ニュースリリース
(2021年)

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2021年10月28日

山種美術館
住友林業株式会社

奥村土牛《醍醐》ゆかりの桜を山種美術館に記念植樹
住友林業が組織培養により苗木増殖した醍醐寺「太閤しだれ桜」を寄贈
~「山種美術館開館55周年記念特別展 奥村土牛」開催 (11月13日~1月23日)~

 山種美術館(館長:山﨑 妙子 住所:東京都渋谷区)は「【開館55周年記念特別展】 奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―」開催にあわせ、住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)が総本山醍醐寺の「太閤しだれ桜」から組織培養により増殖した苗木を同館に植樹します。今回植樹する桜は住友林業が山種美術館へ寄贈したもので、植樹式は1115日に行われます。

 豊臣秀吉が「醍醐の花見」をしたことで知られる京都・総本山醍醐寺の「太閤しだれ桜」は、樹齢約170年といわれる名木で、山種美術館と縁の深い日本画家・奥村土牛が代表作《醍醐》に描いたことから、「土牛の桜」ともよばれています。

 住友林業は「太閤しだれ桜」の樹勢回復と後継樹増殖に取り組み、2000年組織培養による苗木増殖に成功しました。増殖した苗木は2004年11月に総本山醍醐寺境内に移植し、翌年4月に無事開花しました。「太閤千代しだれ®」と名づけられたこの桜は親木と並んで毎年花を付け訪れる方を楽しませています。


<植樹式の概要>

日時:1115日(月)13時30分から1400分まで

場所:山種美術館

寄贈:

【桜の苗木】 住友林業株式会社

【桜の植栽基盤及び壁面緑化パネル*】 山種美術館館長 山﨑 妙子

* 植栽基盤は桜の生育を支える基盤。

壁面緑化パネルは桜の色を引き立てるよう背面に緑のフェンスを設置。


<展覧会の概要>

 山種美術館創立者・山﨑種二(1893-1983)は奥村土牛の才能を見出して支援し、約半世紀にわたって家族ぐるみで親しく交流しました。現在、当館は135点に及ぶ屈指の土牛コレクションで知られています。

 奥村土牛は38歳で院展初入選と遅咲きながら、展覧会に出品を重ねて40代半ばから名声を高め、80歳を超えてなお「芸術に完成はあり得ない」「死ぬまで初心を忘れず、拙くとも生きた絵が描きたい」と語り、101年におよぶ生涯を通じて制作に取り組みました。本展では《醍醐》や《鳴門》などの代表作をはじめ、活躍の場であった院展への出品作を中心に、土牛の画業をたどります。


■【開館55周年記念特別展】

 奥村土牛 ―山﨑種二が愛した日本画の巨匠 第2弾―

会期:20211113()2022123()

会場:山種美術館

   (〒150-0012東京都渋谷区広尾3-12-36)

主催:山種美術館、日本経済新聞社

開館時間:午前10時~午後5

   (入館は閉館時間の30分前まで)

休館日:月曜日[12/27()1/3()1/10(月・祝)は開館、1/11()は休館、12/291/2は年末年始休館]


■奥村土牛《醍醐》(1972(昭和47)年)について

 京都・醍醐寺三宝院の枝垂しだれ桜を取材した作品です。1963(昭和38)年、土牛は奈良・薬師寺で営まれた師・小林こばやし古径こけいの七回忌の法要の帰路、醍醐寺に立ち寄りました。その際、土塀の枝垂れ桜に極美を感じ、数日間通って、目に映る光景を夕暮れまで写生したといいます。いつか制作したいという思いを抱き続け、約10年後の1972年、再び桜の咲く時期を待って、同寺を再訪し、本作品を完成させました。胡粉ごふんの白色を基調に、何層にも絵具を重ねて表した薄紅色うすくれないいろの桜は、春らしい叙情的な雰囲気と清らかな透明感を醸し出しています。


奥村おくむら土牛とぎゅう 明治22-平成2 18891990)年

東京に生まれる。本名義三よしぞう。梶田はんに入門、兄弟子・小林古径こけいの指導も受ける。1927(昭和2)年、院展に初入選、1932(昭和7)年に同人となる。1947(昭和22)年、帝国芸術院会員。1962(昭和37)年、文化勲章を受章。

