反面、プライバシーの確保が重要になります。閉じるところと開くところ、メリハリのある設計が必要でした。
建築予定地については、地図や航空写真を見るなどさまざまな手段で情報を得ることができます。しかし、実際にその土地に立たなければ分からないことがあります。肌で感じた光や風、空の広がり、周囲の景色、視線の伸びる方向などが、設計を進めるための欠かせない情報になります。
敷地は3方向に道路が通っていました。隣家との距離はありますが、プライバシーの確保が必要です。特に玄関側は、外構の壁と連続して見える様に、壁を立てることにしました。
玄関側の壁はバルコニーの内部を隠す役割を持たせるため、背の高いものにしました。印象を和らげるために足下には植栽をあしらい、その影を映すキャンバスにしています。
空間は外とつながると、気持ちのよいものになります。視線の先に何が見えるかを考えながら、一つひとつの窓の配置や大きさを検討していきます。しかし、単純に外とつなげればよいというものではありません。時にはあえて視野を狭めて切り取ったり、ある方角は完全に視線を遮断するという工夫が必要になります。
南に庭を広く取り、掃き出し窓を連続して設けました。その先にはウッドデッキをつなげています。下屋(ウッドデッキの上にかけた小屋根)を大きく張り出すことで直射光が室内に差し込むのを防ぐと同時に、窓の外の景色を四角く切り取って強調しています。
リビングの床はウォルナットです。同じ高さでウッドデッキへと続くので、外部空間も室内の延長で気軽に楽しめます。天井にも木を張り、木のぬくもり豊かな空間にしました。
ウッドデッキとその先に設けられたタイル張りのスペースは、少しずつステップを踏みながら、地面に近づいていきます。室内から外部空間へ緩やかにつなぎました。
設計にあたっては、その敷地でしか実現できない楽しいポイントを盛り込みたいと常に考えています。それは設計担当者としてとてもワクワクする時間であり、お客さまにも一緒にワクワクしていただきながら、アイデアを出し合い、つくりあげていきたいと思っています。
玄関を隠す高い壁を利用して、ほの暗い路地に入るようなアプローチをつくりました。建物の中に入るとどんな空間が出現するのか、誰もが次のシーンを楽しみにする場所です。
玄関に入ると、目の前に日だまりの明るい空間が広がります。植栽やベンチ、キリムなどで、Nさまがお客さまを歓迎する気持ちを表現します。
庭に向かって大きな開口部を設けたN邸。ステップやウッドデッキの高さを少しずつ変えて広い庭と建物とを緩やかにつなげています。建物の両端に高い壁を設けて、横からの視線を遮りました。
玄関は天井に木を張り、足下は「洗い出し」と呼ばれる仕上げにしました。あえて明るさを抑えた空間です。
天井に木を張った木質感豊かなLDK。インテリアは「ミッドセンチュリー」をテーマに、落ち着いた色合いのものをご提案しました。
キッチン横に設けた奥さまコーナー。料理の本を広げたり,少し休憩したり、いろいろな使い方ができます。
道路から庭への視線を遮るために塀を設けました。高さを抑え、また、一部に木を使うことで、柔らかく仕切りました。