お客さまにとって居心地の良い住まいとはどのようなものか?それは敷地によって、またご家族が新しい暮らしに求められるものによって、一邸一邸、異なるものだと思います。それを丁寧に聞き取り、たとえば「庭の緑を眺めながら読書の時間を楽しみたい」、「休日は賑やかに家族で食卓を囲みたい」というご要望を、敷地の条件の下で具体化し、それを設計案として仕上げていくのが私の仕事だと思います。ご家族に似合うくつろぎのシーンを豊かにイメージし、実際に形にする創造力とデザイン力をさらに鍛えていきたいと思っています。
20年前に購入され、いずれは家を建てて移り住もうと考えられていた緑豊かな土地がありました。ご子息のご家庭にお孫さんが生まれたことをきっかけに、週末に二世帯で賑やかに集い、別荘のように非日常の時間を楽しむ住まいを計画されました。
敷地にはまず自分の足で立ち、周囲の景色や日の当たり方、風の通り方などを自分の体感として把握します。その上で、ご家族のお好み、どんな暮らしをされたいと思っているか、などについてヒアリングを重ね、それを敷地の状況とリンクさせながらプランニングのアウトラインをつくりあげていきます。
具体的なお打ち合わせのスタートあたって、私は設計の「軸」となるコンセプトをご家族と共有することを心掛けています。設計のお打ち合わせではいろいろな判断や選択が必要になります。その時に「何を大切にしていくか」という軸が明確になっていれば、それが行いやすくなるからです。
住宅のデザインには、洋風のものや伝統的な和風のものなど、さまざまなテイストがあります。どのようなご要望にもしっかりとお応えできるのが住友林業の設計担当だと思います。デザインのテイストがどのようなものであれ、最も美しいものをご提案することができるよう細部に至るまで突き詰めて考えていくようにしています。
最初に敷地を拝見したとき、その豊かな緑に圧倒されました。緑を暮らしに取り入れ、かつ、プライバシーを確保しながらご家族水入らずの時間を楽しんでいただくには、どこに、どのように建物を構えればよいか――まずそれを考え、木々の間に隠れるように佇み、どの部屋からも緑が眺められるL字型の建物を構想しました。1階では地に根付いた大樹や岩の力強さを、2階では枝葉の瑞々しさや爽やかさを感じていただけます。お引き渡し後にいただいたお手紙で、ここを「山の家」と名付けられ週末毎にご子息のご一家と楽しく過ごされているということを教えていただきました。設計担当者として、これ以上の喜びはありません。設計の機会をいただいたご家族に、心からお礼申し上げます。