1978(昭和53)年、日本美術院理事長。遅咲きの画家として知られ、薄い絵具を何重にも塗り重ね、淡い色調によるおおらかで温かみのある作風を確立した。


■奥村土牛のことば

《醍醐》は昭和38年、小林古径先生の七回忌の法要の帰りに京都へ寄り、三宝院前の土塀のしだれ桜に極美を感じ写生をし、何時いつか制作したいと考えてりました。

一昨年の昭和47年、今年こそと思って、桜の時期の来るのを待って醍醐へ行きました。10年前と少しも変わりなく、2度最初の印象が浮かび制作しました。この年は桜を見たく、常照皇寺のしだれ桜をはじめ奈良方面を廻り、ついに待望の吉野まで参りました。

(『第1回現代日本画の10人』図録 山種美術館 1974)


 山種美術館は今回の植樹により、今後は日本画のコレクションに加え、春にはそのシンボルとして、奥村土牛ゆかりの「醍醐の桜」が皆様をお迎えします。1966(昭和41)年、日本初の日本画専門の美術館として開館して以来、近代・現代日本画を中心とした収集・研究・公開・普及につとめてきました。今後も日本画の素晴らしさを国内外に広く発信し、日本画を未来へ継承する活動を続けていきます。

 住友林業グループは神社仏閣や自治体の皆様が所有・管理する名木や貴重木を後世に受け継いでいく取組みをサポートし、樹勢・生態調査及びDNAによる品種同定などの結果を基にした保存活用計画の立案及び後継樹の増殖、樹勢回復などを行っています。今後も松・桜・梅など歴史的・社会的に貴重な樹木を後世に繋ぎ、伝統ある風景を次世代へ受け継ぐ取組みを進めていきます。



≪参考資料≫

■組織培養の流れ

① けいちょう部を顕微鏡下で摘出する。茎頂部は芽の分裂組織で茎や葉はここから作られる。 写真1

② 植物の成長に必要な成分を混合した培養液の中で茎頂を培養すると、34か月後に50個程度の芽の塊(多芽体たがたい)に成長する。 写真2

③ 液体培地から、寒天で固めた固体培地に多芽体を移植すると、芽が伸長するとともに正常な葉が形成される。 写真3

④ 多芽体から伸長した芽を1本ずつ切り分け、人工培土に植え付ける。3週間ほどすると発根する。
写真4

⑤ 無菌のフラスコから取り出し、外の条件に慣らす。 写真5


写真1 茎頂部

 

写真2 茎頂から誘導した多芽体

写真3 多芽体からの芽の伸長

 

写真4 人工培土での発根

写真5 屋外での順化

 

 



■名木の増殖実績

1998年7

世界初フタバガキ科樹木の組織培養による増殖に成功

2000年4

世界初シダレザクラ(京都・醍醐寺)の組織培養による増殖に成功

2009年3

小田原・紹太寺の「長興山しだれ桜」の組織培養による増殖に成功

2010年2

京都・仁和寺の「御室桜」の組織培養による増殖に成功

2011年4

品川区・清岸寺の「祐天桜」の組織培養による増殖に成功

2011年12

陸前高田市の「希望の松」後継樹育成に成功

2012年2

京都・仁和寺の「泣き桜(揚道桜)」の組織培養による増殖に成功

2012年4

鎌倉・安国論寺の「妙法桜」の組織培養による増殖に成功

2013年3

広島大学附属高等学校と共同 「エバヤマザクラ」の組織培養による増殖に成功

2015年3

世界初鑑賞梅(京都北野天満宮「紅和魂梅」)の組織培養による増殖に成功

2015年4

世界初ソメイヨシノ(土浦市天然記念物"真鍋のサクラ")の組織培養による増殖に成功

2016年4

京都・北野天満宮の「北野桜」の組織培養による増殖に成功

2019年2

福島・南相馬市天然記念物「泉の一葉マツ」の後継樹(実生苗)の育成に成功

2020年10

滋賀県長浜市所有の盆梅(樹齢350年~400年)3品種の組織培養による増殖に成功

以上

≪ リリースに関するお問い合わせ先 ≫

山種美術館

展覧会広報事務局(共同ピーアール内) 担当/三井・瀬島

〒104-0045 中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア10F

TEL:03-6264-2382 FAX:0120-653-545


住友林業株式会社

コーポレート・コミュニケーション部 河村

TEL:03-3214-2270


≪ 名木の増殖・利活用に関するお問い合わせ先≫

住友林業株式会社

森林・緑化研究センター 中村

TEL:03-3214-3635