鈴木 洸明2017年入社
大学では森林科学を専攻し、持続可能な森林経営について学びました。本格的に林業に興味を持ったのは、1冊の本がきっかけでした。作者は「最後の宮大工」と呼ばれた法隆寺の宮大工棟梁。樹齢1,000年の木を使って、1,000年先を見据えた仕事をしていると知ったとき、木に蓄積された膨大な時間とそれをくみ取って生かすという思いにロマンを感じました。木が生まれてから現在まで途方もない時間が流れる中で、さまざまな人々が手を加えながら、木の歴史を紡ぎつづけている。森林こそ、そんな壮大な物語を体感できる対象だと思ったのです。森林について調べる中で、資源の限られた国であるにもかかわらず、日本は国土の3分の2が森林で覆われていながら、国産材の自給率が3割程度(当時)だと知りました。その状況に危機感を覚え、卒業後は国内の森林資源を活用する仕事に就きたいと思うようになりました。森林や林業の課題に対し、収益性をもって柔軟にアプローチすることで課題を本質的に解決できるのではないかと、民間企業を志望しましたが、マクロな視点から森林や林業に携わることができる民間企業はあまり多くありません。住友林業への入社の決め手になったのは、木をあらゆる活用の可能性を秘めた資源として捉えていることに感銘を受けたからです。国内外で多様な森林経営を行っていて、木を軸にしたさまざまな事業が生まれやすい土壌がある。日本の森林資源を最大限活用するためには、木の多様な可能性を追い求めている住友林業という環境は最適だと考えました。
入社以来、北海道で社有林管理に携わり、現在は森林ファンド※の運営を担っているアメリカのEastwood Forests, LLC(以下、EF社)に駐在しています。私の仕事は、同ファンドの参画企業の皆様に対して、ファンドに関する適切な情報を投資家の窓口である住友林業アセットマネジメント株式会社を通じて提供することです。EF社は参画企業の皆様から出資いただいた約600億円規模の資金によって森林資産を取得・運用する計画のため、運営が適切に行われていることをお伝えする必要があります。しかし、参画企業の方々が必ずしも森林経営に精通されているわけではありません。取得する森林の価値や今後の運用方法など、専門的な情報をわかりやすくかつ正確にご説明することが私の役割です。その際、北海道での森林管理の経験が大いに役立っています。北海道の社有林と同ファンドが主に対象とする北米の天然林は、緯度が近く森林の様子が類似しており、森林管理の手法も近いところがあります。EF社の提供する情報をもとに、自身の経験も交えながらお伝えするのですが、その中で大切にしていることは、信頼と信用を守ること。お伝えする情報は徹底的に確認し、理解が曖昧な状態での情報提供とならないように心がけています。その他、EF社に限らず海外関係会社では必須となりますが、日系企業の視点を米国の同僚とすり合わせることも、駐在員としての腕の見せどころです。価値観の違いもあり、理解を得るのに苦労することも多いですが、適切な落としどころで問題が解決できたときは、労力が報われた気持ちになります。
※森林ファンド…企業や投資家から出資を募り、その資金で住友林業グループが森林資産の取得・運用を行い、出資者には森林経営を通じて得られる利益やカーボンクレジットを分配する仕組み。住友林業グループが運用する森林ファンドにおける資産規模は約600億円で、運用期間は15年の計画。 ファンドの仕組みを活用することで個々では実現できない面積・資金規模で森林を適切に管理し、グローバルな気候変動対策に貢献します。
将来に向けてできる限り良質な資源を残すために、私たちは常に未来を見据えて事業や業務の意思決定を行う必要があります。北海道で森林管理に携わった際は、50~100年先を見据えて森林の伐採や植林を計画し実行していました。100年後の未来に立ち会うことは叶わないと思いますが、自分が植林して数年後きちんと生育している木々を見たときは、自分の仕事が未来につながっていることを心から実感します。一方で、50~100年後の木材需要や事業環境を、現時点で正確に見通すことは非常に困難です。正解のない未来に対して私たちができることは、その時々の担当者がその時点における最善を尽くすことだと考えています。その積み重ねによって生まれた多様な森林が、結果的に将来の事業環境に適応できる頑強性を備えていると信じています。
実現したい未来は、就活時代から変わっていません。日本の森林の課題を解決し、持続可能かつ収益性の高い森林経営を実現することが、最終的な目標です。日本の森林や林業の課題は多岐にわたりますが、その主な要因の一つに森林の所有構造が小規模零細であることが挙げられます。数haの森林に、数十人の森林所有者が存在することも珍しくありません。このためまとまった面積での森林経営や森林資産の売買はごく限定的で、収益性の向上も難しい状況です。一方、アメリカでは数万ha単位の森林取引が数多く行われ、森林ファンド等大規模な森林所有者による森林経営が定着しており、日本と比べて収益性も高くなっています。マーケットの分析による戦略的なオペレーションや、ファンドを含めた金融の力を生かした事業展開。そんな森林経営を間近で見られるのは、私にとってまたとないチャンスだと感じています。アメリカならではの森林経営を実体験として学んでいることは、必ず自分の実現したい未来につながる。そう信じて、幅広い視野や知見を獲得しながら、国内林業の課題解決のために知識と技術を磨いていきたいと思います。
各プロジェクトの状況や今後のスケジュールについて、現地社員とすり合わせます。
近隣のレストランへ。運動不足になりがちなので、できるだけ歩いて移動するようにしています。
直近で取得を検討している森林資産の評価について打ち合わせます。
1週間のアップデート事項を本社メンバーに共有。自宅からリモートでミーティングに参加することも多いです。
林 宏樹2012年入社
松田 未由2020年入社
内田 明日花2019年入社
青木 理名2023年入社
西脇 健太2015年入社
市村 直也2007年入社
佐原 健太2017年入社
松岡 頌子2021年入社
猶原 丈雄2007年入社
伊豆 善崇2017年入社
井原 将吾2020年入社
川田 真里亜2020年入社
角 遼太郎2020年入社
鈴木 洸明2017年入社
白井 さおり2016年入社