私がデザインを担当する外構は、建物の完成後に工事が始まります。しかし、それは決して「付録」ではありません。街並みにふさわしく、また個性豊かに建物を彩り、暮らしのさまざまな場面で窓から見える景色を整えてご家族の毎日に心豊かな時間を届けます。設計担当者が図面に描いた建物の美しいイメージとご提案している暮らしを読み取り、受け継いで、最後に家づくりを締め括る――外構デザインは大きなやりがいのある仕事です。
約530坪の広大な敷地内に建つ築70年になるお住まいの建て替えは「庭を楽しめる暮らし」を目指したものでした。設計の初期の段階から打ち合わせに加わり、建物の設計と一体になって「風格と品格」をコンセプトに、外構と庭をデザインしていきました。
設計担当者が敷地をどう読み解いて建物を計画したのか、ご家族に、どんな毎日をご提供したいと考えているのか――その意図を理解しそれを完成させるために、そして時には、設計者が短所になるかもしれないと危惧しているものをカバーすることができるように、プランニングを進めます。
外構デザインのイメージをお客さまと共有することは簡単ではありません。とくに植栽は、植えたときが完成ではなく、時間をかけてゆっくりと成長して、当初想定した姿に変わっていきます。計画のプレゼンテーションは、室内側から見た完成時のスケッチなどを使って理解いただきやすいようにしています。
イメージが湧きにくいということは、複数の候補がある時の選択や決断が難しいということでもあり、お客さまは迷われます。そのときは「もし私の家なら」と考え、理由とともに私なりの判断をお伝えします。常に真剣に、責任を持って考えを突き詰めることが提案者としての責任だと思っています。
私が設計を担当する外構や庭は、お客さまの敷地の中でもっとも自然に触れることができる場所であり、毎日の暮らしに潤いをもたらす大切な存在です。その計画を担うことは大変うれしく、また責任も伴います。「東君がいいと思うならそうしよう」とKさまは何度も難しい選択や判断をお任せくださり、その信頼にお応えできるよう、全力を振り絞りました。先日、久しぶりにお訪ねしたとき、クロマツの足下に苔が自生し、庭が新しい時を刻み始めていることを知りました。うれしかったですね。これからも四季折々の美しい表情をお楽しみいただければ幸いです。