【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E03
  • 快眠効果

睡眠を邪魔する青色波長を
木材+間接照明で減らそう

ここがPoint!
  • 木質仕上げ+間接照明は青色波長が少ない
    木質仕上げ+間接照明の組み合わせは、白色クロス+シーリングライトや白色クロス+間接照明と比べて、覚醒作用のある青色波長が少なかった。
  • 寝室には木質仕上げ+間接照明がオススメ
    寝室など寝る前の時間を過ごす部屋には、青色波長を吸収する木質仕上げ+間接照明が適している。
全放射照度に占める青色波長成分の割合

1.背景・目的

これまでに、木の青色波長成分を吸収する光学特性に着目し、木を間接照明の反射素材として利用する方法を提案した。間接照明の反射材の樹種の違いによる光環境(寝室)との関係を主観評価により評価したところ、対象とした樹種のなかでバンブー・メイプルが最も良好な評価を得た。
実大居室実験室(8畳)で、室内内装条件を変えた3室準備し、木の間接照明がヒトの睡眠に及ぼす生理的・主観的影響を終夜計測により比較評価する。

2.実証実験の概要

試験デザイン

被験者は健常成人男性10名(27~44才、平均33.3才、社会人)で、平日(月曜~金曜)に規則正しい生活をしている者を対象とし、事前の同意を得て、実験者が指定した条件で、実験1週間前からできる範囲内での条件統制を行った。1人の被験者につき、月曜夜~土曜朝まで連続5夜の計測を行った。初めの2夜は実験室での睡眠に慣れるため、本実験と同じ計測条件で練習を行い、後半3夜の照明条件3種の順序をランダムとし、比較実験の対象とした。
図1に1夜の実験タイムスケジュールを示す。着替え後から起床までの深部体温、皮膚表面温度、心電の計測と、主観評価(VAS; Visual Analog Scale)の申告を就寝前後に計4回、メラトニン定量用唾液の採取を就寝前後に計6回実施した。表1に主観評価申告VASを示す。読書時の着座顔面付近の鉛直面照度は100lxで統一し、就寝時は消灯するものとした。枕は5種類を用意し、被験者の日常使用しているものと極力近いものを選択することとした。ベッド・寝具(タオルケット)・寝衣(甚平)もそれぞれ統一した。また、各室における鉛直面分光放射照度を被験者の読書時の着座位置から別途計測した。
写真1に実験中(1時間半の読書・7時間の就寝)の状況写真の一例を示す。

図1 実験タイムスケジュール
図1 実験タイムスケジュール
1時間半の読書
1時間半の読書
7時間の就寝
7時間の就寝
写真1 試験状況写真

試験設備

図2に光環境実験室の平面図を示す。居室実験室は3,640×3,640mm(8畳大)3室で、天井高さは2.4mである。3室の照明をそれぞれ、①シーリングライト、②白色クロスの反射材をもつ天井間接照明(以下、間接照明クロス)、③バンブーの反射材をもつ天井間接照明(間接照明バンブー)とした。照明以外の室内の仕様は全て同一とし、天井・壁は白クロス(ともにN9)、床は木質フローリング(9YR6/5)とした。3室の室温はエアコンにより、25℃一定とした。①のシーリングライトは、従来から住宅照明に使われている昼白色の蛍光灯70Wの乳白パネル付照明器具でφ550mmのものである。②、③の天井間接照明は、高さ200mm、ふところ200mm、開口部1,400×1,400mmの折上げ天井の各辺のふところに1,500mmの昼白色蛍光灯40Wを1本ずつ設置した。

図2 光環境評価実験室平面図
図2 光環境評価実験室平面図

写真2に実験室3条件の写真を示す。

①シーリングライト室
①シーリングライト室
②間接照明クロス室
②間接照明クロス室
③間接照明バンブー室
③間接照明バンブー室
写真2 実験室条件

評価の種類・方法

表1に質問紙による主観評価申告項目を示す。各設問項目は6件法を使用し、深く考えることなく直感的に感じたままを回答するよう指示した。また、各反射材の鉛直面の分光放射照度を拡散透過板のついた分光計によって、被験者の着座位置から別途計測した。

表1 主観評価申告項目
表1 主観評価申告項目

3.結果

図3に計測開始からの深部体温10分平準化温度差分を示す。図3より、深部体温の温度差分は、計測開始10、20分においてシーリングライトと間接照明バンブーとの間にそれぞれp=0.013*、0.036*の有意差がみとめられ、間接照明バンブー条件で有意に低下していた。心拍数とメラトニンにおいては有意差がみとめられなかったが、間接照明バンブーの心拍数が平均的傾向では安定していた。

図3 深部体温の10分平準化温度差分
図3 深部体温の10分平準化温度差分

図4、5に主観評価申告VASの結果の一部を示す。被験者の心身の状態を示す覚醒度・気分・気力・疲労の項目は、順序尺度を合計して総合的覚醒度とし、それ以外の項目は、照明の状態についての評価スコアとして個別に比較し、各照明条件間でWilcoxon符号付順位検定を行った。図4より、総合的覚醒度の主観申告評価では、読書前においてシーリングライトと間接照明クロスの間にp=0.049*の有意な差がみとめられ、間接照明クロスの評価が有意に高かった。

図4 総合的覚醒度の主観評価申告
図4 総合的覚醒度の主観評価申告

図5より、室内照明の快適性項目の主観評価申告は、読書後においてシーリングライトと間接照明バンブーの間にp=0.037*、就寝前においてシーリングライトと間接照明クロスの間にp=0.014*、シーリングライトと間接照明バンブーの間にp=0.006**、起床後においてシーリングライトと間接照明クロスの間にp=0.009**、シーリングライトと間接照明(木)の間にp=0.022*の有意差が、それぞれみとめられ、間接照明バンブーの評価が有意に高かった。その他の評価項目においても、間接照明バンブーは、照明の色合い・安心感・快適性・落ち着き感・寝室との適合性・居心地・眠気の評価が有意に高いことが分かった。

図5 室内照明の快適性項目の主観評価申告
図5 室内照明の快適性項目の主観評価申告

図6に被験者の着座位置からの鉛直面分光放射照度の積算値(全波長成分380~780nmと青色波長成分400~440nm)と全放射照度に占める青色波長成分の割合を示す。図6より、間接照明バンブーの全放射成分の積算放射照度が、やや大きい値を示しているにもかかわらず、青色波長成分の積算放射照度は小さい値を示しており、全放射照度に占める青色波長成分の割合も小さくなっている。これは、バンブーが間接照明の青色波長成分を吸収していることを意味しており、生理評価と主観評価申告の序列は概ね、この青色波長成分の放射照度量の逆序列に従って寝室環境に適合していると考えられる。

図6 積算放射照度(全放射成分と青色波長成分)と全放射照度に占める青色波長成分の割合
図6 積算放射照度(全放射成分と青色波長成分)と全放射照度に占める青色波長成分の割合

4.考察

間接照明の反射素材がヒトの睡眠に及ぼす生理的・主観的影響を終夜計測により比較評価した。その結果、生理的覚醒作用をもたらすとされる青色波長成分の放射エネルギー量の最も少ない間接照明バンブーが、就寝前の寝室照明環境としてより適していることが示唆された。

引用文献:
「寝室間接照明における反射素材がヒトの睡眠に及ぼす生理的・主観的影響」日本建築学会学術講演梗概集. D-1, 環境工学I, (2008) 135-136, 2008-07-20