天、地、人――インテリアコーディネートを考える時、私はこの3つのことを意識します。天は、お客さまの想い。インテリアは、その方が積み重ねてきた経験や知識、そこから生まれたものの感じ方や好み――すべてが表現されるものだと思います。地は、建物が建つ場所。そこにしかない光や空気、眺めがあります。そして人。家具や絨毯、建具や照明器具などの一つひとつにつくりあげた人の技や伝統が息づいています。天、地、人、それぞれの視点からお客さまに最もふさわしいインテリアをご一緒に考えていきます。
長年にわたり世界を舞台に人材育成に携わってこられたKさま。人生の集大成として、日本の文化や心を伝える“国際セミナーハウス”のような別荘を計画されました。その想いにお応えするインテリアとは?――私にとっても大きなチャレンジでした。
住まいの新築という人生の大きなプロジェクトの中で、お客さまが何を求めていらっしゃるのか。いろいろな考え方、お好みの中から最もその人らしいものを選び出しご提案していくためには、まずお客さまの想いやお人柄、これまで歩んでこられた人生やこれからの夢をしっかりと受けとめることが必要だと思います。
インテリアコーディネートは、机上のデザインワークとして進めることも可能です。しかし私はできるだけ現地に赴き、その土地ならではの光や風、空気を体で受けとめ、また歴史を知るようにしています。家を建ててそこで暮らすということは、その環境の中で新たな関係をつくることだと思うからです。
家具や照明器具、カーテンなど、インテリアコーディネートは、ものを選んで組み合わせていくことです。一つひとつのものにどんな技や想いが込められているのか――表面的なデザインだけでなく、その成り立ちをお伝えすることを心掛けています。それが新しい発見につながり、より愛着を持っていただけることにつながるからです。
Kさまは、日本人ならではの気遣いや和の心を胸に、生涯を賭して世界を渡り歩いたビジネスマンでいらっしゃいます。「海外から招いたゲストに日本のすばらしい伝統文化を紹介しながら、大いに語り合いたい」というご要望に、プロジェクトに関わった全員がそれぞれの専門分野の知識や技術力を総動員し、Kさまへの尊敬と共感を胸にインテリアをつくりあげていきました。お引き渡し後「ここには長年の私の想いを形にしてくれた皆さんの努力の跡が数多く残されています。本当にありがとう」と嬉しい言葉をいただくこともできました。私にとっても、新たに多くのことを学んだコーディネートであり、このような機会に恵まれたことに、心から感謝しています。Kさまの想いがこの住まいとともに次の世代へと、受け継がれていくことを願っています。