●わたしらしさを楽しむ家づくり
2020/08/07 公開
暮らしのゆとりは、心のゆとりから。十五夜のお月見や重陽の節句、秋のお彼岸など秋の季節行事をご紹介します。 ※ご紹介する内容には諸説ありますので、あらかじめご了承ください。
夜空を見上げ、満月を愛でる十五夜。古来中国では、旧暦の秋の真ん中にあたる「中秋」に、中秋節という祭りを行っていました。
それが日本に伝わったのは平安時代のこと。当初は貴族たちの遊びでしたが、江戸時代になると庶民の間でも広がり、ちょうど収穫の時期ということもあって秋の実りに感謝を捧げる行事として暮らしに定着しました。かつては収穫された里芋などを供えていたことから、「芋名月」とも呼ばれていました。
やがて里芋ではなく白く丸い「月見団子」を供えるようになり、それが現代に続いています。
団子と一緒に飾るススキには、米の収穫を祈願する意味があります。十五夜の時期にはまだ稲穂は実っていないため、形が似ているススキを飾るようになったのです。
また、ススキは古くから神様の「依代(よりしろ)」だと考えられていました。月見に飾ったススキを庭や田んぼに立てたり軒先に吊るしたりすると、魔除けになるとも言われています。
旧暦8月15日の「十五夜」に対し、旧暦9月13日の月は「十三夜」。季語では「後の月」「名残の月」とも言い、日本では古くから日に月見が行われていました。
これは中国由来ではなく日本古来の風習で、十三夜が満月になることはありません。なぜ満月ではない月を愛でたのかという理由には諸説ありますが、完璧な形よりも少し欠けたものを愛する日本人の美意識に合っていたのかもしれません。
十五夜の芋名月に対し、こちらは「栗名月」「豆名月」とも呼ばれます。
中国では奇数が縁起の良い「陽」の数字とされ、1・3・5・7・9が重なる日を「五節句」として祭礼を行う慣習がありました。中でも最も大きい陽の数が重なる9月9日は「重陽」として盛大に祝い、不老長寿を祈願していたそうです。日本には天武天皇の時代に伝わったと言われています。
重陽の節句は、「菊の節句」とも言われます。ちょうどこの季節に満開を迎える菊は抗菌作用があるため薬草としても用いられており、延命長寿の薬効があると信じられてきました。
中国には、菊が群生する地域から流れた水を飲んだ村人が長寿になったという「菊水伝説」や、罪を犯した少年が流された先で菊の露を飲んで不老不死になったという「菊慈童」の逸話などが残っています。
また平安時代の日本には、9月8日に菊の花の上に真綿をかぶせ、9日の朝に菊の露で濡れた綿で肌をなでると若さを保つことができるという「菊綿」という風習があったそうです。
重陽の節句の行事食は、栗ご飯と菊花酒です。ちょうど栗の収穫時期と重なるため、庶民の間では「栗の節句」とも呼ばれていました。また、蒸した菊の花びらを酒に入れ、香りを移して飲む菊花酒は、飲むと病気にならないと言われています。
さらに、「お九日(くんち)にナスを食べると中風(ちゅうぶ:脳出血などが原因の麻痺)にならない」という言い伝えもあり、ナス料理を食べて不老長寿や無病息災を祈る地域もあります。
春と秋、1年に2度やってくる昼と夜の長さがほぼ同じになる日を「春分」「秋分」と言います。仏教では「あの世(彼岸)」と最も近づく日とされていることから、それぞれ「春彼岸」「秋彼岸」とも呼ばれ、季節の節目を表す「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉もあります。
「春分」についてはこちらの記事でもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
四季を楽しむ暮らし ~春の歳時記~
春と秋の彼岸行事に大きな違いはありませんが、お供え物のお菓子を季節の花にちなみ、春は「ぼたもち(牡丹)」、秋は「おはぎ(萩)」と呼び分けています。
また春の彼岸は種まきの時期なので収穫を祈り、秋の彼岸は実りへの感謝を捧げていました。
墓地でよく見かける「ヒガンバナ(彼岸花)」は、秋彼岸の時期に満開を迎えます。サンスクリット語で「天界に咲く花」を意味する言葉である「曼珠沙華」とも呼ばれています。
一方、ヒガンバナには毒があるため「死人花」「幽霊花」などの別名もあり、不吉な花だと考えられてきました。そんな不吉な花が墓地に多く咲いているのは、土葬の時代にヒガンバナの毒で小ネズミやモグラなどの小動物からお墓を守ってもらうためだったと言われています。
日本人は古くから、四季折々、さまざまな形で感謝や祈りを捧げてきました。
だからこそ、何気なく過ごしている日々の中に、季節の移ろいを感じられる数々の行事があります。それぞれの意味を知っていると、また新しい気持ちで秋の一日を楽しめるかもしれませんよ。
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