HIGHLIGHT 2 生物多様性保全への貢献「グレー」から「グリーン」へ 自然環境を活かした地域のインフラ整備
 

自然の機能を利用したインフラや土地利用計画、「グリーンインフラ」に注目が集まっています。インフラとは、産業活動や社会生活を行うための土台となる部分のことで、道路や鉄道、灌漑など様々な生活基盤を指します。

住友林業グループでは、コンクリートや鉄を使用する従来の「グレーインフラ」ではなく、自然を活用した「グリーンインフラ」により森や都市の緑地整備を行うことで、持続可能な社会と経済の発展に寄与しています。

大規模事業所のグリーンインフラプロジェクトへの挑戦

グリーンインフラは、欧米を中心に海外での認知度は高いものの、日本での大規模事例はまだない状態でした。

住友林業グループでは、エコアセットコンソーシアム※1のパートナーであるMS&ADインターリスク総研株式会社と共に、2018年度に株式会社IHI相生事業所において「生物多様性プロジェクト」を実施しました。これは、大規模事業所におけるグリーンインフラ整備としては、先進的な事例となります。

同事業所の敷地は、面積の71%が豊かな自然に囲まれている一方で、自然災害によるリスクを抱えていました。この対策について山林管理や緑化事業で実績のある住友林業緑化が依頼を受け、2013年から調査を開始し課題を洗い出したところ、獣害や植生の偏りによって自然災害のリスクがあることが分かりました。

そこで土砂災害防止のために一般的なコンクリートで囲う施工法ではなく、敷地内の生物多様性を確保し、緑や自然資本を活用して災害防止につなげるグリーンインフラの整備を提案しました。具体的には、風倒木を利用した丸太を組み合わせた土留めによる工法です。さらに丸太間の土に植樹をすることで、丸太が朽ちるころには樹木の根による強固な土壌が完成します。また獣害により、シカが嫌うソヨゴが多く残り、植生の偏りがありましたが、ソヨゴは燃えやすい樹種です。ソヨゴを間伐して粗朶(そだ)※2の材料とすることで、火災リスクを減らしました。また斜面保護については、敷地から半径20km以内で採れた地域性植物種を使用することで本来の植生が戻る工夫をしました。

さらに関連会社や隣接する他企業との勉強会や施工資材の活用を通じて、地域との連携も進めました。

これらの取り組みの結果、IHI相生事業所は生物多様性に配慮した事業所の運営が評価され、2019年3月いきもの共生事業所認証(ABINC認証)※3を取得しました。

※1 住友林業、住友林業緑化、MS&ADインターリスク総研株式会社、株式会社地域環境計画の4社からなる、コンサルタントチーム

※2 枝を集めて束状にした資材のこと。土留めなどに利用

※3 企業における生物多様性に配慮した緑地づくりや管理・利用などの取り組みを認証する制度

風倒木の丸太を利用した土留め。また丸太の間に植樹することで土固めとなる

風倒木の丸太を利用した土留め。また丸太の間に植樹することで土固めとなる

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日本にグリーンインフラを広げるために

本プロジェクトは、木材利活用や緑化技術など住友林業グループならではの知見やノウハウを集結し実施したグリーンインフラです。

国の国土形成計画にも必要性が明記されるなど、グリーンインフラを採用する動きが広がる一方で、関連する法整備が追いついていない実情もあります。実施にあたっては、行政とも十分連携を図りながら、法令の範囲内でどのような技術が活用できるのかなど、一つずつ課題を解決していくことも当社の役割です。その中で、グリーンインフラの実績を着実に増やし、生物多様性保全への貢献につなげていきます。

写真:IHI 相生事業所全景

IHI 相生事業所全景

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IHIご担当者様より

株式会社IHI相生事業所では、地域との共創により社会へ新しい価値を提供する生産拠点となることを目指し、2011年度から事業所の環境CSRポテンシャルについて調査を開始しました。

その成果を踏まえ、SDGsなどの企業をとりまくCSRの動向と事業所運営における課題とを一体的に解決する施策として「生物多様性プロジェクト」を立ち上げました。

今回のグリーンインフラ施工において、住友林業グループには、林業や緑化の専門的立場から、事業所内の資材利用、獣害対策、シカに食べられない樹木の植栽、地域生態系保護など様々な知見を提供いただくことができました。

今後も生物多様性保全活動を継続し、自然と人とのつながりを強固にし、主要生産拠点として持続・発展し続けることを目指します。この活動の継続により、昨今の相次ぐ自然災害にも対応することのできる防災力を備えた生物多様性モデル事業所のトップランナーになれると確信しています。

株式会社IHI 相生事業所事業所長 小澤重雄氏

株式会社IHI
相生事業所 事業所長
小澤 重雄 氏

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富士山「まなびの森」プロジェクト20周年

富士山「まなびの森」プロジェクトが20周年を迎えました。台風により甚大な風倒被害を受けた富士山2合目の国有林を元の豊かな自然に戻すため、住友林業が1998年に開始した活動です。

これまでに延べ2万8,000人以上のボランティアが参加して、約3万本の地域固有の樹木の植樹と育林活動を進めてきました。また自然林の回復状況をモニタリングするため、「植生調査」に加え、日本野鳥の会南富士支部の協力の下、2000年から「鳥獣生息調査」を行っています。これまでに記録された在来種の鳥類は75種。倒木が撤去されて土の見える環境から次第に草原、森林へと姿を変えていく中で、草原性のキジやモズが減少し、森林性の鳥であるキビタキやヤマガラを観察する機会が増え、森林が順調に回復していることが分かりました。

植樹前と回復しつつある森林

野鳥の個体数推移

野鳥の個体数推移

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