私は、土地とご家族構成と、そしてどのような人柄の方なのか、その情報をもとに、まずプランを考えます。お客さまに喜んでいただけるものを設計することが私の仕事ですがだからといって、最初にご要望をお尋ねしすぎないことが、ご期待に応える道だと思っています。もちろんお客さまと徹底して話し合い、納得いただけるゴールを目指します。しかし、その対話をより実りあるものにするためにもまず私なりに考えたものを、見ていただきたいと思っています。
すでにお子さまは独立され、これからの時間をご夫婦で静かに過ごされる住まいへの建て替えでした。敷地の周辺は緑が豊かで、すぐ脇を緑道が走る素晴らしい環境です。Uさまご夫婦は、この環境を活かして四季を楽しみながらゆったりと過ごしたい、とお考えでした。
お客さまのご要望を伺うことはとても大切ですが、私は、その細かい内容を伺う前に、この土地で、ご家族にどのような住まいが一番似合うのか、それを考えてまずご提案することから始めます。それはお客さまの、新たな気付きにつながることもあります。
「ここまでが設計の仕事で、後はインテリア担当や外構担当の領域だ」と切り分けて考えることはしません。窓の外にどんな景色が広がればよいか、それを引き立てるためにインテリアはどういう仕上がりであるべきか、それも考慮して設計していきます。
無駄な線や凹凸などが出そうな時は、細部を検討して一つひとつ丁寧に納め、解決していきます。そうすることが、空間の心地良さを、より深く味わっていただけることにつながると思っています。
初めて土地を見せていただいた時、周囲に広がる豊かな緑をいかに住まいに取り入れるかが設計の最大のポイントだと思いました。目の前に緑の眺めが広がり、穏やかに日が差し込む2階を中心にお二人のゆったりとした暮らしにふさわしい空間を細部に至るまで丁寧につくりあげていきました。この空間がUさまご夫婦の心からのくつろぎの場となれば、設計を担当したものとして、とても嬉しく思います。このような仕事の機会をくださったUさまご夫婦に、心から感謝しています。