TOPICS OF CHERRY
植物学的には桜の仲間であるチェリーと桜。春の訪れとともに満開の花を咲かせ、新しい季節の始まりを彩る桜は、日本人にとって特別な存在なのではないでしょうか。ここでは桜と日本の関係についてご紹介します。
桜の木が意外なところで活躍しているのをご存知でしょうか。たとえば、身近なところでは和菓子。江戸時代後期、花々や文様などをかたどる落雁(らくがん)や生菓子を作るために、彫刻の裏彫り技法を活かして菓子木型が作られるようになり、これらの菓子木型のほとんどが桜で作られていました。桜は材質が緻密で堅さを持ちつつ、加工がしやすいのが特長。そして、とてもなめらかな木肌を持っています。つまり、細かい模様を彫りやすい上に表面のきめが細かいので、仕上がりのきれいな和菓子をつくることができるというわけです。この木型のおかげで同じ形、大きさの和菓子をたくさん作ることができるようになりました。
撮影協力:HIGASHIYA
大胆な構図に、鮮やかな色彩。ゴッホやモネなど印象派の画家に大きな影響を与えたと言われる浮世絵は、職人の高度な技術が生み出した日本独自の木版画です。浮世絵の制作の工程では、まず、絵師が人物や風景などを描き、彫師が図柄を彫って版木をつくります。そして刷師が版木を使い、和紙に色を刷り重ねて完成させます。その版木の素材として使用されているのが桜です。浮世絵の髪の毛などの繊細な線は、1ミリ以下の幅で彫られます。材質の堅い桜は刃の通りがよく、角が崩れないので優美な線をきれいに表現することができます。
写真提供:(公財)アダチ伝統木版画技術保存財団
チェリーは、日本語で「サクランボ」または「サクラの樹」のこと。チェリーが属するサクラ属の学名はPrunus(プルヌス)で、これはラテン語でスモモの樹という意味です。サクラというと日本では春に満開に咲き誇る桜の花をイメージしますが、実はスモモを基準種として属名が決められています。というのも、海外のサクラ属にはサクランボ、プラム、モモ、アンズ、ウメ、アーモンドなどの果樹が多く、どちらかというと果実のイメージのほうが強かったのかもしれません。
サクランボは歴史の古い果実で、原生種がイラン北部からヨーロッパ西部にかけて生育していました。紀元前の古代ギリシャでは、すでに栽培されていたという記録も残っています。その後、16世紀頃からヨーロッパで本格的に栽培されるようになりました。日本にサクランボが伝わったのは明治初期で、プロシア(現ドイツ)の貿易商人が北海道で栽培を始めたと言われています。日本に古くから伝わったものには、スモモ、ウメ、アンズなどがあります。