国策として位置づけられた
非住宅の木造・木質化。
保育園から事務所棟まで
非住宅の建築現場を管理。
住友林業はハウスメーカーとして知られていますが、手掛ける建築物は多岐にわたります。大きく、戸建中心の「住宅」と「非住宅」に分かれており、戸建住宅市場が、人口減少などの影響を受けていく傾向にある中、現在、住友林業は「非住宅」の事業にも力を注いでいます。そのきっかけの一つとなったのが、2009年、政府が打ち出した日本の森林・林業を再生する指針となる「森林・林再生プラン」。2010年には「公共建築物等における木材の利用促進に関する法律」が施行されるなど、非住宅建築の木造化・木質化の拡大は国策として位置づけられました。つまり、各種施設やビルなどの非住宅、都市づくりの建築材料に、鉄筋・鉄骨・コンクリートに加え、「木」という選択肢が加えられたのです。私は、これら非住宅の建築現場の管理・監督を担当しています。入社以来、保育園、障害者福祉施設、事務所棟、賃貸住宅などの非住宅物件を手掛けてきました。現在は、現場所長として、工程や品質、安全やコストを管理し賃貸住宅の新築工事を進めています。事業主様と打ち合わせを重ね、詳細な仕様を決定し、各専門協力会社の方々と調整して建物をつくり上げていきます。
柱をなくし、大空間を確保するという難題。
実現に向けた「木造トラス構造」への挑戦。
入社2年目、初めて現場所長として担当した現場が、大阪の2階建て事務所棟建築でした。採用された構法は住友林業独自の「ビッグフレーム」構法。優れた耐震性を確保しつつ、設計自由度が高いため、開放感のあるプランを可能とするものです。そして食堂として利用予定の11m×18mの広さがある2階部分。「柱を失くして大空間を確保する」という設計コンセプトでした。11m×18mの空間を柱なしで支えるには、体育館やドーム等で使用される「トラス構造」が必要でした。「トラス」とは、部材同士を、強度が高い三角形につなぎ合わせることによって大空間を支える構造部材です。近年、住友林業においても木造トラス構造の建物は増えてきましたが、私自身多くの経験があるわけではありません。検討を進める中、現場で部材同士を接合して一体化し、クレーンで吊り上げ天井部に設置する施工法を採用しました。「トラス」は一辺12m(6m×2)の二等辺三角形形状のものが6セットという巨大なもの。問題はクレーンで吊り上げる際、横置きの部材を起こすときに、接合部に負荷がかかり損傷してしまうことでした。いかにして吊り上げるか。試行錯誤の中から、接合部の負荷を最低限にするため、横置きではなく架台から垂直に立てて吊り上げるという方法を見出しました。これによってトラス施工が実現、開放感のある大空間をつくり出すことができました。お客様に喜んでいただき、また初めて現場所長として責任を果たせたことに、一つの達成感を得た取り組みです。
中大規模木造建築物の現場を手掛け、
環境木化都市の実現に寄与したい。
大阪の事務所棟建築では、お客様の要望に応えることの大切さと、それによって自分自身が得られるやりがいを実感しました。そして改めて思ったのが、建築現場の運営・管理は、信頼関係がなければ円滑に進まないということです。それはお客様との信頼関係であり、協力会社との信頼関係であり、社内メンバーとの信頼関係です。その関係を構築するには、愚直に誠実に対応することを継続していくことだと確信しています。その信頼関係が、優れた建物を生み出す原動力だと思っています。住友林業は今、「非住宅」の中でも、中大規模木造建築物への挑戦をしています。私自身も、より規模の大きな現場を任せられる現場監督に成長したいと考えています。そのためには、お客様への提案力や技術力、知識の吸収など課題が山積しています。それらを一つひとつクリアすることが、当面の目標です。現在、海外技術の導入や木造建築物の研究が進み、日本でも多様な木造技術が展開されています。今後、様々な木造建築物の経験を重ねることで技術を蓄え、街を森にかえる「W350計画」で進められる環境木化都市の構築や、木造建築の発展に寄与していきたいと考えています。
建築現場というのは、スケジュールが決まっており、その工程を管理することは重要な業務です。工程通りに現場を進めるために、先に進みがちになるときもあります。しかしそこで立ち止まって、お客様の想いを感じ、それを具現化するために今必要とされていることは何か、よく考えて結論を出し行動することが、私にとっての「本気」です。言い換えれば、常にお客様の想いに立ち返ること。それが「本気度」を強くさせます。