キッチンはレイアウトによって料理や配膳のしやすさはもちろん、家族やゲストとのコミュニケーションの取りやすさも左右されます。そこで、キッチンのレイアウトを考えるときに知っておきたいポイントや、キッチンレイアウト別のメリット・デメリット、参考にしたいキッチンの事例をご紹介します。ライフスタイルに合うキッチンをつくるヒントにしてください。
千葉展示場(千葉県千葉市中央区青葉町1249-1 区画番号17 ハウジングプラザ千葉・青葉の森)
キッチンレイアウトとは、コンロやシンク、冷蔵庫や収納棚などの配置を表す言葉です。これらの配置により料理や後片付けのしやすさは大きく変わるので、家を建てるときには、キッチンレイアウトについて十分に検討することが重要です。
ここでは、キッチンレイアウトを考えるときのポイントを、プランニングの注意点とあわせて解説します。
まずは、キッチンを通じてどのようなくらしがしたいかをイメージすることが大切です。
例えば、対面キッチンか壁付けキッチンかでも、暮らしが大きく変わります。
対面キッチンとは、シンクやコンロなどの調理スペースが、ダイニングやリビングと対面する向きに配置されたキッチンです。そのため、「作業効率を大事にしながらも家族とのコミュニケーションも深めたい」という方に向いています。
ただし、料理中の手元が丸見えになる、においや音が気になる、ダイニングへの水はねや油はねが気になるなどの側面があります。
壁付けキッチンとは、シンクやコンロなどの調理スペースが、壁に向かって配置されたキッチンです。そのため、「とにかく料理に集中できるキッチンにしたい」という方におすすめです。また、コンパクトなLDKの場合、キッチンを壁付けにすることでダイニングとの境界がシームレスになり、ダイニングやリビングの広さを確保することができます。狭い部屋で対面キッチンにするよりもLDK空間全体も広く見えます。
左:壁付けキッチン 右:対面キッチン
対面型キッチンと違い、料理中は壁を向いているので家族の様子が分からず、会話の際には手を止めて振り向く必要があります。
ワークトライアングルとは、シンク、コンロ、冷蔵庫のそれぞれを結んだ三角形のことです。料理や後片付けなどの作業をスムーズに進めるなら、この三角形の線の合計の長さを360~600cmにするとよいとされています。成人の歩幅を60~70cmとした場合、それぞれの場所に2~3歩で移動できる距離を目安としています。
<ワークトライアングルのイメージ>
ワークトライアングルを考えるときの注意点は冷蔵庫の位置です。キッチンスペースが広い場合、シンクやコンロと、冷蔵庫との距離が長くなりがちです。冷蔵庫は食材や調味料の出し入れのために頻繁に開けるので、料理を手際よく進めるために設置位置は慎重に決めましょう。
キッチン内に収納する物は、調理器具、食器、買い置きの食材や調味料などがあり、量や種類はご家庭によってさまざまです。まずはしまいたい物の量と種類を大まかに把握したうえで、収納棚の位置を決めましょう。
料理中に使う鍋や包丁などの調理器具、調味料類は、シンクやコンロの下に収納すると料理がはかどり時短につながります。最近のシステムキッチンは、これらをしまいやすく、取り出しやすい工夫がされているため、上手に活用しましょう。
食器や買い置きの食材などは、カップボードなどの収納棚にしまうケースが一般的です。食器をメインに収納する棚なら、料理を盛り付けるときと片付けるときの2回使うので、ワークトライアングルの内側または線上に置くと作業効率がよくなります。買い置きの食材をメインに収納する棚やパントリーなら、ワークトライアングルの近くに配置できると便利でしょう。
調理家電には、炊飯器や電子レンジ、オーブントースターのように常に置いておくタイプと、ハンドミキサーや電気調理鍋など使うときだけ出すタイプがあります。
常に置いておくタイプの調理家電は、料理をスムーズに進められる場所に置くことが基本です。そのうえで考慮したいのが、調理家電を隠すか、見せるかということです。特に、ダイニングやリビングとの仕切りのないオープンキッチンの場合、キッチンの内部が丸見えになります。デザインがおしゃれな調理家電なら見える場所に置くのもよいですが、そうでないなら死角になる場所に置く、隠せるタイプの家電収納棚を用意するなど最適な方法を検討してください。
