●みんなのいえ かぞくのへや
2015/03/31 公開
家の真ん中に一本の木を植えることからはじまる、家づくり。木を囲む中庭には自然と家族が集まり、2世帯住宅を結ぶ「きずなの木」になります。太陽に向かって真っすぐたくましく育つ木は、子どもの成長にも重なります。いつか大人になったとき「この木といっしょに大きくなったんだ」と思えるような、思い出の木を植えましょう。親世帯と子世帯、それぞれ生活スタイルのちがうふたつの家族を結ぶ「シンボルツリー」。みんなをつなぐ家づくりが始まります。
大正時代や昭和のはじめに建てられた名家のお屋敷。当時、流行していた洋風の外装をとりいれながら、屋敷の内部は広々とした敷地のなかにいくつもの棟や蔵がつらなる、和風建築であることが多いようです。客を迎える応接室や家族の居室、台所など、それぞれの目的を持った棟は、中庭をかこむような渡り廊下でつながっています。暮らす人たちがそれぞれの棟を行き来しやすいよう考えられたその様式は、とても機能的で、そして現代から見ても贅沢な暮らしです。
お屋敷のように「いくつもの棟」とまではいかなくても、2世帯住宅で、ふたつの家族が暮らすとき、ふたつの棟が寄りそうように建つ「2軒のような1軒」の家なら、家族の交流も住み分けも上手くいき、自由度も高くなるはず。
正面から見ると鳥が羽を広げたように2つの建物が左右に広がり、仲よく寄りそうような二つの棟。そして、その真ん中に植えられた一本の木。周辺に花を植えたり菜園を作ったりと木を中心にした中庭作りになり、それぞれの家の間取りにつながっていきます。
一本の木を中心にして広がるプラン。 たとえば「木を囲むイングリッシュガーデン風の中庭」「縁台を置いて座ったりお茶を飲んだりできる場」「一階のウッドテラスからすぐ出ていける庭」とそれぞれの「中庭での過ごし方」をイメージすると、理想家づくりの夢が広がります。
この中庭を中心にすると、正方形の敷地を上から見ると「コ」の字形の家に。 2世帯それぞれに玄関、キッチン、リビングダイニングを備えたふたつの棟があって、両棟を結ぶフロアを共有スペースにする、そんな大まかなプランも見えてきます。
「家の顔」ともいわれる玄関まわり。ふたつの棟とそれぞれの玄関ドアが並ぶ正面は、クールでスクエアなイメージになりがちですが、木を中心に草花が咲く中庭のが、家に彩りをそえて空気を和らげ、家族や訪れる人を暖かく迎えてくれます。
「コ」の字の内側に作る小さな中庭。庭に面した壁には、たっぷりと外光が入る大きめの窓をいくつかつけてみます。一階ならば、屋内のテラスや和室と境目を感じないような空間に。2世帯それぞれの建物、それをつなぐ棟の3面のどの角度からも中庭を望むようにすると、キッチンや子ども部屋、親世帯のリビングからも一本の木が絵のように浮かんでみえ、外の景色もわが家だけのオリジナルな光景に。朝起きて、青々した緑の葉をつけた大きな木を見て一日が始まり、木陰の様子や風にそよぐ葉を見ながら、食事をしたりくつろいだり。そんな毎日をイメージすると、今まで考えてもみなかった「木と暮らす」生活が身近に感じられます。一本の木があるだけで、家づくりのイメージがどんどんふくらみますね。