CHERRY STORY
世界的な建築家レンゾ・ピアノが設計したオーディトリアム音楽公園のコンサートホール。そして、北欧家具の名匠ハンス・J・ウェグナーがデザインした世界で最も美しいと称される「ザ・チェア」。チェリーが彩るものは、世界の巨匠が手がける作品です。
オペラをはじめとする音楽の歴史が息づくローマに誕生した緑豊かなオーディトリアム音楽公園。主にオーケストラによるコンサートに使われるメインホールはヨーロッパ最大級の大きさを誇り、緻密に計算された設計によって優れた音響効果を生み出しています。このメインホールの内装に使われているのが、ヨーロッパでも銘木として名高いチェリーです。特に優美な曲面でデザインされた天井は、チェリーの落ち着きある杢目(もくめ)と艶やかな光沢のある美しい色あいにより、ホール全体を華やかに彩っています。
Photo by Moreno Maggi
オーディトリアム音楽公園の設計は、パリのポンピドーセンターをはじめ、関西国際空港旅客ターミナルビルや銀座メゾンエルメスなどを手がけた世界的な建築家レンゾ・ピアノによるものです。数々の歴史ある建造物が街の至るところに存在し、オペラをはじめとする音楽文化への関心が高い古都ローマ。その地で音楽を楽しむ華やかな空間として、チェリーが彩るコンサートホールは新しい建築の歴史を刻んでいます。
北欧スタイルの家具を代表する名匠ハンス・J・ウェグナー。彼がデザインする椅子は、フォルムの美しさで有名です。中でも特に名高いのが、その名もずばり「ザ・チェア」という作品。世界で最も美しい椅子と称され、背もたれからアームへつながる曲面の美しさが特に目を惹きます。ウェグナーの椅子というとフォルムの美しさばかりが評価されがちですが、じつは木が持つ本来の表情や性質を活かしてデザインされています。「ザ・チェア」の背には2カ所のつなぎ目があり、微妙に色あいが異なっているのが特徴です。そのつなぎ目は光を受けると2つの美しい光沢を放ち、艶やかな木肌のチェリーの魅力を感じることができます。
森の中で育つ樹木は、一本の木から製材しても木目や色あいなどが場所によって微妙に異なります。この微妙な違いこそが自然素材の魅力であると考えたウェグナーは、新しい椅子のアイデアが浮かぶと職人を訪ね、構造や材質、仕口(接合箇所)について綿密に打ち合わせを重ねました。杢目と色あいに表情があり、木肌のきめが細かく、手触りの良いチェリー。そんな木の持つ個性を活かし、職人とともに生み出された一脚の椅子は、使うほどに風合いが生まれ、いっそう愛着が深まっていきます。
協力:PP MØBLER