調理家電を置く場所を決めたら、専用コンセント(※)と通常コンセントの位置と数を決めます。常設タイプの調理家電用はその近くに、使用時に出す家電用は調理台の近くに設けましょう。住み始めてから調理家電を増やす可能性を考え、少し多めに設けておくと"タコ足配線"を防ぎやすくなります。
※冷蔵庫など消費電力の大きい家電製品のために、通常コンセントと回路を分けたコンセント
キッチンは調理中に色々な種類のゴミが出る場所です。自治体のゴミ分別のルールによりますが、キッチン内には複数のゴミ箱を置く場所を確保しておきましょう。
ゴミ箱の位置は、調理中にすぐ捨てられるようにシンクや調理スペースの近くがおすすめです。ただしオープンキッチンの場合、調理家電と同様に、リビング・ダイニングから見えない位置に置くように考慮しましょう。
システムキッチンによりますが、ゴミ箱を収められるワゴン収納が用意されているタイプもあります。調理中は近くに置き、終わったらワゴンごと収納できるので空間をすっきりと保ちやすくなるでしょう。
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作業スペースとは、調理作業をするときに立っているスペースのことです。調理中の移動通路にもなるため、通路スペースと呼ぶこともあります。
作業スペースの幅は100~110cmが目安となり、キッチンを使う人数で決めるとよいでしょう。夫婦や子どもなど2人以上でキッチンを使うことが多いなら、幅にもう少し余裕を持たせることで調理作業をしている人の後ろをスムーズに通ることができます。
主に1人でキッチンを使うなら90~100㎝程度あれば十分です。幅が広すぎない方が後ろを振り返れば背面収納から物が取り出せるなど、あまり動かずに作業できるようになります。
シンクやコンロと一体化しているワークトップ(キッチンの調理台やコンロ台に設置された天板のこと)は、日本工業規格(JIS)により80cm・85cm・90cmに定められています。そのため、一般的なシステムキッチンは80cm~90cmの5cm刻みの展開が多くなっています。ただ、最近では1cm単位でオーダーできるシステムキッチンもあるので、こだわって高さを決めたい方は検討されるのもよいでしょう。
自分に合うキッチンの高さを知る方法として、身長から計算して考える計算式があります。
【計算式】キッチンの高さ=身長(cm)÷2+5cm
この計算式を使うと、例えば身長が160cmなら160÷2+5cm=85cmとなり、高さの目安は85㎝ということが分かります。
ワークトップの高さを決めるときには、シンクやコンロとの兼ね合いにも配慮しましょう。シンクが深めのタイプだと洗い物をするときに低いと感じるかもしれません。またコンロは上に鍋を置いて調理するので、高い鍋を使うと鍋の中が見えにくくなります。理想の高さは、コンロがIHかガスかによっても変わります。ガスの場合は五徳があるため、その点も考慮しましょう。
できればキッチンのショールームに足を運び、洗う・切る・火にかけるなど一連の作業をイメージしたうえで、ワークトップの高さを決めることをおすすめします。
WOOD COORDINATES|MyForest BF(マイフォレストBF)
郡山南展示場(福島県郡山市安積町荒井字南千保8-2 ハウジングパーク郡山南)
キッチンレイアウトを考えるときに、オープンキッチンやクローズド、パントリーの有無などの間取りについても一緒に検討しておきたいものです。ここでは、キッチンの間取りを考えるときのポイントをご紹介します。
キッチンをオープンにするかクローズドにするかは、間取りを計画する上で始めに検討しなければならないことです。
クローズドキッチンとは独立型キッチンとも呼ばれ、壁や建具などで仕切られたキッチンのことです。仕切られているため音やにおい、料理中のちらかりを気にせずに料理ができるキッチンをつくれます。一方、壁などで仕切られるため家族の様子が分かりにくい面があります。また、ダイニングとの距離が生じてしまうと、食事の配膳・下膳が面倒になるかもしれません。
どちらにするかは、キッチンでどのように過ごしたいかで選ぶとよいでしょう。例えば、料理中でも家族の様子を把握したいと思う方はオープンキッチンがおすすめです。料理は集中して行いたい、キッチンをいつもきれいに片付けておくのは大変、と思う方はクローズドをおすすめします。
また写真のように手元が立ち上がっていて、オープンキッチンだけれども手元の雑然さを隠せるようなタイプもありますので、ご自身の希望をしっかり把握しながら選ばれるとよいでしょう。
