子育てファミリーの家づくりでは、延床面積30坪が広さの目安となることが多いようです。スペースを最大限活用し、快適な暮らしを実現するには間取りがカギとなります。人気のプランなどから快適にするポイントを解説します。
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すべての部屋を合計した広さが30坪で足りるのか、坪数ではイメージしにくい人もいるかもしれません。住まいの間取りを検討するために、まずは30坪がどのくらいの広さか、確認するところから始めましょう。
日本は古くから尺貫法という単位が長さや質量などの基準としてきました。1尺がメートル法で約33センチ(0.33m)となりますが、そこから設計の基準として3尺(0.91m)×3尺(0.91m)をひとマスとした尺モジュールで建物設計がされるようになり、その4マス分(1.82m×1.82m)が一坪という単位になります。和室の畳2枚分がおおよそ一坪の大きさの目安となります。6畳の部屋は3坪となります。
現在、マンションなどでは広さを表す単位として㎡(平米)が使われますが、注文住宅など戸建てでは今でも坪数が使われています。これは、日本人の身体のサイズや暮らしに合った住まいづくりをしやすいのが理由だといわれています。
なお、延床面積とはすべての階の床面積を合計(ロフトなどは除く)したものです。延床面積30坪は「30×約3.3=約99㎡」となり、畳の枚数で表すと60枚分となります。このように置き換えると、どれくらいの広さか実感しやすいかもしれません。
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1坪って何㎡?
住宅金融支援機構がまとめた「フラット35利用者調査(2023年度)」※1によれば、2013年の注文住宅の延床面積の平均は約40坪(130㎡)を超えていましたが、2023年度の注文住宅の延床面積の平均は約36坪(119.5㎡)と、近年は面積が減少傾向にあります。また、建売住宅の延床面積の平均は約31坪(101.6㎡)と、10年間でほとんど変わっていません。近年のフラット35を利用して戸建住宅を取得する方の間では、延床面積が30~35坪程度の住まいを選択する人が多いようです。
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生活の基盤である住まいについて、国土交通省は「住生活基本計画(全国計画)」※2で方針や目標を示しています。住宅の広さについては、多様なライフスタイルに対応して豊かな住生活を実現するのに必要な住宅の面積=「誘導居住面積水準」が設定されています。誘導居住面積水準のうち、都市部以外の戸建住宅を想定した「一般型誘導居住面積水準」は、<単身者:55㎡> <2人以上の世帯:25㎡×世帯人数※3+25㎡>で、世帯人数に応じて必要な広さを求めることができます。誘導居住面積水準で計算してみると、やはり延床面積30坪が一つの目安になることが分かります。
※2 出典:住生活基本計画(全国計画) 令和3年3月19日閣議決定
※3 世帯人数をカウントする際は、3歳未満は0.25人、3歳以上6歳未満は0.5人、6歳以上10歳未満は0.75人として計算します。なお、合計した世帯人数が2人に満たない場合は2人とすることになっています。
▼一般型誘導居住面積水準
<単身者:55㎡>
<2人以上の世帯:25㎡×世帯人数+25㎡>
では実際に誘導居住面積水準で、面積を計算してみましょう。上記の条件の場合、3歳以上6歳未満は0.5人としてカウントしますので、世帯人数は2.5人となります。計算式にあてはめると、「25×2.5+25=87.5㎡(約26.5坪)」になることが分かります。ただし、子育て期間のためだけに家を建てる人はいないでしょうから、成人まで一緒に暮らすことを考えると、「25×3+25=100㎡(約30坪)」と考えた方が良いかもしれません。
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次に、もう少し世帯人数が多い上記の条件で計算してみます。6歳以上10歳未満は0.75人として数えますので、先ほどの計算式にあてはめると、「25×3.5+25=112.5㎡(約34坪)」と面積がやや増えます。この場合でも、子ども部屋をコンパクトにするなど間取りを工夫するアイデアを取り入れれば、延床面積30坪でも4人家族で十分快適に暮らせる住まいにできそうです。子どもの人数が多い場合は、順番に巣立っていくことも考慮し間取りに工夫をしておきましょう。
