七十二候とは

日本人の豊かな感性が宿る七十二候

古来の人々は、太陽や月のめぐるリズムを、季節を知る手がかりにしていました。
地球が太陽のまわりを1周する時間の長さを1年とするのが太陽暦。
太陽暦の1年が春夏秋冬の四季、二十四節気に分けられ、さらに七十二候に細分されました。
それは、季節を知る目安であるとともに、農作業やさまざまな行事の指標となりました。
日本人の豊かな感性が宿る七十二候の一部をご紹介します。

厳しい冬を終え、華やかな季節の訪れです。
草木が緑をおび、花々が咲きほこる。
眠っていた生き物たちも、姿をみせてくれます。
春はすべての命がいきいきと輝く季節。
新しいはじまりの予感にあふれています。

七十二候を暮らしに
とり入れる設計と工夫
  • 第一候はるかぜ こおりをとく

    東風解凍

    温かな春風が、
    川や湖の氷を解かす時期。
    旧暦では新年のはじまり。

  • 第六候そうもく めばえいずる

    草木萌動

    やわらぐ陽光の下で
    土も潤いはじめ、
    草木が芽吹き出すころ。

  • 第九候なむし ちょうとなる

    菜虫化蝶

    さなぎが羽化し
    蝶に生まれ変わり、
    春の日を浴びながら舞います。

  • 第十一候さくら はじめてひらく

    桜始開

    古来より人々を魅了してきた
    桜の花が鮮やかに咲きはじめます。

  • 第十三候つばめ きたる

    玄鳥至

    遥か南国からツバメがやってくる。
    去年の巣に戻るとほっとします。

  • 第十六候あし はじめてしょうず

    葭始生

    水辺の葦が芽を吹きはじめ、
    いつの間にかあたりは
    緑でいっぱいです。

ギラギラと照りつける日差し。
木々の葉は緑を繁らせ、やさしい影をつくってくれます。
夕刻には蝉がうれしそうに鳴き、風鈴が風を誘います。
祭囃子の音色に促されて外に出ると、
夜空に咲いた花火、涼やかな風が通り過ぎていきます。

七十二候を暮らしに
とり入れる設計と工夫
  • 第十九候かわず はじめてなく

    蛙始鳴

    田んぼや水辺で蛙が鳴きはじめます。
    夜には大合唱が響きわたります。

  • 第二十三候べにはな さかう

    紅花栄

    紅花が花を咲かせます。
    露で刺がやわらかな朝に
    花摘みが行われます。

  • 第二十七候うめのみ きばむ

    梅子黄

    青々としていた梅の実が、
    黄色く熟していく季節です。

  • 第二十九候あやめ はなさく

    菖蒲華

    あやめの花が咲くころ。
    かつてはこの花が咲いたら
    梅雨入りの目安でした。

  • 第三十二候はす はじめてひらく

    蓮始開

    清らかな姿が
    人々を惹きつけた蓮。
    夜明けとともに
    花が咲きはじめます。

  • 第三十六候たいう ときどきふる

    大雨時行

    入道雲が出て雷が鳴り、
    地面を叩く土砂降り。
    夕立が増える時期です。

秋風が立つ川面を、とんぼの群れがいく。
鳥たちが山へ帰るころに月が昇り、すすきの穂が、
風にそよいでさよならを言います。
田に実る稲穂と虫たちの合奏。
食卓には旬の収穫物が、笑顔とともに並びます。

七十二候を暮らしに
とり入れる設計と工夫
  • 第三十八候ひぐらし なく

    寒蝉鳴

    カナカナカナと
    ひぐらしが鳴くころ。
    夕暮れに響く声は
    どこか悲しげです。

  • 第四十二候こくもの すなわちみのる

    禾乃登

    田んぼの稲が黄金色に
    輝くように実るころ。
    収穫への期待に
    胸がふくらみます。

  • 第四十三候くさのつゆ しろし

    草露白

    草に降りた露が
    朝日に照らされて
    美しく輝くころ。
    朝夕の涼しさを感じます。

  • 第四十六候かみなり すなわちこえをおさむ

    雷乃収声

    雷がすっかりなりをひそめるころ。
    入道雲から鰯雲へ、
    秋の空が広がります。

  • 第五十一候きりぎりす とにあり

    蟋蟀在戸

    秋の野をにぎわせていた
    きりぎりすやこおろぎが、
    人の住まいに近づいてきます。

  • 第五十四候もみじ つた きばむ

    楓蔦黄

    紅葉や蔦が色づくころ。
    その年の気候に
    よって、
    色合いも変わってくるようです。

冷たい風が吹き、木々の葉が舞い落ちる。
夜ふけに音もなく雪が降りはじめると、
翌朝は、あたりいちめんの銀世界。
部屋の温もりに身をほどきながら、
新しい年への期待と希望に胸をおどらせます。

七十二候を暮らしに
とり入れる設計と工夫
  • 第五十六候ち はじめてこおる

    地始凍

    地面が固く凍てつくように
    なり、
    人々の足音も固い音に
    変わっていきます。

  • 第五十九候きたかぜ このはをはらう

    朔風払葉

    木枯らしが木の葉を
    吹き飛ばすころ。
    枝と幹だけになった
    木立も冬の風情です。

  • 第六十一候そらさむく ふゆとなる

    閉塞成冬

    空の太陽が塞がり、
    重たい灰色の雲におおわれた
    本格的な冬の訪れとなります。

  • 第六十五候さわしかのつの おつる

    麋角解

    ヘラジカなどの大鹿の角が
    生え変わるころ。
    世間は年越しの準備で
    大わらわです。

  • 第六十七候せり すなわちさかう

    芹乃栄

    芹が生えてくるころ。
    春の七草のひとつで、
    一月七日には七草粥をいただきます。

  • 第七十二候にわとり はじめてとやにつく

    鶏始乳

    鶏が卵を産みはじめます。
    昔は立春、立夏、立秋、立冬の
    前日はすべて節分でした。