福津展示場(福岡県福津市日蒔野6丁目6他 マイホーム展福津会場)
パントリーとは、キッチンの周辺に設ける収納スペースのことで、食品庫とも呼ばれます。パントリーには買い置きの食材や調味料、使用頻度の低い食器や調理家電などをしまうケースが多いようです。
パントリーをワークトライアングルのすぐ近くに配置すれば、食器棚や常設の調理家電の置き場所としても活用でき、キッチンレイアウトの幅が広がります。足元には分別ごみのスペースを確保しておくとキッチンのごみ箱スペースを減らすことができます。特にオープンキッチンを希望される場合、パントリーがあればこまごまとしたものを収納できるので、キッチンをすっきりと保ちやすくなります。また、ストック食品を防災用の食品と兼ね古いものから消費しながら買い足していくローリングストックをパントリーに確保すると万が一のときも安心です。
パントリーとは? メリット・デメリットや収納アイデア、設置のポイントを解説
食材を買って帰宅したとき、玄関からキッチンに直行する方は多いでしょう。また、ネットで飲料や食材を購入したとき、届いた物をキッチンまで運ぶのは案外大変です。つまり、玄関からキッチンまでの動線はできるだけシンプルかつ短い方が便利です。
そして、忘れがちなのがゴミを出すときの動線です。テレビの前やリビングを通らないとゴミを出しに外に行けないと、仮にテレビを見ている家族にとっては落ち着かないでしょうし、ニオイが気になるかもしれません。勝手口を設けたり、パントリーを経由して玄関に行けたりするなど、屋外への動線もプランニングの段階で確認しておきましょう。
キッチンのレイアウトには、主に6種類があります。ここでは各タイプの概要とメリット・デメリットを解説します。
I型キッチンは、シンク・コンロ・調理スペースが一列に並んだレイアウトです。
メリットは、作業時は横に移動するだけとシンプルな動きで料理ができることです。コンパクトなキッチンを選んで壁付けにすれば、他のレイアウトと比べてキッチンスペースを抑えられるようになり、ダイニングやリビングを広く取れるようになります。
デメリットは、サイズが大きいキッチンにするとシンクとコンロの距離が離れてしまうため、ワークトライアングルが長くなり作業効率が落ちることです。一方でコンパクトなキッチンを選ぶと、キッチン自体に収納スペースが少なくなるので、持ち物の量に対応する収納棚の確保が必須になります。
2列型キッチンは、シンク・コンロ・冷蔵庫を2列で並行させたレイアウトです。
メリットは、2列あることで調理スペースや収納スペースを広く取りやすいことです。シンクとコンロを別の列に配して対応させれば、ワークトライアングルを短くできるので料理中にキッチン内を歩き回る必要がなくなります。
デメリットは、親子など複数人で料理する場合、動線が重なって動きにくくなるため作業スペースを広く取る必要があります。また、シンクと調理スペースを異なる列に配すると作業動作が多くなり、食材の移動時も水が垂れるなど床の汚れに気を付けなければなりません。
L型キッチンは、シンク・コンロ・冷蔵庫をL字型にレイアウトさせたキッチンです。
メリットは、ワークトライアングルを三角形にできるため、左右に2、3歩移動するだけで料理が進められたり、冷蔵庫から物が取り出せたりすることです。キッチンのサイズにもよりますが、作業スペースが広く取れるため複数人でも快適に料理ができるでしょう。
デメリットは、L字の角のコーナー部分がデッドスペースになりやすいことです。キッチンメーカーによってはコーナー部分を有効活用できる収納パーツを用意しているので、うまく活用しましょう。オンラインサイトでもコーナー用の便利な収納グッズなども販売しているので気になる方はチェックしてみてください。
U型キッチンは、シンク・コンロ・冷蔵庫をU字型にレイアウトさせたキッチンで、コの字型キッチンと呼ばれることもあります。
メリットは、シンク・コンロ・冷蔵庫に囲まれたレイアウトなので、振り返れば料理や物の取り出しができ、作業を効率的に進められることです。また、三方に広い調理スペースが取れるため、料理はもちろん、お菓子やパンづくりなども存分に楽しみやすくなります。
デメリットは、キッチンスペースにある程度の広さが必要なことと、デッドスペースになりやすいコーナー部分が2カ所あることです。また、調理スペースは広いもののカウンターについ物を置いてしまい、すっきりと使いこなせないこともあります。