家づくりで希望する条件をすべて実現しようとすると、建物が大きくなり、価格も高くなってしまいます。子どもの成長とともに変化する世帯構成に対応しやすく、ライフスタイルに合わせて趣味なども楽しめる、バランスを取りやすいのが延床面積30坪程度の住まいなのかもしれません。
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延床面積が同じでも、間取りによって室内の空間の活かし方は大きく変わります。家族の年齢や人数はもちろん、家でどんな時間を過ごすのか、ライフスタイルに合った間取りにすることがポイントになります。
1階2階ともに、大きな窓がある間取りプランです。光と風をたっぷり取り込めます。
1階はテラスやウッドデッキを設置すれば、より暮らしの幅が広がるでしょう。テレワークの合間の小休憩、休日のBBQ、読書、ガーデニングなど、心地よい屋外空間でのんびり過ごせます。
2階にはゆったりしたバルコニーや充実した収納があります。バルコニーに干した洗濯物は、乾いたらスムーズに寝室のウォークインクローゼットや洋室のクローゼットに収納できます。
1階
2階
間取り 3LDK
延床面積 99.36㎡(30.04坪)
1階床面積 48.85㎡(14.77坪)
2階床面積 50.51㎡(15.27坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/1212
小さな子どもがいる家族は、将来を想定して可変性のある間取りにしておくことも大切です。
1階のLDKに隣接した和室は、必要なときだけ仕切って使えるのがポイントです。育児スペース、来客時の客間、趣味室など多目的に利用できます。
2階の子ども部屋は仕切りが必要になるまでは空間を広く使い、家族共用のワークスペースで勉強の様子を見守るなどできるでしょう。
和室の押入れ、リビングクローク、寝室のウォークインクローゼットなど、家族みんなの収納もしっかり確保されています。
1階
2階
間取り 4LDK
延床面積 102.68㎡(31.05坪)
1階床面積 50.51㎡(15.27坪)
2階床面積 52.17㎡(15.78坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/0180
1階は、広々とした玄関ポーチやエントランスクロークがあるので、出入りがスムーズです。特に雨の日で傘を持っているときや、お子さまがまだ小さくベビーカーがある場合など、玄関まわりにゆとりがあるとストレスも軽減されます。
また、外から帰ってすぐ洗面所や浴室に行ける動線は、お子さまが小さいと汚れをすぐ落とせるのでとても助かります。
キッチンにはパントリーもあるため、食品や日用品の収納にも困りません。
2階には、大型のウォークインクローゼットと納戸があり、収納も十分です。寝室と子ども部屋の間の共用スペースにはテーブルもあるため、テレワークや読書スペースとしても活用できそうです。
1階
2階
間取り 2LDK
延床面積 108.06㎡(32.68坪)
1階床面積 55.48㎡(16.78坪)
2階床面積 52.58㎡(15.9坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/1013
1階は大きな窓のある開放的な20畳のLDKが中心です。玄関にはエントランスクローク、キッチンには食料品などをしまえる大容量のパントリー、階段下にはリビングクロークと、適材適所の便利な収納を設けています。
2階にも収納の工夫があり、子ども部屋は収納が間仕切りにもなっています。子ども部屋を4.5畳とコンパクトにすることで、その分、他の空間の広さを確保することができています。
また、寝室と子ども部屋の間に空間を設けることで一定の距離感が生まれ、子どもが多くなった時も家族間のプライバシーが確保できるようになっています。
寝室に付属したワークスペースを設けることで、1階の生活音を気にせずテレワークに集中できるようにしているのもポイントです。
1階
2階
間取り 3LDK
延床面積 110.96㎡(33.55坪)
1階床面積 54.24㎡(16.4坪)
2階床面積 56.72㎡(17.15坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/1225
上下階で空間が区切られていない平屋は一体感のある暮らしができる一方、来客時のプライバシーが保ちにくいこともあります。
