睡眠には青色波長が邪魔者!
- 睡眠前に青色波長をあびると睡眠を阻害
青色波長をあびると睡眠誘導ホルモン『メラトニン』の分泌が抑制される。つまり寝る前に青色波長が少ない部屋で過ごすと眠りにつきやすい。 - バンブーがオススメ
睡眠環境での間接照明の反射木材には、青色波長を特に吸収してくれるバンブーがオススメ。

1.背景・目的
木の光学的特長として、木の反射率は、短波長域で小さく、長波長域で大きいことがある。(図1)したがって、木は、温かみを感じることができ、目に優しい材料であり、その青色波長成分は、ヒトの覚醒作用に関係すると言える。
木を間接照明の反射素材として利用する方法に着目し、間接照明の模型実験を用いた主観評価により、反射面の樹種の違いによる光環境(睡眠)との関係を明らかにする。
2.実験概要
試験デザイン
被験者は健常男女20名(20歳代男性:10名、20歳代女性:10名)で、全ての被験者に実験の趣旨目的方法をよく説明し、文章による同意を得た。
図2に実験のタイムスケジュールを示す。被験者はまず、実験室内の床に設置した間接照明模型の手前1.5mの場所で座位安静とし、照明を全点灯の状態で5分間読書を課した後、光環境に関する主観評価申告を行った。主観評価は、「床に置かれた間接照明器具が寝室における天井照明であり、寝る前に寝室で読書などをして過ごしている状態」を想定して質問紙に回答するよう指示した。その後休憩を取り、同様の主観評価申告を反射材5種類全てについて実施した。5種類の反射材は、被験者毎に提示順序をランダムに入れ替え、約2時間で全ての反射材についての回答を行った。
試験設備
図3に実験概要の模式図を示す。実験に用いた間接照明模型は、従来の間接照明器具を参考にして、1,400×1,400mmの板に1,000×1,000mmの開口部を開け、その側壁を幅300mmの板で囲み、全体に白色クロスを貼ることによって間接照明を模したものである。開口部の内側には100mmの立ち上がりを付け、被験者から直接光源が見えないよう配慮した。光源にはPCインバータ調光専用の昼白色蛍光灯40Wを4本使用し、間接照明器具の4辺に設置した。間接照明模型の側板を床に据え、発光面が鉛直方向に照射される形で実験を行った。実験対象の樹種は間接照明の反射効率を考慮し、長波長領域反射率が30%以上であるメイプル、バンブー、ヒノキ、パインの4樹種を選定し、白色クロスを対照とした計5種類の反射材を間接照明模型の背後から入れ替えできるようにした。
写真1に、実験中の状況写真を示す。
図4に実験対象とした5種類の分光反射率を示す。可視光反射率30%以上の樹種を選定した。図5より、4樹種の分光反射率は、短波長域(青色)で小さく、長波長域(赤色)で大きい、木の表面反射の特徴を示している。各反射材の色彩は、マンセル表色系で、メイプル8YR7/3.5、バンブー7.0YR6/4.5、ヒノキ8.5YR7/3、パイン9YR7/4と全てYR系であり、白色クロスはN9であった。なお、それぞれの樹種には表面保護のため、ウレタン塗装(全ツヤ無し)が施されている。
表2に5種類の表面写真を示す。
評価の種類・方法
表2に質問紙による主観評価申告項目を示す。各設問項目は6件法を使用し、深く考えることなく直感的に感じたままを回答するよう指示した。また、各反射材の鉛直面の分光放射照度を拡散透過板のついた分光計によって、被験者の着座位置から別途計測した。
3.結果
図5に反射板種別の主観評価スコアの平均点を示す。図の横軸の申告評価平均点は、表2に示す配点にしたがって、20名の被験者の各設問の点数より申告項目毎に計算したものである。図5より、就寝前の生活行動(読書など)を想定した場合において、設問4(明るさ)と逆の傾向で、設問5(落ち着き)、6(寝室への適合性)、8(眠気)の評価が高くなる傾向を示している。各反射板の違いを比較すると、白色クロスは、明るさのムラ・光の明るさの評価は高いものの、睡眠に関する設問についての評価は低い。一方、木の反射材は、白色クロスに比べ、明るさのムラ・光の明るさの評価は低いものの、睡眠に関する設問についての評価は高い。特にバンブーは、明るさの評価は最も低いが、睡眠に関する評価は最も良いことが分かる。
表3に各設問における白色クロスを対照とした他の反射材の申告評価平均点の差異をWilcoxon符号付順位検定で解析したものを示す。表2より、設問2(光の色合い)と7(居心地)以外で有意差があり、特に設問8(眠気)においては、全ての樹種において有意差が認められた。
図5に全放射照度に占める青色波長成分の割合と主観評価申告項目の設問8(眠気)の評価スコア平均との関係を示す。
図6の横軸は、青色波長成分(440~490nm)の照度の積算値を全放射照度(380~780nm)の積算値の割合として表したものである。図6より、全放射照度に占める青色波長成分の割合が大きくなるほど、眠気の申告評価平均点は低くなる傾向を示しており、全放射照度に占める青色波長成分の割合が最も小さいバンブーにおいて、眠気の申告評価平均点が最も高い値を示している。しかしながら、全放射照度の積算値と眠気の申告評価平均点の関係においても同様に、全放射照度積算値が大きくなるほど、眠気の申告評価平均点が低くなる傾向を示していたため、間接照明の青色波長成分の割合が、眠気の主観評価に関しての主要因であるかどうかは明らかにならなかった。今後、各反射材における照度を同一とした条件での青色波長成分の差異による検証が課題である。
()内は全放射照度の積算値 [μW/cm2]
4.考察
間接照明の反射板において木の樹種の違いによる光環境の効果を模型実験による被験者の主観評価によって明らかにした。その結果、評価対象とした樹種のなかではバンブーが、睡眠環境での間接照明の反射材として、最も適していることが示唆された。
- 引用文献:
- 「間接照明の木質反射素材がヒトの主観評価に及ぼす影響」日本建築学会学術講演梗概集. D-1, 環境工学I, 電磁環境 (2007) 461-462, 2007-07-31