設計には、ある“思い切り”が必要だと思っています。お客さまのたくさんのご要望をまんべんなく盛り込もうとしてかえって大事なものを見失ってしまうことがあるからです。結局それは、お客さまに満足いただけるものになりません。ご要望のポイントをしっかりつかんで私自身の建築士としての思いも盛り込みながらバランスよく、そして思い切ってデザインする―それが私のスタイルです。
多い時は30人もの仲間が集まってホームパーティを楽しむというSさま。新たに入手された土地は、高台ならではの眺望が大きな魅力です。プライバシーを守りながら、家族や友人と楽しく過ごせる住まいを希望されていました。
土地には、その土地ならではの魅力があります。それは、日当たりや心地よい風、周辺の豊かな緑、あるいは雄大な眺めなどです。その土地のもつポテンシャルを受け止める感受性をもつことが、設計担当者に託された役割だと思います。
「ごちゃごちゃさせない」ということをいつも考えます。いろいろな要素を盛り込みすぎると、大事なことか隠れてしまうからです。お客さまの要望を整理し、建築士としての私の思いも込めて、バランスを取りメリハリのあるデザインを目指します。
設計を進めながら常に繰り返す問いがあります。それは「心地よい空間になっているか?」ということです。光や風の入り方、窓の外の眺め、他の空間とのつながり、耳に聞こえてくるもの、照明をつけた時の夜の雰囲気……包容力のある空間をつくります。
高台にあり、街を見晴らす眺めが魅力の土地でした。「この眺めを楽しみながら、パーティを楽しむ住まいに」という明確なコンセプトのもと、設計を進めました。玄関から和室越しに広がる眺め。リビング、ダイニング階段が一体となり、大きなウッドデッキへとつながるパーティ空間。いずれもとても気に入っていただけました。大切なことを、バランスよく、そして大胆に表現する―私がいつも心がけていることが正しかったと改めて確信することができました。新しい住まいで、お客さまとの楽しい時間を過ごしていただきたいと思います。