家づくりのなかで、インテリアコーディネーターの役割はとても大きなものだと思います。採光や通風、間取りや生活動線などの設計の工夫が家づくりのベースであることはもちろんですが、目の前に広がり、五感に働きかけてくるインテリアは、心地よい空間づくりの最後の仕上げです。「ここにいると落ち着く」「この場所が楽しい」--お客さまとご一緒に、照明器具や家具などの選択を楽しみながらお客さまらしいインテリアをつくりあげることできればと思っています。
ご夫婦とも書き物をされるお仕事です。別に仕事場もお持ちですが、新しいお住まいにも、それぞれの書斎を必要とされていました。そしてなによりも、落ち着いた和の雰囲気のなかで、ご夫婦で、またご友人とゆったりとくつろげることを望まれていました。
一口に「和風」あるいは「モダンな感じ」といっても、その意味するものは、お客さまによって異なります。どんなイメージをお持ちなのか、照明器具や家具などの“パーツ”を一つひとつ選びながら、それを理解していきます。
お客さまが求める空間をつくりあげるために、窓まわりの演出や照明器具、ソファなどをご提案します。これまでお客さまが使ってこられなかったようなものであっても、少し範囲を広げてご提案するようにしています。
インテリアの一つひとつの要素は魅力的でも、それが重なりすぎると効果が薄れてしまうことがあります。その場合は「足すよりも引く」ことを考えると、空間が落ち着きます。特に「和」の雰囲気にまとめる時は、大切な手法だと思っています。
「どんな“和”がお好みなのだろう?」――最初は手探りでした。ヒントになったのが、カタログから選ばれたフロアスタンドです。そのイメージを念頭に、ソファなどのインテリアの“パーツ”を一つひとつ選び、ご夫婦が望まれる「和」の世界をつくりあげていきました。それは「懐かしさを感じさせる和」であり「古き良き時代の和」です。いま、ご友人が訪ねてこられると、和室の掘りごたつや離れのお風呂で、時が経つのも忘れてくつろがれると伺っています。「懐かしい和」の魅力を改めて感じると同時に、それをご一緒につくりあげる機会をいただけたことをうれしく思っています。