●わたしらしさを楽しむ家づくり
2018/01/26 公開
マホガニー、チークとともに世界三大銘木のひとつに数えられるウォルナット。杢目(もくめ)が描く美しいグラデーションは自然が生み出した芸術とも言われています。時間を重ねるごとに深まるウォルナットの魅力を紹介します。
日本を含む温帯地域に幅広く分布するウォルナット。木材としてはもちろん、秋に実る実はクルミとして親しまれてきました。数ある種類の中でも、銘木として知られているのがブラックウォルナットです。北アメリカ東部に生育し、深い溝のある樹皮が特徴的です。ウォルナットの杢目は時間を経ることに変化して風合いが深まりますが、これは樹木に含まれているタンニンの影響によるもの。なめした皮と同じように使い込めば使い込むほど艶のある光沢を増し、味わいのある深い色合いへと変化していきます。
ウォルナットは家具材として世界中で愛されてきました。ヨーロッパではルネサンス時代から最高級の家具材として扱われ、17世紀から18世紀は「ウォルナットの時代」と呼ばれるほど絶大な支持を集めるように。
実際に約500年の歳月をかけて完成したミラノ大聖堂を訪れたら、ウォルナットの歴史に触れることができます。大聖堂の一番奥に位置する聖歌隊の合唱席はまさしくウォルナット製。重厚な輝きを今なお失わず、荘厳で静謐(せいひつ)な空間に美しく溶け込んでいます。現代建築でも高級ホテルやモダンなバー、国際空港などさまざまなシーンでウォルナットが使われ、空間に上質な彩りを与えています。
世界的な木工家具作家であり、自らを木匠(ぼくしょう)と称したジョージ・ナカシマ氏がデザインした椅子やテーブルにもウォルナットの無垢材が使用されていました。ナカシマ氏は著書『木のこころ』の中で「あなたがその表面に見ている木目は、板の中まで通っているものの現れである。木目は表面にだけ固着しているのではない。むく板は年と共に豊かに美しくなる」と語っています。彼によって新たな命を吹き込まれたウォルナットは、美しい杢目や色合いの変化といった個性を最大限に表現。家具を通して自然が生み出す本質的な美しさと心地よさを私たちに伝えています。
豊かな風合いと美しさ、そして建材としての強度を兼ね備えたウォルナットは、床材などにも多く使われ、住まいに高級感を与えています。ウォルナットを用いた住まいの空間は、住友林業のサイト「PREMIUM TREE」およびカタログで紹介しています。ぜひご覧になってみてください。
参考文献:「木のこころ」ジョージ・ナカシマ著 神代雄一郎、佐藤由巳子共訳(鹿島出版会)