HIGHLIGHT 5 気候変動への対応「木材の安定供給と環境保全が両立する植林事業の展開 インドネシア、ワナ・スブル・レスタリ(WSL)社とマヤンカラ・タナマン・インダストリ(MTI)社による責任ある泥炭地管理」

森林減少の抑制にあたっては、適切に森林資源を管理し再生させることが重要です。

住友林業は、木を植え、育て、伐って活用し、そして再び木を植えるという「保続林業」の考え方を基本とした持続可能な森林経営を展開し、国内に約4.8万ヘクタールの社有林及び海外に約23万ヘクタールの植林事業地を保有・管理しています。

国内外で培った豊富な森林経営のノウハウを活かし、地域社会と環境と調和した持続可能な植林事業を展開しています。

インドネシアにおける産業植林の取り組み

住友林業は、インドネシアの森林経営・合板製造会社のアラス・クスマグループと共同でWSL社及びMTI社(以下、WSL/MTI)を設立し、インドネシア環境林業省から事業許可を受けて2010年から西カリマンタン州で大規模な植林事業を展開しています。植林、育林、収穫を計画的に実施し、持続可能な木材生産を続けると共に、生物多様性の保全に徹底的に配慮した事業を行っています。また、地域の雇用創出などを通じ、地域社会の発展に寄与しています。

写真:植林地風景

植林地風景

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持続可能な泥炭地管理

泥炭地とは、枯れた植物が水中に堆積するなどで未分解のまま形成した土地のことです。国際自然保護連合(IUCN)によると、世界の泥炭地面積は400万km²で全陸地の3%を占めており、630ギガトンの炭素を蓄えているといわれています。乱開発や泥炭火災によって、土壌中の炭素が放出されれば、気候変動に大きな影響を与えます。泥炭地では従来、排水路により土地を乾燥させて植林を行っていましたが、土地を乾燥させると泥炭土壌中の有機物が分解し温室効果ガスが放出され、さらには乾いた泥炭が燃えやすくなり大規模な泥炭火災につながるおそれがありました。火災を防ぐためには土壌を常に湿った状態にする適切な水位管理が重要となります。

WSL/MTIは、泥炭地にて植林事業開始と同時に5年間をかけて詳細な調査を行い、計画を策定しました。具体的には、徹底したデータの収集から開始し、地形や泥炭の深さなど他に例のないデータを集め、科学的根拠に基づいた水位管理計画を策定しました。さらに、適切な水位の測り方、火災を防ぐ防災訓練などの管理・運用面におけるマネジメントを着実に実践すると同時に、研究機関の協力も得ながら泥炭管理のノウハウを蓄積し、改善を図っています。その結果、通常、泥炭沈下速度は5~10cm/年といわれる中、平均で2.8cm/年と自然林とほぼ同じ状態を維持することができています。こうした取り組みは土壌からの温室効果ガスの放出の抑制に加え、植林によるCO2の吸収、ひいては気候変動の緩和策につながっています。また、植林計画立案の際に、保護価値の高い森林(HCVF)の考え方に従い、詳細な調査を行い、保護すべき森林(保護地)、バッファーゾーン(緩衝地)、生産林(植林地)を設定しています。希少動植物が残された保護林は、地方政府、他企業と連携しながら、希少動植物の生息地が孤立しないように、グリーンコリドー(緑の回廊)となる緑地を残し、保護林ネットワークを構築しています。このような取り組みは動物の専門家やNGOからも高く評価されています。

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地域に根ざした活動展開

WSL/MTIの現地では従業員が合計約300名働いており、地域住民の雇用や地元産業の活性化に貢献しています。また、浄水施設の設置や診療所の建設、医療スタッフの常駐支援、小学校における環境教育など地道な活動も行い、地域住民との絆を強め、地域に根ざした活動を展開しています。また、2018年に、「苦情処理メカニズム(Grievance mechanism)」を構築しました。書面や定期的な訪問により地域住民の意見を受け付け、7営業日以内に回答をしています。地域住民から当社に提起された問題についても適切に対処できる体制を整えています。

写真:小学校における環境教育の風景

小学校における環境教育の風景

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2年連続COPで講演 -国際的な関心の高まり-

こうした泥炭管理に関わる包括的な取り組みが評価され、2018年開催の国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)で設けられたインドネシア・パビリオンで、講演を行いました。

これは、インドネシア環境林業省からの要請を受けたもので、COPへの参加は、2017年に続き2度目です。「ランドスケープの持続的利用を達成するための木材生産と泥炭生態系保全管理」というタイトルで、持続的な泥炭管理について発表しました。参加者の半数は途上国の方々で、泥炭管理技術へのグローバルなニーズや関心の高さに手応えを感じました。

持続的な泥炭管理は、従来よりインドネシア以外の地域にも応用・発展させていきたいと考えており、その可能性が広がる機会に恵まれたことを機に、より一層活動に注力していきます。

写真:講演風景

講演風景

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現場担当者より

水位管理の仕事を私は「水と泥炭と共に働く仕事」と呼んでいます。いつも泥だらけになるため、皆が嫌がる仕事です。私の作業服にも泥の色が染み込んでいます。緊急なことがあれば、時には夜中や明け方でも水位監視に出向きます。水位を安定させ植林木が適切に育っていくよう、いつも水位のことが頭から離れません。2010年から開発してきたシンプルで効果的な水位管理手法は、優れた技術として政府や国際機関から注目されています。皆が嫌がっていた仕事の価値が認められ、注目されていることを本当に光栄に思っています。

今では汚れが染みついた作業服が私の誇りです。将来は多くの人がこの「水と泥炭と共に働く仕事」に関わり、新たなアイデアや技術が得られることを望みます。世界に私たちの技術が普及すれば素晴らしいことです。

写真:マヤンカラ・タナマン・インダストリ社 水位管理部 ベルナルドゥス・アグスムリヤディ

マヤンカラ・タナマン・インダストリ社
水位管理部
ベルナルドゥス・アグスムリヤディ

コンゴ共和国のArlette大臣(左)に説明する様子

PICK UP

政府・国際機関による植林地視察

2018年10月に、WSL/MTIは、国連環境計画(UNEP)※1主導で実施された世界泥炭イニシアティブ(GPI)※2・メンバーによる第3回会合の一環で、インドネシアにおけるサステナブルな泥炭管理を学ぶことを主目的とした視察を受け入れました。

視察団にはコンゴ民主共和国環境持続的開発省、コンゴ共和国観光環境省、インドネシア環境林業省森林開発研究庁、国連環境計画(UNEP)及び国連食糧農業機関(FAO)林業局などを含めて総勢50名ほどが参加しました。視察では、水位管理システムやIoT技術を活用したリアルタイム環境観測システムなどを紹介。さらに、保護林やグリーンコリドー(緑の回廊)を設けることで動植物の保全に努めていることも説明し、経済活動と保護活動の両立において国際的な評価を得る機会になりました。

今回の視察受け入れは、国際的に興味関心を喚起する機会となり、住友林業が目指す森林経営を他の地域への展開の足掛かりとすることができました。

※1 国連環境計画は1972年に設立され、各国の政府と国民が将来の世代の生活の質を損なうことなく自らの生活の質を改善できるように、環境の保全に指導的役割を果たし、かつパートナーシップを奨励する。環境分野における国連の主要な機関

※2 泥炭地保全による温室効果ガスの排出削減を目的として、2016年11月、COP22(マラケシュ)に先立って開催された地球ランドスケープフォーラムで立ち上げられた取り組み。主要メンバーは、インドネシア、ペルー、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国

写真:植林地視察風景

植林地視察風景

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