Sさまは仲のよいご家族です。お隣はご両親のお住まいで、庭には大きな桜の木があります。その眺めを楽しめるように窓を配置しながら、ご家族が楽しく集い、お子さまが元気に駆け回ることができる家をプランニングしました。
住まいの主役はご家族です。私の役割は、ご家族のライフスタイルや好みを知り、理想とする空間を、設計図として表現することです。“ここで団らんの時を過ごしていただけたら”、“ここで本を読んだり、くつろいでいただけたら”…その場面を思い浮かべながら、設計を進めます。
リビングに続けて高さを一段上げた畳スペースを設けました。床の高さが変わることで空間に変化が生まれます。高くなったところはイス代わりにもなります。リビングと畳スペースを一体として広く使っていただきたいと思いました。
2階にはファミリーコーナーを設けました。造り付けのカウンターで、勉強したり読書をすることができます。天井までの書棚も現場で製作しました。この空間も、ご家族そろって楽しく過ごしていただける場所です。
空間はただ“箱”として存在するわけではありません。他の空間とのつながりや光の表情、窓から見えるもの、さらにインテリアを構成する素材の色や感触も含め、全体として人の感性に働きかけてくるものです。総合的にデザインすることが大切だと思っています。
2階の主寝室は、緩やかな勾配天井で空間に変化をつくりました。コーナーに寄せて設けた窓は、お隣の庭の桜を楽しむためのものです。カウンターを設け、小物を置いて楽しんでいただけるようにしています。腰壁には爽やかなブルーのクロスを張り、床は濃い茶色で仕上げました。プライベートな時間をゆったりと過ごしていただけます。
玄関からリビングへ、光に誘われて進む廊下をつくりました。この先にどんな空間が広がるのか、訪れた人の期待が膨らみます。階段の桁を黒く塗装し、空間のアクセントにしました。
木は樹種によってさまざまな表情を持ち、色合いも異なります。人工の物にはない深みを備えており、住まいの素材としてぜひ活用したいと思っています。床や建具、家具などで樹種を一つにそろえるスタイルもありますが、いろいろな種類の木を組み合わせれば、多彩な表情を楽しむことができます。
1階の床はチェリーです。ご夫婦がぜひ使いたいと選ばれました。一段高くした床面にはオークを使い、ダイニングテーブルの天板はミズナラです。あえて樹種を変えて素材の表情が楽しめる空間にしました。
キッチン前のカウンターにはオーク材を使いました。柱は建物の構造上必要な物ですが、空間のアクセントとして美しく見える場所を検討しました。
桜の眺めを楽しむことができるように、大きなコーナー窓を設けました。テレビを掛けた壁は、室内から隣家の壁が見えないように計画しました。
リビングから見えない位置に冷蔵庫や電子レンジを置くスペースを設けました。
玄関を上がった左手にキッチンへの入り口があります。リビングを通らず直接キッチンに入ることができます。1階は行き止まりのない回遊動線としています。
切り妻屋根のシンプルな外観。大きく掛けた屋根と玄関の木調の扉がアクセントになっています。
玄関の出入り口を、モダンなデザインの木製格子でさりげなく隠しました。表札やポストも、道路側の外壁面全体とのバランスを考えてデザインしています。