ニュースリリース
(2018年)

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2018年06月20日

住友林業株式会社
株式会社NTTドコモ

林業従事者の安否確認・事故検知に関する実証実験を開始

~LPWA※1と衛星通信を活用し、携帯電話ネットワーク圏外エリアでの安全性向上をめざす~

 

 住友林業株式会社(以下、住友林業)と株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、2018年4月19日(木)に行った林業従事者の安否確認・事故検知に関する実証実験(以下、本実験)にて、LPWAと衛星回線を活用し、携帯電話ネットワーク圏外エリアでの緊急通信が可能となることを確認しました。今年度内に安否確認・事故検知ソリューションの実証実験を継続的に実施し、2019年度中の実用化をめざします。

 

 住友林業は日本国内で47,977ヘクタールの社有林を管理・運営しており、山間部での労働環境改善に注力しています。機械化の推進をはじめ、労災防止教育や、環境教育、救命救急分野など専門家による講習会の開催、現地での安全指導などを積極的に行っています。

 一方、林業従事者は携帯電話ネットワーク圏外エリアでの作業が多いため、万が一事故が発生した場合、近くに作業者がおらず事故に気付かない、救急を要請するために時間がかかるなどの課題が残されていました。

 これらの課題に対し、ドコモが持つ最新の情報通信技術・IoT技術と住友林業の社有林やこれまでの経験を活用し、実証実験を開始しています。この取り組みを通じ業界全体の労働安全性向上に尽力してまいります。

 

 LPWAは省電力で長距離通信を実現でき、IoTに最適な無線技術として幅広い業界で関心が高まっています。LPWAの子機は、バッテリー駆動が長時間可能で、数キロメートル離れた場所との通信ができます。これまではLoRaWANTM※2をはじめとしたLPWAの親機となる受信機は、3G/4Gの携帯回線と接続することを前提としていることが多く、携帯電話ネットワーク圏外エリアではLPWAの利用ができませんでした。

 

 本実験では、携帯電話回線が利用できない山中でもLPWAと衛星回線を組み合わせたシステムを構築することができました。省電力のLPWA送信子機を作業者が保有し、そこで得た情報を親機のLPWA受信機が代表して衛星回線へと接続する方式をとることで、携帯電話ネットワーク圏外エリアでも衛星電話を作業者が持つことなく緊急通信が可能となりました。

 

 今後住友林業の社有林での様々な地形条件で実証実験を行い、システムとしての信頼性を向上させ、社有林内外の林業現場での実用化を目指します。その後、住友林業とドコモは林業分野に限らず土木工事現場や一般の登山客の利用も視野に入れ、山間部での携帯電話ネットワーク圏外エリアに向けた新しいサービスの提供を検討していきます。

 

 住友林業とドコモとは、林業従事者が安全で健康に働くことができる職場環境づくりをめざすとともに、サステナブルな社会の実現に向け、社会的課題の解決に取り組みます。このような社会の実現に向けて、自治体や地域住民の声に耳を傾け、本実験を通じIoTソリューションの先駆けとなるべく、より安全で使いやすいサービスの開発と実用化をめざしていきます。

 

※1 Low Power Wide Areaの略、省電力広域無線通信技術

※2 LPWAの一種で、LoRa Allianceが定めた無線ネットワーク規格の名称

*「LoRaWAN」はSemtech Corporationの商標です。






本実験の概要

1.実験概要

実施日

2018年4月19日(木)

実験場所

住友林業の和歌山県内の社有林の実作業環境

実験の目的

―山林におけるLPWAの電波到達距離や森林や地形による影響を評価

―LPWA子機で得た情報に関して、衛星回線経由におけるアップロード可否を評価

 

2.実験方法

 LPWAの方式としてLoRaWANと、ソニーのLPWAの2種類を用いて検証。GPS受信可能なそれぞれ の方式のLPWA子機を山林内で移動させ、それらの位置情報をLPWA親機(受信機)が受信して、衛星回線経由でクラウドサーバへとアップロードする構成。子機の移動範囲は、林業従事者が実際に作業する場所を含む林道や山中、尾根、谷部分で計測。

 

3.実験結果

 LoRaWANおよびソニーのLPWAにおいて、山林でも4キロメートル以上の距離で通信が可能であり、木などの障害物への耐性が強いことを確認しました。

 また、LPWA受信機を衛星回線経由でインターネットと接続し、携帯電話ネットワーク圏外エリアにおいても、リアルタイムにLPWA子機の位置情報を遠隔で確認することができました。

 

 これらの結果から、将来、LPWA子機に緊急通報ボタンによる通知のほか、転倒などの検知を行うセンサーを実装することで、山林でも自動で緊急通報が可能となるネットワーク環境の構築にめどが立ちました。

 

 本実験に用いたLPWA機器は、39Meister(サンキューマイスター)※4およびソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の協力を得て実施しました。またLPWAの親機となる受信機の設営は、日本アンテナ株式会社の協力を得て実施しました。

 

 本実験結果をもとに今後さまざまな観点から評価を行い2018年度も引続き実証実験を重ね、LPWAを活用した林業従事者の安全確認や事故検知の実用化をめざします。今後は事故を検知するためのデータ解析や林業従事者が利用するデバイス開発などを検討していきます。また、山岳遭難者の位置特定・事故検知など林業以外の業種への応用可能性を検討していきます。

※4 ドコモと株式会社ハタプロとのジョイントベンチャー事業

 

4.各社の主な役割

 

役割

住友林業

住友林業の保有する社有林などの実験場所や、林業の実作業を模擬したシナリオを提供。

本実証実験を通じ、LPWAを活用した事故検知手法の実用性評価を行う。

ドコモ

LPWA通信機器および衛星端末、衛星回線の提供や、無線通信に関する解析技術を提供する。

 

 

5.実証実験の様子


以上

≪本件に関する報道機関からのお問い合わせ先≫

住友林業株式会社

コーポレート・コミュニケーション部

TEL:03-3214-2270

株式会社NTTドコモ

イノベーション統括部 事業創出・投資担当

TEL:03-5156-3653

第一法人営業部 第三営業 第一担当

TEL:03-5156-2161