その担い手たちの横顔 Designers File

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稲垣 明男 建築士

いちばん気持ちのよい場所を見つける。

日が差したり、風が通ったり、美しい景色が広がったり…敷地には気持ちのよい場所が必ず存在します。それを見つけ、新たに建てる住まいとどう関係させるか、その場所に対して、住まいの各空間がどのようなつながりを持つことができるか。それらを考えることが、私の設計の出発点です。設計の力で気持ちのよい場所を日々の暮らしに取り込むことがお客さまに豊かな時間をご提供することにつながります。

Work style

  • “公”から“私”へ、アプローチを工夫する
  • 住まいの内と外をつなぐ
  • 素材の経年変化を楽しむ

Design

最近の設計実例から

大阪府 Sさま邸

「明るくて、風がよく通る家に」「庭を広く取り、庭を楽しみながら暮らしたい」――Sさまからのご要望でした。南に大きな庭を取ると同時に、門から玄関に至るゆったりしたアプローチと大きな中庭を設け、どの部屋からも庭を楽しんでいただける住まいにしました。

“公”から“私”へ、アプローチを工夫する

道路から門を経て玄関へ――アプローチはできるだけ長く取り、“公”から“私”へ気持ちの切り替えをする空間と時間を取りたいと思っています。敷地の広さに制約がある場合、長いアプローチは難しいのですが、敷地奥に玄関を設け、歩く距離を長めにするといった工夫で、アプローチを確保します。

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門を開けると、正面には兵庫県、生野特産で上品な肌が特徴の丹波石で組み上げた壁が “ついたて”のような役割で立っています。この壁を迂回する、玄関までの長いアプローチをつくりました。

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丹波石の“ついたて”の後ろには、コケの美しい和風の庭園をあしらっています。アプローチを歩きながら、移り変わる景色を楽しんでいただくことができます。

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門を入ってすぐ左に折れると、建物に沿って庭に抜ける道になります。竹を植え風情のあるアプローチにしました。

住まいの内と外をつなぐ

“人は外界からの刺激を受けることで、生活を豊かにしていく存在だ”といわれています。1日の時間の変化や四季の移り変わりを感じることができると、心が豊かになります。もちろん、外に開けば開くほど外部からの視線への配慮が必要です。窓の取り方や塀、植栽などの工夫で内と外とを気持ちよくつなぎます。

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LDKに大きな開口部をとって南の庭につなげました。室内から外へと軒を連続させることで視線を外へと誘います。

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玄関の正面には大きな中庭を設け、ガラス窓越しに四季の眺めを楽しめるようにしました。奥には塀を立て、外からの視線を防いでいます。

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中庭は玄関だけでなく、右手のご主人の個室や左手の浴室からも眺めることができます。奥の塀には葛飾北斎の富嶽36景の中のひとつを庵治石(あじいし)で表現しています。

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LDKや個室だけでなく、浴室でお湯に浸かりながら中庭の眺めが楽しめます。どこにいても庭を感じることができるお住まいです。

素材の経年変化を楽しむ

空間を構成する素材には、歳月を経て味わいを増していく無垢材や石やタイルなどの自然素材を使いたいと思っています。経年変化は単に古くなることではありません。時間を内包し、積み重ねながら価値を増すことだと思います。

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和室の広縁にはヒノキを使っています。施工当初よりやや赤みが増しています。その表情の変化を感じることも暮らしを豊かにする要素です。

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玄関ホールには空間のアクセントになる壁として釉薬タイルを使っています。和の雰囲気がSさまのご要望であったことから鉄色を選び、また、塗り壁と同じ質感のある目地を幅広く取ることで、壁との一体感をつくりました。

Photo gallery

  • case1
  • case2
  • case3
  • case4
  • case5
稲垣 明男 設計士

設計を終えて 豊かなくつろぎのある住まいとは、どのようなものか。それを考え続けた設計でした。Sさまご夫婦はお若い頃から事業に打ち込まれ、会社を大きく育てられました。多忙な日々を送られたご夫婦の、満を持しての家づくりです。お好きな庭を眺めながら、ゆったりとくつろいでいただきたいと思いました。新しい住まいが完成してからは、庭いじりも存分に楽しまれていると伺っています。お選びいただいた素材はまだまだ新しすぎるほど。これからますます味わいを深め、価値を増していきます。家のどこにいても身近に庭を眺め、植栽の手入れを楽しまれながら、このお住まいで充実した日々をお送りいただければうれしく思います。

稲垣 明男 設計士 Akio Inagaki

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