●みんなのいえ かぞくのへや
2016/04/08 公開
5月の空を泳ぐ、勇壮な鯉のぼり。独特の絵柄や色あいは日本ならではのものですが、最近はコンパクトサイズやポップな絵柄のものも増えています。子どもの無事な成長を願うシンボルでもある鯉のぼり、わが家に合ったタイプを選んでみませんか?
どっしりとした支柱の先端で矢車が回り、大きな吹き流しと色とりどりの鯉のぼりが空に舞う景色。端午の節句が近づき、新緑の田園風景のなかで鯉のぼりが掲げられている様子を見ると、どこの子もみんな元気で成長しますように......と願いたくなります。
この鯉のぼりに込められた願いは、ズバリ、「立身出世」。内飾りといわれる鎧兜や武者人形は「武具で身を守る」ことから病気や災難からの魔除けとして飾られますが、外飾りの鯉のぼりは「登竜門」の言葉で知られる中国の故事「龍門の急流をのぼりきった鯉が龍になる」という、鯉の滝のぼりが由来と言われています。また武家の家では跡取りの長男が生まれると玄関にのぼりを立てて誕生を神様に知らせ、無事の成長を祈る風習がありました。これが、江戸時代の中頃から庶民のアイデアで鯉のぼりに変化していったと言われています。
時代が変わっても、子どもが生まれた喜びや無事な成長を願う親の気持ちは変わりませんが、鯉のぼりや鎧兜、武者人形など節句の飾りは少しずつ変わっているようです。
「屋根より高い~」と童謡に歌われた頃から大きく変わったのは、鯉のぼりの大きさとデザインです。今の売れ筋はベランダでも立てられるポール付きのコンパクトなもので、玄関ホールや床の間に立てておける室内タイプも人気です。デザインも子どもが喜ぶキャラクターの絵柄がついた"キャラのぼり"が登場するなど、勇壮というよりはポップな絵柄も増えてきました。また、飾っておくだけの物だった兜や鎧、陣羽織も、子どもがかぶったり身につけたりできるタイプが登場。武将姿で記念写真を撮ったりして、親子で楽しむことができます。
ちなみに、魚の形をしたオブジェが空を舞う様子は世界でも珍しい光景といわれています。勇壮な鯉のぼりが風にたなびく5月の景色は大切に残したいもの。4月の後半からゴールデンウィークの期間中には、日本各地で鯉のぼりを飾るイベントも開催されます。たとえば、茨城県の竜神大吊橋では1000メートルのワイヤーロープに1000匹もの鯉のぼりが竜神渓谷を泳ぎます。この季節だけの光景を見に出かけてみてはいかがでしょう?
コンパクトサイズの鯉のぼりは出すのもしまうのもラクですが、外で飾ったものは汚れを落とし来年もキレイな姿で飾れるように収納しましょう。
鯉のぼりと合わせて立てられる「武者のぼり」。これは、戦(いくさ)のときに鎧(よろい)の背中にさして目印とした「旗指物(はたさしもの)」が起源だそうです。室町時代末期に武家社会で行われていた「端午の節句に、旗指物を虫干しをかねて飾る」という風習を庶民が真似て、全国各地で武者のぼりが立てられるようになっていったのが始まりと言われています。昔の人が、家の旗印や身を守る鎧兜を大切にしたように、鯉のぼりや内飾りも手入れをしましょう。鯉のぼりの汚れは洗剤を使わず手洗いし、汚れの目立つ部分は濡れた布に薄めた洗剤をしみこませ拭き取ります。現在の鯉のぼりはほとんどがポリエステル製かナイロン製です。乾燥機やアイロンは使わず手でシワを伸ばし、形を整えて干します。十分に乾かした後は防虫剤を使わず、通気性の良い収納ケースや風呂敷に包んでしまいましょう。