建て替えるきっかけは、人によってさまざまです。「家の老朽化が目立ってきた」「キッチンやお風呂が古くて使いづらい」「大きな地震が起きても大丈夫だろうか・・・・・・」、あるいは、実家を受け継いだケースや、お子さまの成長や独立など、家族の生活スタイルと間取りが合わなくなるなどあるでしょう。住み慣れた場所で新しい暮らしを始めるために、建て替えの基本的な流れや期間、新築やリフォームとの違い、気になる費用について解説します。
建て替えを検討する際に、新築やリフォームとの違いが気になる方も多いでしょう。メリット・デメリットの例など解説します。
建て替えとは、現在建っている建物を基礎部分から完全に解体・撤去し、まったく新しい住まいを建築する、「建物の解体撤去+新築」を指します。また、古家付き土地を購入し、古い家を解体し更地にしてから新築する場合も、建て替えに含まれます。
建て替え | 新築 | リフォーム | |
---|---|---|---|
定義 | ●現在の建物を基礎部分から完全に解体・撤去し、新しい家を建てること ※古家付き土地を購入し、古い家を解体し新築する場合も含む |
●更地に新しく家を建てること | ●老朽化した家を、できる限り新築に近い状態に改修すること ※老朽化した設備や内装だけを改修する小規模な工事から、建物の柱や壁など主要な構造部分を残し、間取りを全面的に変更する工事まで幅広くある |
主なメリット | ●今住んでいる家を建て替える場合は土地購入費用がかからない ●法規制・土地条件の制限内で、1から間取りやデザインで設計・プランニングができる |
●法規制・土地条件の制限内で、一から間取りやデザインを考えることができる | ●建て替えや新築と比較してコストや工期を抑えることができる ●リフォームの内容や規模によって住みながらの工事が可能になる |
主なデメリット | ●仮住まいへの引っ越しが必要になる ●建物の解体撤去費用、建物の滅失登記費用、仮住まい費用、引っ越し費用などがかかる ●古家付き土地を購入する場合、土地購入費用と解体費用がかかる |
●土地がない場合は土地の購入費用がかかる ●初めて家を建てる土地は、水道管などの引き込み工事が必要(その分の費用もかかる) |
●リフォームの内容や規模によって仮住まいへの引っ越しが必要になる ●建物の構造や工法によって、間取りの変更や水まわりの位置を変えるなどの設計の自由度が制限される ●リフォームした場所としていない場所の経年変化に違いが出てくる ●築年数によっては耐震性に不安が残る場合がある |
<建て替えのメリット>
・すでに土地を取得している場合は、土地を購入する費用が必要ない
・法規制・土地条件の制限内で、自由度の高い間取りやデザインで設計・プランニングできる
・先進の耐震工事や断熱工事でイチから建築できるので、住宅性能を向上させやすい
・自治体によっては建て替えに関連する助成金が出る場合もある(後述の「建て替えに関わる費用を抑えるコツ」にてご紹介)
・解体して更地になるため、地盤調査や地盤の改良工事ができる
・以前から住んでいる場合は、住み慣れた環境での暮らしやご近所との関係性を維持できる
・水道や電気、ガスなどのインフラ設備をそのまま利用できる場合は、新たな引き込み工事の費用を抑えられる
<建て替えのデメリット>
・建築費に加えて、解体工事費用や建物の滅失登記費用がかかる
・仮住まいが必要となり、そのための賃貸費用、仮住居と新居への2回の引っ越し費用が発生する
・既存の建物が古い建築基準法で建てられている場合、現行の法律に合わせて同じ規模での建築が不可となる可能性がある
・古家付き土地を購入する場合は、建物の解体費に加えて、土地の購入費用もかかる
(ただし、購入時に「更地渡し」という条件がある場合は、解体費用は購入代金に含まれる)
建て替えと新築、リフォームのいずれかを選ぶにしても、一長一短あるようです。実際の家の状態や築年数、予算を考慮して、どちらを選ぶべきなのか。大きな判断となるので、じっくりと考えることが大切です。
一般的に建て替えにかかる期間は約1年~1年半。その基本的な流れを知ることで、完成までのスケジュールが立てやすく、何を検討すべきか整理しやすくなります。
順番 | やること | 期間の目安 |
---|---|---|
1 | 建て替えのタイミングなどの計画を立てる | 約1カ月 |
2 | 候補のハウスメーカーを絞る | 約1カ月 |
3 | 敷地調査の依頼や設計プランの打ち合わせを行う | 約1~3カ月 |
4 | 見積もりを作成してもらう | |
5 | ローンの事前審査(仮審査)を受ける | |
