RPAとは、人の作業をロボットによって自動化する技術の総称です。従来、人間がパソコン操作で行っている業務のうち、ルーティン作業などの定型業務を自動化し、業務全体の効率を上げる技術のことです。

「RPA市民開発」とは、このロボットの開発を事業部等のIT部門以外の社員(=市民)が担うことを指します。プログラミング知識やITスキルがなくても直感的に操作できるソフトウェアが広く普及したことで可能となりました。

市民自らがロボットを開発することで、定型業務にかけていた時間を削減できます。空いた時間は人でなければできないクリエイティブな業務に充てることができます。重要なのは「自分の力で仕事のやり方を変えられる」という意識。こうした意識が当たり前となる企業文化の醸成を目指し、住友林業ではRPA市民開発を推進しています。

背景

オフィス勤務者の効率化を図る手段としてRPAが有用であることは従前から認識しており、住友林業でも、一定の専門知識を持った社内外の開発者が対応する体制を取ってきました(プロ開発)。しかし、この手法では対応できる数やスピードに限界があり、また、少しの仕様変更でも開発者に依頼する必要があることなどから、より迅速に対応したい社員のニーズに応えきれない状況を打開する施策が必要でした。こうした経緯からRPA市民開発の取り組みがスタートしました。

取り組みの全体像

開発者は業務上の課題を解決するためのアイデアを自らのロボット開発を通して実現。自身の業務の自動化を自ら進め、機能追加や仕様変更も自分たちで行うサイクルを繰り返します。また、自分だけでなく周囲にもそのロボットを広げていくことで組織全体での活用を推進していきます。(図1)

RPA市民開発のイメージ

図1:RPA市民開発のイメージ

開発事例

採用試験 最終面接受験者への交通費支払を効率化

概要

採用試験 最終面接受験者への交通費支払は100件/月を超えることがあり、手動で続けるには限界がありました。そこで、支払処理に必要な「口座マスタ登録」と「支払申請」をRPAにてロボット化。その後のチェックと承認は引き続き人が行いますが、RPA前と比較し160分/月以上の負荷軽減ができました。(図2)

開発RPAの概要

図2:開発したRPAの概要

取り組みの効果

2024年末時点の累計開発者数は169名、237個のロボットが稼働しており、その業務時間削減効果はおよそ20,000時間/年と想定されます。こうした定量効果に加え、自らの手で業務を効率化する成功体験を通し、社員一人ひとりの「働きがい」が高まることを期待しています。また、「人にしかできない仕事へのシフト」の実現を図ります。(図3、図4)

期待する効果

図3:期待する効果

RPA累計開発者数と目標人数

図4:RPA累計開発者数と目標人数

担当者メッセージ

上野 智宣

住友林業株式会社
ITソリューション部 マネージャー

上野 智宣

RPA市民開発に多くの社員が参加してくださり、大変うれしく思います。現在は黎明期として位置づけており、開発者を増やすことに主眼を置いております。今後はさらに取り組みを進め、継続的な業務改善を行う企業文化を当社に生み出していきたいと考えております。その支援施策として、開発者交流会などのモチベーションアップのためのイベント開催、開発効率向上のための共通部品ライブラリ化、組織的な活動につなげるための経営層・管理職層への働きかけなどの取り組みを進めてまいります。これらの施策を通じて、RPA市民開発の更なる発展と、業務改善文化の定着を目指してまいります。