中大規模木造建築の
更なる普及実現するために、
耐震技術の研究開発に取り組む。
私が所属する筑波研究所の建築グループでは、主に中大規模木造建築の研究開発に取り組んでいます。このグループは「耐火」と「構造」の2チームで構成され、私は構造チームにおいて、ポストテンション耐震技術や構造材の接合技術などに関わる研究開発に携わっています。特にポストテンション耐震技術は住友林業が今後中大規模建築を普及させるにあたって、重要な要素となる研究開発のテーマの一つです。この技術は、木質材料に通した高強度の鋼棒やワイヤーロープに緊張力を与えることで部材間の固定度を高める技術です。一般的な建築物の構造では、大地震で骨組みが壊れてしまうとその改修に莫大な労力と費用がかかってしまいます。場合によっては建て替えが必要なケースも出てきます。しかし、この技術であれば、骨組みを固定する金物のみが損傷する設計になっているので、この損傷した金物を交換するだけで耐震性を復活させることができるのです。中大規模木造の更なる普及実現には、耐火性能とともに、このような耐震性能の追求が鍵を握ります。その一方で、単に強度を高めれば良いというわけではなく、施工の効率化やコストダウンも視野に入れた研究開発が重要になるため、日々研究を重ねています。
入社2年目、初めて任された研究テーマ。
失敗を乗り越え、
独自の試験技術を確立する。
入社後まずは先輩の研究に立ち会いながら、木造の構造開発における基礎的な知識や技術を学びました。そして入社2年目、初めて任された研究テーマはポストテンション耐震技術に用いる木材の変形特性を把握するための試験方法の検討でした。この試験では、試験機と試験体を繋ぐ部品(治具)が重要になりますが、既存の治具を使用した試験では必要なデータが抽出できないことがわかりました。そうなると独自の治具を製作しなければなりません。自分なりにアイデアを考え、先輩にも相談して試行錯誤を続け、新たな治具が出来上がりました。ところがいざ実験を実施したところ、想定以上に負荷がかかり治具の一部が壊れてしまったのです。この失敗には正直落ち込みました。それでも再び先輩からアドバイスを受けながらトライ&エラーを繰り返し、ようやく完成させることができました。現在では、この治具を使ってこれまで抽出できなかったデータを蓄積・活用することが出来ており、ポストテンション耐震技術の最適化に貢献できていると考えております。
中大規模木造建築の可能性を
追求し続けていく。
入社3年目になって、任される研究テーマも増えてきました。とはいえ、まだまだ学ぶことばかりです。若手のうちは経験が足りない分、全力で走り続けていこうと考えています。先ほどの研究テーマも無我夢中で、その最中には分かりませんでしたが、必死になって論文や資料を読み込んだ結果、気付けば多くの知識が身に付いていました。目の前のテーマをやり遂げて次の研究に取り組むとき、今までにない知識や経験を得ている自分に気付き、成長を実感することができました。研究者として深く考えるスキルを持つためには、多角的な視点が大切だと感じています。将来的には、施工の現場に近い他部門や海外プロジェクトなども経験してみたい。そして再び研究開発のフィールドに戻ってくれば、若手の頃とはまた違う発想ができるのではないでしょうか。研究開発の楽しさは、「0から1を生み出す創造のプロセス」。私ならではのアイデアから自社技術を生み出し、都市に多くの中大規模木造建築を実現し、持続可能な社会のために貢献する。それこそが住友林業の研究開発における魅力だと思っています。
例え失敗しても挫けることなく、それを乗り越えて前進し続けることです。初めて任された研究テーマでその大切さを学びました。試行錯誤の末に治具が完成し、その試験によって今まで抽出できなかったデータが得られるようになった。本気で頑張り抜いて良かったと思いました。失敗してもそれを受け止めて親身にサポートしてくれる環境があるからこそ、いつでも本気でぶつかることができています。