この間取りでは、寝室とLDKの距離を空けるようウォークインクローゼットと物入を設け、LDKから寝室のドアが直接見えないように工夫しています。
キッチンから浴室まで一直線につながる機能的な家事動線は、玄関への生活動線としても使えて便利です。和室は普段はふすまを開けて広々と、必要なときだけ仕切って客間や趣味室として使えます。
間取り 2LDK
延床面積 80.32㎡(24.29坪)
1階床面積 80.32㎡(24.29坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/0949
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土地にゆとりがあれば、外とのつながりを感じられる中庭のある間取りも可能です。奥まったLDKに面して中庭を設けることで、外からの視線を気にせず、自然の心地よさを家族で感じて過ごせます。建物の真ん中に21畳のLDKを置き、このプランでは、左右両側に寝室や子ども部屋、浴室や洗面所などの水回りを配置して、適度に家族同士のプライバシーを保てるよう配慮しています。
玄関そばに大きな納戸を設け、アウトドア用品やスポーツ用品など、かさばりがちなものもしまえるよう工夫しています。
間取り 3LDK
延床面積 91.09㎡(27.55坪)
1階床面積 91.09㎡(27.55坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/0978
L字型の建物でリビングとダイニングをゆるやかに分け、中庭から光と風を効果的に室内に取り入れます。
玄関そばの和室、二つの子ども部屋、そして寝室がLDKを囲むように配置され、家族がコミュニケーションを取りやすい間取りです。
キッチン奥には、浴室、洗面所、室内干しスペース、さらにウォークインクローゼットが一直線に並んでいます。「洗う→乾かす→しまう」という洗濯家事の動線が最短距離になっています。
客間など多目的に使える和室は、庭で外干しした洗濯物を取り込んで畳む際にも、活躍しそうです。
間取り:4LDK
延べ床面積:98.54㎡(29.8坪)
1階床面積:98.54㎡(29.8坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/2332
約25畳のゆったりとしたLDKに面して、子ども部屋や寝室を並べて配置することで、いつも家族が互いを感じながら暮らせる間取りです。
廊下をつくらないことでスペースを有効活用しています。寝室から洗面所へ通り抜けできるウォークインクローゼット、玄関のエントランスクローク、キッチンのパントリーなどの収納のほか、室内干しスペースも確保できています。
リビングの一角に子どもの学習コーナーを設けたほか、キッチンの奥には独立したワークスペースがあり、集中して仕事に取り組めます。
間取り 3LDK
延床面積 104.75㎡(31.68坪)
1階床面積 104.75㎡(31.68坪)
https://sfc.jp/ie/lineup/fs/sim/plan/2280
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30坪未満の建築実例
30坪台の建築実例
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延床面積30坪のスペースを効果的に活かす設計により、住み心地や使い勝手を高めることができます。ここでは、間取りを考える際に注意したい点や、おすすめしたい工夫のポイントを紹介します。
家族が集い、コミュニケーションの場になるリビングは、広さや開放感を得られる空間にしましょう。リビングに、上の階とつながる吹き抜けや、屋根裏空間を利用した勾配天井にして天井を高くすれば、縦の空間が広がり面積以上のゆとりを感じられます。家族の個室をコンパクトに抑えたり、廊下や玄関ホールをなくしてリビング階段にしたりするなど、メリハリをつけた間取りにすることでスペースをうまく活用しましょう。
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また、大きな窓から明るい光と爽やかな風を取り込み、屋外にウッドデッキを併設すれば、アウトドアの心地よさも気軽に満喫できます。庭とつながる開放感を得られるウッドデッキだけでなく、地窓や雪見障子なども、抜け感を演出し目線を遠くに飛ばすことで、開放感を与えてくれる家づくりのポイントのひとつになるでしょう。
