デザインとクオリティを意識しながら、お客さまに最もふさわしい空間提案ができればいいと、いつも思っています。でも、押しつけはできません。よりお客さまのオリジナリティが表現されるものにしたい。そしてアクセントには、トレンドも少し意識して盛り込みたいと思っています。
「継続可能な美」-Tさまが何度も口にされた言葉です。飾り立てるのではなく、素材やデザインを吟味しながら、いつまでも飽きの来ないシンプルなものにすること。たくさんの思い出の品や京都ならではの伝統技能や素材を活かしながら、コーディネートプランを立てていきました。
Tさまは、新しい住まいに飾りたいと考えられている物をたくさんお持ちでした。「小さなギャラリー」というイメージを持たれていたのではないかと思います。思い出の品物や今まで使われて来たものをどう活かすか、それを考えていきました。
床材や襖紙など、この街ならではの伝統や風土に見合ったものを取り入れ、そのクオリティを楽しみたいというご要望でした。町並みのことも真剣に考えられ、そのために庭はほとんどそのままに残されています。
留守中にご主人宛に来る手紙の量が非常に多いというお話があり、どこに何を入れるかという具体的な検討をしました。また、奥さまは通訳の仕事をされており、1000本近いカセットテープをお持ちです。そのボリュームに合わせて収納家具をつくることにしました。
書斎の行灯風の照明、和室の襖紙にも使用した京唐紙でできています。この柄の名は「shinobu」。私の名前と同じ名のものを選んでくださいました。うれしく、そして少し誇らしく思っています。Tさまの思いを受け、営業、設計、生産、外構、それぞれの担当がひとつのチームとなってつくり上げていったお住まい。これから年月を経るごとに、ますます奥深さを増していくと信じています。