アイランドキッチンは、シンクかコンロを配したカウンターを島のようにレイアウトしたキッチンです。
メリットは、キッチンを中心とした回遊性のある動線がつくれるため、複数人でも無理なく料理や片付けができるキッチンになることです。開放的でLDとの一体感もあるレイアウトなので、料理中でも家族やゲストとのコミュニケーションが取りやすいでしょう。
デメリットは、キッチンが丸見えになるのでお掃除をこまめにして、常に整理整頓を心がける必要があることです。料理中の音やにおいが広がりやすく、シンクやコンロの位置によっては水はねや油はねへの対策が必要になります。
ペニンシュラキッチンは、カウンターの一部のみ壁に接し、半島のように突き出してレイアウトしたキッチンです。
メリットは、壁に一部分しか接していないため開放感が高いことです。カウンターをダイニングに対面するように配すれば、料理中でも家族の様子が把握しやすく、会話も楽しめます。また、プランを工夫すればカウンターの一部をテーブルのように使うことも可能です。アイランドと比べて、コンパクトなスペースでも設置ができます。
デメリットは、アイランドキッチンと同様にキッチンが丸見えになるので、お掃除や整理整頓、水はねや油はねへの配慮が必要になることです。また、一部分が壁付けされているため、キッチンを回遊することはできません。
伊勢・明和展示場(三重県多気郡明和町中村1178 総合住宅展示場伊勢明和ハウジングセンター内)
ここからは、キッチンレイアウトの特徴を活かした事例を4つ紹介します。動線計画や収納スペースの取り方など、プランニングの参考にしてください。
日立展示場(茨木県日立市大沼町1-6-3 日立ハウジングステーション内)
シンクとコンロをアイランドカウンターに配し、並列する場所に冷蔵庫を置いた事例です。アイランドカウンターをぐるりとまわる回遊動線上からパントリー、洗面室、ダイニングテーブル、リビングスペースへとスムーズに移動しやすくなっています。
アイランドキッチンは収納が少なくなりがちですが、パントリーとキッチン背面にしっかりと収納を確保しています。背面収納は上部をオープン棚にすることで"見せる収納"を楽しめます。
伊勢・明和展示場(三重県多気郡明和町中村1178 総合住宅展示場伊勢明和ハウジングセンター内)
シンクとコンロをペニンシュラ部分のカウンターに配し、冷蔵庫は隣接する壁の内側に配置しています。壁でダイニングやリビングから冷蔵庫が見えないことと、キッチンと背面収納を同じ扉材で仕上げたことで、スタイリッシュで落ち着いた印象を与えています。
キッチンと洗面室、浴室を一直線に配置したことで動線が短縮されるので、家事がスムーズに進められる間取りといえるでしょう。
長久手第二展示場(愛知県長久手市岩作長鶴50 CBCハウジング長久手住まいの公園)
シンクとコンロを二列に配し、両方の間に冷蔵庫を置いた事例です。正三角形に近いワークトライアングルは料理中の移動距離がコンパクトになり、使いやすいキッチンがつくれます。
オープンの対面キッチンの場合、ダイニングテーブルをキッチンにくっつけて配置するレイアウトが多くみられます。その場合はこちらの事例のように、シンクとダイニングテーブルの位置を少しずらしたりするだけで、水はねや調理音がダイレクトにテーブルに届くのを防ぎやすくなります。
各務原展示場(岐阜県各務原市蘇原青雲町3丁目41-1 岐阜ハウジングギャラリー各務原)
壁付けのキッチンにシンクとコンロを配し、コンロと同列に冷蔵庫を置いたL字型の事例です。シンクとコンロの間に広い調理スペースがあるため、複数人で料理をしても動きやすく、互いが邪魔にならないレイアウトです。
また、キッチンと洗面室・浴室を隣接させ、家事動線を短くしています。さらに、洗面室を通れば玄関に行けるので、ゴミ出しや買い物の帰りにリビングやダイニングを通らずにすむのもうれしいポイントです。
ワークトライアングルや収納、動線計画など、いくつかのポイントを押さえれば使い勝手のよいキッチンはつくれます。オープンやクローズドなどの間取りは、他の空間との兼ね合いや、ライフスタイルを考慮して検討するとよいでしょう。
これから家づくりやリフォームを検討する方は、ご紹介したノウハウや事例を参考にしてプランニングを進めてください。
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