6 | 建築請負契約を結ぶ | 約3~4カ月 |
7 | 依頼するハウスメーカーを決定しプランの詳細を詰める | |
8 | ローンの本審査申し込みをする | |
9 | 仮住まいに引っ越しをする | 1.5カ月※1 |
10 | 解体工事開始 | |
11 | 地盤改良工事(必要な場合のみ) | 約1カ月※2 |
12 | 建て替え工事開始 | 約4.5~5.5カ月※3 |
13 | 引き渡し・登記手続き~引っ越し |
※1解体する建物の大きさなどにより異なります。
※2工事内容により異なります。
※3建築計画により異なります。
家づくりには決めなくてはいけないことが多く、建て替えの計画をしっかり立てることが何より重要です。住み始めたい時期が決まっている場合は、完成までのスケジュールを考えて、各工程の期限を決めておきましょう。
また、家づくりの目的を明確にしましょう。「ライフスタイルに合った間取りにしたい」「不安だった耐震性を見直したい」など、家族で話し合い、それを実現するための要望の優先順位を整理します。これにより、もし予算を上回ってしまった場合に、何を削るべきかが決めやすくなり、スムーズに家づくりを進められます。
予算をいくらにするのか、住宅ローンを利用する場合、今の収入でどれくらい借りることができ、月々の返済はどれくらいになるのか。シミュレーションサイトなどを利用して、おおよその予算を把握しながら資金計画を立てます。この時に、建て替えで適用される補助金や給付金、減税についても調べておきましょう。
さらに、古い家の解体工事の計画や、建て替え中の仮住まいをどうするかなども決めておかねばなりません。
計画するにあたり、知識が必要な部分もあるのでハウスメーカーの担当者に相談しながら進めていくのもおすすめです。
住宅展示場やインターネット、雑誌などから、会社の特徴やデザインを調べ、家族のイメージに合いそうなハウスメーカーを選んでいきます。その際、最初から1社に決めるのではなく、候補の会社を2~3社程度に絞ることで、ハウスメーカーの特徴を知ることができます。
ハウスメーカーを選定したら、実際に問い合わせをして、担当者にプランや資金計画を相談します。事前に決めておいた計画とともに、新しい住まいへの要望や予算などを遠慮なく伝えましょう。その際、同時に検討する複数社に同じ要望や条件を伝え、提案されたプランや見積もりを比較することが最も重要なポイントになります。
敷地調査は相談するハウスメーカー各社に依頼します。敷地調査では法律上の制限やライフライン、採光や風通しといった周辺環境の調査を行います。これは希望するプランが実現可能かを確かめる重要な工程です。また、建物の解体前に建物周辺で地盤調査を行う場合もあります。
おおよそのプランや設備や建材といった仕様が決まると、本体工事費や付帯工事費、諸経費を含めた見積もりを作成してもらいます。
提案されたプランの内容や見積もりをもとに、住宅ローンの事前審査を受けます。住宅ローンを利用することができるのか、借入可能額はいくらか、希望のプランの家を購入できるのか、などがわかります。ハウスメーカー経由で相談することもできます。
事前審査に通り、最終的に提案されたプランの内容や見積もり金額に納得できれば、ハウスメーカーと建築請負契約を結びます。契約を結ぶ前に、着工日や引き渡し日などのスケジュール、最終見積もりの金額、工事金額の支払い、アフターサービスなど、しっかり確認することが重要です。
ハウスメーカー各社のプランやアフターサービス、保証などを比較して、依頼する会社を決定します。新築する住まいの最終的な図面や仕様などのプランの詳細を詰めていきます。この時に、外壁材、屋根材、窓の開閉方法や大きさ、内装材、設備、電気等、詳細な項目についても決めていきます。
建築確認申請に合格した後に、ローンの本審査の申し込みが可能になります。
仮住まいをするために賃貸物件を契約する場合は、立地や家賃などの条件に合う物件が見つかるように、早い段階から情報を集めましょう。
古い家の解体工事がスタートします。
必要な場合はここで地盤改良を実施します。地盤の強度によって実施する改良工事が違い、スケジュールも工事内容によって変動します。
いよいよ新しい家の工事が始まります。基礎工事、上棟、内装工事へと各工程を経て工事が進んでいきます。工事中は施主として定期的に進み具合を確認するようにしましょう。引き渡し前には竣工検査に立ち会います。不具合など問題がなければ、引き渡しへと進みます。
