荒井 麻美 インテリアコーディネーター

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荒井 麻美 お引き渡しの後も、ご一緒に考えていく

「リビングにグリーンを置きたいのだけれど、何がいいかしら?」「思ったよりお客さまが多いので、リビングにイスを増やしたい。どんなのがいいと思う?」――お引き渡しを終えたお客さまから、ご連絡をいただくことがあります。さっそく絵を見せていただいたり、ショールームにご一緒しながら、私なりの考えをお伝えします。お住まいが完成した後も、こんなお付き合いが続くことが、インテリアコーディネーターの仕事の楽しさであり、やりがいです。お客さまのお好みやお住まいの雰囲気を一番よく知り、ご一緒にインテリアデザインを考えてきた者として、いつまでもお客さまにご相談いただける存在でありたいと思っています。

Design

東京都 Mさま邸

大理石を床に使った開放的なLDKで家族や友人がくつろげる空間にしたい、というご要望がありました。「光のグラデ―ションが昼と夜を彩る」というコンセプトの下、どんな光があれば心地よい住まいになるのか、空間ごとに光の表情を考えていきました。

空間にふさわしい光の表情を考える

インテリアコーディネートを進める際に私が一番大切にしているのは、そのお客さまにとってどんな光が心地よいか、ということです。それはお客さまの好みや、その空間でどんな時間を過ごされたいか、ということによって異なります。じっくりとお話を伺いながら昼と夜の光の計画を進めます。

大きな窓がご要望でしたが、外からの視線が気になります。ご主人はクールな表情の空間がお好みでカーテンは避けたいというご意見。一方奥さまはブラインドの「硬い感じ」がお好きではありませんでした。そこで角度の調節ができる羽を内蔵したレースのシェードをご提案しました。
シェードは窓を設けた壁全面に連続させ、天井から床までをすべて覆うものにしました。カーテンボックスはつくっていません。光のグラデーションが美しい大きな壁のイメージです。大理石への映り込みもきれいです。

素材や色のバランスを細部まで検討する

インテリアは多くもので構成されます。窓からの光や照明は大きな要素ですが、他にも床や壁、天井の仕上げ材の種類や質感、家具の大きさや形、さらに素材感や色など、たくさんの要素があります。そのため同じ強さの光を当てても、黒い家具やラグがあれば光は吸収されます。インテリアデザインは、空間全体をイメージしながら進めることが必要だと思っています。

セカンドリビングはプライベートな時間楽しむ場所であることから、ダークトーンの落ち着いたコーディネートにしました。床はウォルナットです。照明も間接照明を主体にして明るさを抑えました。
寝室は「眠る前の極上のくつろぎ空間」をテーマに、光量の調節ができるスタンドをメインにした照明計画にしています。壁には落ち着いた色・柄の輸入クロスを選びました。
玄関ホールは大理石を壁面に贅沢に使いました。お客さまをお迎えする場所にふさわしい空間です。床に使ったタイルのベージュとペルシャ絨毯のブルーが深みのある上品な雰囲気をつくります。

アートや小物で引き立てる

お客さまとご一緒に少しずつインテリアをつくりあげていきます。イメージが具体的になるなかで、さらにその空間を、お客さまらしく引き立てるものを考えます。それは、時には照明器具であり、またアートや小物のこともあります。

ダイニングには大きな壁がありました。ここに何か絵があるといいねというお話があり、ご一緒に探しました。大理石の床にモノトーンの家具を配置した空間のイメージに合わせて、シンプルでメタリックなアートをご提案しました。
ダイニングの照明は、LDK空間に最後に取り入れたものです。華やかさのあるクリスタルのシャンデリアで、上質な空間を引き立てたいと思いました。Mさまご夫婦にはクラシックなデザインよりも、直線的な美しさのあるものがお似合いだと思い、ご提案しました。
落ち着いた 色合いの大理石で仕上げたリビングのアクセントに色を加えたいと思い、ブルーの置物をご提案しました。この色が入ることで、大理石の美しい表情がさらに引き立ちます。
Photo gallery
セカンドリビングのバーコーナー。ご主人のお好きなお酒が並びます。キャビネット内に設けた照明でボトルに光を落とし、インテリアの華やかな彩りにしました。
セカンドリビングに続くバルコニーには炭火で調理ができるキッチンをセットしました。ホームパーティを楽しむことができます。
階段の手すりには装飾の美しいロートアイアンを使いました。インテリアの引き立て役でもあります。
大理石の床にイタリア製の大きなレザーソファを合わせました。大理石には室内のあらゆるものが映り込みます。その点にも配慮してダウンライト減らし、天井面をきれいにまとめました。
釣りがご趣味のご主人専用スペースです。壁面に釣り竿を掛けるラックを設けました。
外壁と外構を同じタイルで仕上げた重厚な外観。外構の壁をやや高めにすることで全体をバランスよく整えています。落ち着きのある上品な佇まいは、室内空間とも共通しています。

お客さまが、新しいお住まいのどこで、どのような時間を過ごされるのかその場所、時間、過ごし方にふさわしい光を、一つひとつ丁寧に考えていきました。開放的なLDK空間全体をやさしい光で包むシェード、スタンドの穏やかな光がウォルナットの床を照らす寝室、どの空間もMさまご夫婦らしい個性やお好みが表現されています。お住まいができあがった後は、家で過ごす時間がとても長くなったと伺い、うれしく思いました。お引き渡しの後も、アートや家具の相談をいただいたりときどき食事にお招きをいただくなど、楽しいお付き合いが続いています。これからもご一緒にインテリアを楽しむことができたらとても幸せに思います。

荒井 麻美 インテリアコーディネーター