住宅の設計は公共の建物や商業施設などと異なり、ただそのお客さまだけのためにつくりあげていくものです。責任は重く難しい仕事ですが、やりがいもあります。お客さまと、ときには昔からの知り合いのようにお話しをしながら、本当にそのお客さまに似合う住まいとはどんなものなのかその家で始まる新しい暮らしを思いながらお客さまらしい、世界にひとつしかない住まいを考えていきます。
「新築であってもずっとそこに建っているような雰囲気があり、室内も長く暮らしてきたような親しみを感じる家に」というご要望をいただきました。素敵なライフスタイルと暮らす力をお持ちのご夫婦に、存分に楽しんでいただける住まいを考えていきました。
住宅はそのお客さまだけのものです。他の誰のものでもありません――当たり前のことですが、私はその原点を大切にしたいと考えています。そして、住む人のための、住む人に似合う設計になっているかどうかを考えます。
私は平面図があまり好きではありません。設計を考えるときは、ご家族の動きを想定しながら、ここで何が見え、そこから進んだときにどんな情景に切り替わっていくか、空間の中で風景がどう展開していくかを想像しながらイメージをつくり、それを平面図にまとめるようにしています。
私だからご提案できたことがあったろうか? 私のおすすめがお客さまにとって新しい発見になり、暮らしのイメージや夢を膨らませるお役に立つことができたろうか? 私はいつもそう振り返ります。私とお客さまとの出会いが、お互いにとって楽しく価値のあるものになったときに、いい設計が生まれと思うからです。
土地探しのときから候補地にご一緒していたので、具体的なお打ち合わせに入る前からの長いお付き合いになりました。とても魅力的なパーソナリティをお持ちのご夫婦で年代が近かったこともあり、まるで友人同士のように親しくさせていただきました。竣工後にお訪ねしたとき、自転車が玄関にかっこよくハンギングされていたり、スチールの階段がグリーンを楽しむ場所になっていたり私の想像しなかったスタイルで住みこなしていらっしゃる様子を拝見してとても感激しました。これからもこの家で過ごす毎日をお楽しみください。また遊びにいきます!