ついに引き渡しです。建物の取扱説明書や保証書を受け取り、残りの工事費用の支払い、不動産登記手続きなど、やらなければならないことがたくさんあります。鍵を受け取り、新しい家への引っ越しを行えば、建て替え完了となります。
建築費用だけでなく、家を建てるにはさまざまな費用が発生します。特に住まいを建て替える場合は、解体費用や仮住まい費用などの費用が発生します。どの工程でそんな費用が発生するのか、事前に把握しておきましょう。
建て替えの工事費用としては、最も金額が大きくなる建築工事費をはじめ、古い家を解体する解体工事費、そのほか、外構工事や植栽工事、引き込み工事などを行う付帯工事費があります。
・建物本体工事費
建物そのものに必要となる費用です。基礎工事、躯体工事といった基礎と構造に関わる工事から、屋根や外装、窓や扉などの工事、設計費などが含まれます。家の広さはもちろん、木造、鉄骨造、RC造などの構造や、使用する建材などによって費用は大きく異なります。
・解体工事
古い家を取り壊して撤去する工事にかかる費用を指します。建物を解体する費用に加え、解体後に出る、木くずやコンクリート片などの廃棄物の処理にかかる費用も含まれます。他には、庭木やブロック塀などを撤去する付帯工事費用も追加費用となります。
・付帯工事
建物以外に必要になる費用を指します。 水道やガス、電気、テレビやインターネット配線などの引き込み工事費用や、照明器具やカーテンなどの取り付け工事費用、エアコンの設置費用、庭や塀などの外構工事などが該当します。敷地調査時に行う測量費や地盤改良工事費用なども含まれます。
●諸費用
上記で紹介した工事以外にかかる費用のことを指します。
・登記費用
既存住宅の解体時に申請する「建物滅失登記」、新築した建物の所在や構造、床面積、所有者の住所や氏名などを申請する「建物表題登記」、新築した建物の所有者を登記する「所有権保存登記」があり、その際に必要となる登録免許税と、申請に伴い司法書士などに支払う報酬なども含まれます。
・各種税金
上記の登記にかかる税金のほか、工事請負契約書に貼る印紙税、家を取得したことでかかる不動産取得税があります。
・住宅ローン関連費用
住宅ローンを利用する場合に、事務手続きの手数料として金融機関に支払う費用となります。
・火災保険料
建物に保険をかけるため、家を建て替えた場合には新たに契約するか、契約内容を変更しなければなりません。変更の場合でも建物の構造などを確認する必要があるので、契約した保険会社や代理店へ連絡しましょう。
・地鎮祭、上棟式の費用
家づくりを始める前に、土地の神様にご加護を賜る神事「地鎮祭」や、棟上げが終わったことを感謝し、工事の無事を祈る儀式「上棟式」は、日本の家づくりの伝統的な風習です。その内容や費用は地域や神社によって異なります。義務ではないため、施主の判断で実施しなくても問題ありません。
・家電や家具の費用
新居に向けて新しく買い替える場合は、その費用も大きくなります。また、これまで使っていた家電や家具などを廃棄する場合は処分する費用も必要になります。不要なものは、リサイクルショップに持ち込んだり、フリマアプリを活用して売ったりするなど、計画的に減らしておきましょう。
・引っ越し・仮住まい費用
建て替えの場合は工事期間中に住むための住居が必要になります。賃貸物件やマンスリーマンションを借りる場合はその家賃や賃貸手数料、仮住まいへの引っ越し費用がかかります。
「解体と新築」の両方が必要な建て替えは、決して費用が安いとはいえません。依頼する際の準備やさまざまな制度や助成金を利用することで、費用を抑えることも可能です。
実施している自治体の数は限られていますが、建て替えに関連する助成金を受けられる場合があります。居住予定の自治体がどのような支援を行っているか、ホームページなどで確認しましょう。
【実施している自治体の例※2024年11月時点】
・耐震補強等助成事業 戸建住宅の建替え工事(埼玉県さいたま市)/ 耐震診断の結果、倒壊する可能性が高い建物の場合に、地震に対して安全な構造となることを目的とした助成金で、1棟で最大60万円の支援があります。
・住宅の耐震改修工事等の助成(東京都練馬区)/昭和56年5月以前に建築された旧耐震住宅の建築物について、耐震改修工事等や建て替え工事を目的とした助成金で、建て替え工事の限度額は225万円です。
・不燃化特区制度(東京都)/木造住宅密集地域に建てられている木造住宅を対象に、専門家の派遣、老朽建築物の除却費用の助成(建て替えをしなくても助成あり)、建て替えに伴う建築設計費や工事費などの助成があります。各区が推進している不燃化の取り組みに対し支援が行われるため、支援制度の内容は区によって異なります。