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LDKに隣接して和室を設け、必要なとき以外は引き戸をオープンにしておくのも広く暮らすアイデアの一つです。子ども部屋は間仕切りをつくらず、必要な年齢になったら移動式の家具で空間を分ける方法もあります。できる限り視線を遮るものを減らし、空間をつなげることを意識すると良いかもしれません。
家族構成に合わせた収納計画が前提となりますが、限られたスペースを効果的に利用するため、各部屋の収納は最小限にして、ファミリークローゼットなど共用の収納を設けると良いでしょう。衣類の収納は分散して設置すると活用しきれないスペースが生じがちですが、1カ所にまとめることで収納スペースのムダがなくなり、乾いた洗濯物をしまう手間も減らせます。延床面積30坪の家づくりでは、居室と収納のスペースのバランスが間取りを決める大切なポイントになります。
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キッチンの近くには、週末に買いだめした食品や、ペットボトル飲料などのストック分をしまえるパントリー収納を設けると便利です。玄関から重たい荷物を運ぶ際の動線も考慮してパントリーの位置を検討しましょう。玄関土間に大容量のシューズクロークを設ければ、家族みんなの靴や、ベビーカー、アウトドア用品や、趣味のガーデニンググッズなどもすっきりと片付けられます。
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デッドスペースの本来の意味は、建築物の構造上、活用するのが難しい空間のことです。これをうまく活用できれば、そのぶん居室スペースが広くなります。屋根と天井の間を小屋裏収納やロフトにしたり、床下に収納を設けたり、階段下を収納やデスクスペースにできれば、建物内の空間のムダを減らせます。小屋裏収納には、スーツケース、クリスマスツリー、扇風機など、季節用品や利用頻度が低いものを片付けましょう。そのほか、壁の厚さを利用して、文庫本や単行本などを収納する方法もあります。
動線を考えるときは、生活動線=「帰宅時や外出時、トイレや浴室への経路等」と、家事動線=「料理・洗濯・掃除の経路等」を分けて検討すると良いかもしれません。いずれの場合も、なるべく移動距離を短く、作業をまとめて行えるようにするのがポイントです。例えば、玄関とリビングの途中に洗面所を設置すれば、子どもが帰宅してすぐ手洗いができ便利です。また、寝室から廊下へ通り抜けできるウォークスルークローゼットなら、外出前や帰宅後の着替えがスムーズになります。
キッチンや浴室などの水回りを近くにまとめ、洗面所・脱衣所と室内干しができるランドリールームを一体にすれば、同時並行で家事がしやすくなり、時短にもつながるでしょう。回遊性を持たせるのもスムーズな動線にするポイントです。アイランドキッチンとダイニングテーブルを並べてレイアウトすれば、家族で周りを囲んで、料理の配膳や片付けなど家事協力がしやすくなります。
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延床面積30坪の家を建てるケースでは、敷地も比較的コンパクトなことが多いかもしれません。窓を設けたのに隣家との距離が近いためカーテンを閉めたまま、なんてことにならないようにしたいものです。採光や通風が確保できるよう、窓の大きさや位置についてもしっかり検討しておきましょう。例えば、コの字型の建物のデザインで、内側に中庭を設けると、室内のプライバシーを保ちつつ、光や風を取り入れやすい住まいになります。室内が明るいと、それだけで空間を広く感じられるものです。
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30坪の家で広く快適に暮らすアイデア
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家族みんなが集う明るい吹き抜けリビング、家事をスムーズにする動線、パントリーやウォークインクローゼットなどの便利な収納、快適にテレワークができるワークスペースなど、30坪の家には意外とたくさんの希望する要素を入れることが可能です。ただし、バランスよく間取りに落とし込むには丁寧な検討が必要でしょう。
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