2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、建設業界では「暮らすときのCO2排出量(オペレーショナルカーボン)」と「建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)」、二つのCO2排出削減を目指す脱炭素化の取り組みが求められている。国土交通省は2023年に「2030年のエンボディドカーボン算定義務化」に言及し、日本でも脱炭素の動きが加速し始めている。全世界のCO2排出量のうち、建設部門の占める割合は約37%(※)と言われている。さらに内訳は約70%が「暮らすときのCO2排出量(オペレーショナルカーボン)」で、残り30%が「建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)」である。「暮らすときのCO2排出量」は既に、ネットゼロエネルギーハウス・ビルディング(ZEH・ZEB)の普及により削減が進んでいるが、今後は「建てるときのCO2排出量」の削減が課題となる。つまり、「建てるときの脱炭素化」である。
この建設分野のCO2排出量削減に向けて、すでに欧米を中心に国際的な枠組みが形成されている。また、海外の投資家や企業などからは国際規格に準拠したCO2排出量開示や、LEEDなどグリーンビルディング認証に対するニーズが高まっている。ヨーロッパでは2025年以降、すべての建材で温室効果係数の開示が要求され、2027年以降は、建物のエンボディドカーボン算定と算定結果の開示が要求されることになる。
こうした国際的なエンボディドカーボン情報開示の動きについて、当社は海外のサプライヤーやパートナー企業から情報提供を受けており、当社筑波研究所でも10年以上前からLCAに関する研究を進めてきた。日本ではエンボディドカーボン算定がなかなか認知・定着しない中、住友林業の脱炭素事業において、自社のみならず、社会全体のCO2の吸収・固定に寄与し、業界の全網羅的な取り組みとして、脱炭素建築のスタンダード化を推し進めるプロジェクトを構想。世界140カ国に普及しているエンボディドカーボン算定ツール『One Click LCA(Life Cycle Assessment)』を日本市場に広めていくパートナーに名乗りを上げ、2022年よりOne Click LCA社と日本単独代理店契約を締結した。日本市場に適合するようにカスタマイズを行い、同年8月に日本版ソフトウェアを発売している。
「One Click LCA」はフィンランドのOne Click LCA社が開発するソフトウェアで、欧州を中心に広く普及しており、業界トップクラスのシェアを誇る。ISOや欧州規格を含む世界60種類以上のグリーンビルディング認証に対応している。同製品では、建設にかかる建築資材の調達から、輸送、建設・施工、改修、廃棄に至るまで、「建てるときのCO2排出量(エンボディドカーボン)」を精緻に算定することが可能である。
※出典:global alliance for building and construction(2021)