建物の解体後に必要となる「建物滅失登記」の申請を自分で行うことで、土地家屋調査士へ支払う報酬費用を抑えることも可能です。
まずは引っ越しの繁忙期といわれる3月から4月、9月から10月は、料金が割高になるので可能ならば避けることが無難です。また、工事中の仮住まいをする場合、ハウスメーカーによっては、提携先の紹介などで仮住まいのサポートを行っている会社もあるので相談するとよいでしょう。
ご自身で探す場合は、インターネットで物件を探すだけでなく、地域に密着した地元不動産会社に相談するのもひとつの手段です。大家さんとのつながりも多く、仮住まいの事情を汲んで物件を探してくれるケースもあります。
また、建て替えを機に不要になった家具や家電などを処分すれば、そのぶん荷物が減り、引っ越しの費用を抑えることができます。処分をする際は引っ越し業者に依頼せず、自分で廃棄すると処分費用を抑えられる可能性もあります。手間と費用を考慮して、業者に依頼するか検討するとよいでしょう。
新築を対象に、国や自治体から減税優遇制度を受けられる場合があります。その一例をご紹介します。
【減税優遇制度の例】
名称と概要 | 控除額・割合 | 主な適用要件 |
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住宅ローン控除(減税) 住宅ローンの残高に基づいて、所得税から一定額を最大13年間控除できる制度。控除額は年末借入金残高の0.7%となる。 |
●認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 最大409.5万円(455万円) ●ZEH水準省エネ住宅 最大318.5万円(409.5万円) ●省エネ基準適合住宅 最大273万円(364万円) ※()内の金額は、子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年中に入居した場合の最大控除額 |
●住宅ローンを利用してマイホームの新築、または取得をした人 ●自らが居住するための住宅であること ●住宅ローンの借入期間が10年以上 など ※国土交通省HP住宅ローン減税より |
登録免許税の税率軽減 新築住宅の保存登記にかかる登録免許税が軽減される制度 |
軽減税率は一般新築住宅で0.15%、特定認定長期優良住宅・認定低炭素住宅で0.1% | ●自分が居住するための家屋であること ●住宅の床面積が50㎡以上 ●2027年3月31日までの間に住宅用家屋の新築または取得をし、その新築または取得後1年以内に受ける登記について適用される |
不動産取得税の軽減 新築や土地を取得(売買・贈与)したときに一度だけ課税される地方税が軽減される制度 |
【税率の特例措置】 <税額の算出方法> (住宅の固定資産税評価額 ‐ 控除額)× 税率 = 税額 ●住宅を取得した場合の不動産取得税の税率が3%(本則4%)に軽減される 【課税標準の特例措置】 ●新築住宅の不動産取得税を計算するにあたって、課税標準(建物部分の固定資産税評価額)から1,200万円が控除される ●認定長期優良住宅の場合は課税標準から1,300万円が控除される |
●課税床面積が50m²以上240m²以下の自己の居住用住宅であること など |
固定資産税の軽減 新築住宅の固定資産税が一定の期間で減額される制度 |
●一般住宅の場合は3年間、認定長期優良住宅の場合は5年間、固定資産税が2分の1に減額される | ●居住用部分の床面積が50m²以上280m²以下で、住宅として使用する部分が全体の1/2以上であること |
※2024年11月時点の情報
※最新情報・詳細情報は管轄する省庁のホームページなどをご確認ください
子育てエコホーム支援事業といった新築住宅の取得を対象とした補助金については、2024年11月30日に2024年度の申請は終了しております。
例えば、お子さまが独立した後、使わなくなる子ども部屋はどうするのか。イメージする間取りや動線は、年を取ってから身体に負担はかからないか、相続する予定があるのかなど今だけでなく、何十年先のライフスタイルに合った家づくりを考えることが大切です。
もちろんお金のことも大事です。お子さまの進学やご自身の仕事の状況など、家族のライフプランを予測して、しっかりと計画を立てる必要があります。せっかく新しい家を建てたのに、月々のローンで生活を圧迫するようなら本末転倒です。
建て替えも資金計画も、家づくりのプロに相談すれば、的確なアドバイスで提案してくれるはずです。将来を見据えた家づくりを目指しましょう。