その担い手たちの横顔 Designers File

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森 陽平 建築士

信頼を基礎にお客さまの想いに応える

何がお客さまの家づくりのきっかけであり、テーマなのか、私はそれを知ることからスタートします。そして「新しい家ではこんな過ごし方をしたい」というご要望を伺い、敷地条件の下でどうしたらそれが実現できるかを考えていきます。その時、設計担当として一番大切にしているのは、お客さまとの信頼関係。お客さまが、この設計でよかったと心から満足してくださる住まいを敷地に立ち、周囲を歩き、デザインや細部の納まりを徹底的に考え抜くことを通して、ご一緒につくりあげていきます。

Work style

  • その土地に立ち、周囲を歩く
  • 人の動きとともに考える
  • ディテールを美しく整える

Design

最近の設計実例から

奈良県 Oさま邸

「4人家族が楽しく暮らす住まいにしたい。好みのシンプルなデザインでかっこよく」というご要望をいただきました。敷地は道路に沿って横に長い変形地で、周囲は比較的建て込んでいます。敷地条件を丁寧に読み取ることからスタートしました。

その土地に立ち、周囲を歩く

まず建築地を訪ね、日の差し方や風の吹き方、視線が抜ける方向などをみます。同時に私は、周囲を歩きます。そこがどんな街であり、お客さまがどういう景色をみながら出かけ、帰宅されるのかを知るためです。新しい住まいは、デザインも、そしてお客さまの暮らしも、街に溶け込むものにしなければならないと思うからです。

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お客さまのお好みであるシンプルな外観デザインを、奇抜になりすぎないように配慮しながら古い街並みに馴染ませました。前の道路は車や人の通行量が多いことから、道路側の窓は2階だけにしてプライバシーに配慮しています。

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建物を引き立て、街並みに溶け込ませる役割を果たすのが植栽です。そのスペースは外観のデザインと同時に検討します。自然な樹形の高木を少し傾けて植えることで、緑のアーチのような形をつくりました。

人の動きとともに考える

住まいの中で移動しながら見えてくる景色の美しさや、次に見えてくるものへの期待感をつくることも、空間づくりの大切な要素です。このドアの向こうにどんな景色が広がるか、階段を上がりながら何が見えてくるか――ご家族の毎日の暮らしを想定しながら設計を進めます。

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道路側には玄関ドアを見せないアプローチを工夫しました。奥右手が玄関ドアです。子どもさんが道に飛び出さない安全性と、外からアプローチの先が見えないミステリアスな雰囲気の演出と、二重の効果があります。木製の軒天井やタイルがシンプルな外観のアクセントです。

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階段は、2階から採り入れた光の通り道でもあります。玄関から2階のリビングまでは距離がありますが、上から注ぐ光に導かれながら、次にどんなシーンが展開するかを楽しみにしながら歩けるようにしました。

ディテールを美しく整える

建物には多くの線があります。省けるものはできるだけ省き、また、高さをそろえ、幅なども細かく検討します。それはお客さまが生活を始めても気づかないことかもしれません。しかし、気づかない、気にならないということがすぐれたディテールなのであり、見せ場となる空間を引き立てる役割を果たすと思っています。

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ソファやダイニングのイスに座ると、やさしい表情の木の折下げ天井の先に見えてくるのは空だけです。隣家の窓が目に入らないようバルコニーの壁を高めにしました。室内の水平のラインもすっきりとまとめ、また、手すりもできるだけシンプルで細いものを選んで、景色が楽しめるようにしました。

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キッチンに設けた7つのガラスのペンダントは奥さまのこだわりです。ペンダントが空間の主役になるように、窓台の線なども細くすっきりと整えました。7つの照明器具のそれぞれの高さや位置は現場でシミュレーションを重ねて決めたものです。

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キッチンをオープンスタイルにしたことから、リビングやダイニング側からもキッチン後ろの壁や収納が目に入ります。収納の取手もシンプルなラインだけになるよう配慮しました。

Photo gallery

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  • case2
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  • case4
  • case5
  • case6
  • case7
森 陽平 建築士

設計を終えて「玄関ドアを道路から見えないようにできないか」――設計の最後の最後にいただいたご要望でした。壁を立てる案もありましたが、納得がいかず試行錯誤を重ね悩みに悩んで今の形が生まれました。少し部屋が狭くなるのですが、お客さまも「これでいきましょう」とおっしゃってくださいました。たまたまご夫婦と私が同学年であり体験してきたもの、価値観などについて共鳴できることが多かったからかもしれません。玄関ドアのことも含めて、打合せはいつも楽しく、「かっこよく」という命題に向かってご一緒に歩みました。これからもかっこよく暮らしてください。ありがとうございました。

森 陽平 建築士 Yohei Mori

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