OAK STORY
ヨーロッパでは古くから家具などに重用され、世紀を超えて代々受け継がれているオーク。世界を代表する建築作品を彩るものとして。芳醇な味わいをもたらすウイスキーの熟成樽として。オークは歳月を重ねるほど、風格や味わいを深めていきます。
いまもなお建築がつづく世界遺産、サグラダ・ファミリア(聖家族贖罪教会)。バルセロナにあるこの壮麗な教会を設計したのが、スペインを代表する建築家アントニ・ガウディです。バルセロナ市内にはガウディが手がけた多くの作品が点在しています。その中のひとつが、「カサ・バトリョ」。砂岩やステンドグラス、色あざやかな破砕タイルなどが内外装に使われ、自然が生み出す造形に敬意を払ったガウディならではの独特な雰囲気につつまれています。この建物のドアや階段手すり、窓枠に使用されているのがオークです。建物のあらゆるところが曲線で構成されており、ドアや手すり、窓枠も優美な曲線を描き、まるで彫刻のような細工がほどこされています。
写真:カサ・バトリョの階段ホール
ガウディは自身の建築作品の中に置かれるのにふさわしい家具も自らデザイン。「カサ・バトリョ」や「カサ・ミラ」「カサ・カルベ」には有機的な曲線を描くガウディならではのデザインがほどこされた椅子やデスク、テーブルなどの家具が置かれていました。現在、ほとんどの家具はカタルーニャ美術館に所蔵されていますが、一部は建物内で見ることもできます。天才建築家ガウディによって美しく装飾されたオーク。それらは建物とともに時を刻み、その風合いはますます深みを増し、現在も世界中の多くの人々の心をとらえています。
口に含むと、まろやかで芳醇な香味が広がるウイスキー。この味わいを生み出しているのがオークでつくられた樽です。初めて原酒を貯蔵する新樽は木香が強く、熟成も早く進みます。しかし、使い込むほどにその香りは上品になり、長期熟成用の樽として用いられるようになります。数十年にわたり、4回から5回、熟成樽として長い歳月を過ごすオークの樽。その間、絶えず吸湿を繰り返し、ウイスキーにはオークの成分が溶け出し、樽材にはウイスキーが染み込んでいます。
協力:サントリー株式会社
参考文献:「樽とオークに魅せられて」加藤定彦・著/吉田勝彦・絵(阪急コミュニケーションズ)