下の2つの日本地図で高断熱住宅の普及率の高いエリアと、冬季（12～3月）の死亡増加率の低いエリアがほぼ重なっています。寒い地域ほど高断熱住宅が普及しており、冬季の死亡リスクが低いと言われています。また、脱衣所の平均室温が12.4℃の寒冷住宅に住む人に比べ、平均室温が14.6℃の温暖住宅に住む人の健康寿命^※1が4歳のびているという調査結果^※2もあります。暖かい家には、ヒートショックや起床時の血圧上昇を抑える効果などの予防・軽減効果が確認されているためです。

※1 介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間　 ※2 出典：伊香賀俊治研究室の資料より

ヒートショックを防ぐ

ヒートショックとは、急激な温度変化で血圧が変動して失神、不整脈などを引き起こすこと。とくに冬季の脱衣場や浴室は、室温が低く危険と言われ、1年間で約1万7,000人^※3がヒートショックが原因で入浴中に急死したと推計されています。高断熱住宅なら温度差の少ない環境をつくることができ、ヒートショックの低減につながります。

※3 出典：東京都健康長寿医療センター研究所高橋龍太郎氏の資料より

高血圧のリスクを軽減

高血圧や動脈硬化などの原因とされる糖尿病も、断熱性の低い家に住む人がかかる割合が高くなると言われています。床上1mの室温が16℃以上の暖かい家に住む人に比べ、床付近の室温が低い家に住む人は、高血圧が1.51倍、糖尿病が1.64倍、通院している割合が高かったという調査報告もあります。

＊出典：住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第3回中間報告会講演資料
（一般社団法人日本サステナブル建築協会）

断熱住宅は、ほかにもさまざまな健康改善が期待できます。 空気の冷たさから起こる喉の痛みや咳、着衣による皮膚のストレス、手足の冷え、アレルギー性鼻炎や結膜炎など。平成4年制定の新省エネ基準レベルの住宅から平成25年制定の基準相当の住宅に移ると、健康改善率が3倍ほど向上したというデータもあります。 また、肩こりや腰痛の症状が和らいだという調査結果も出ています。

質の高い睡眠は健康の源です。そこでカギとなるのが寝室の環境。
室温24℃以上なら寝つき、睡眠の質が向上すると言われ、断熱性を高めて快適な室温を保つことが効果的です。
また就寝前の寝室が暖かい家では、過活動膀胱症状が抑制され、夜中にトイレに行く回数が減ると言われています。

多くの女性が悩んでいると言われる冷え性。
高断熱住宅であれば抜本的な改善が期待できます。高断熱の家によって日常的な手足の冷えが改善したという話もあります。

医療費は年間約2万7,000円の節約に

高断熱住宅に暮らせば疾病や体調不良のリスク低減につながる、ということは、結果的に病気にかかる機会が減り、医療費を軽減できる可能性も。これを金額換算してみると、見込まれる「疾病予防便益」は年間で約2万7,000円になることがわかります。

介護費は約320万円の差が生じることも

寒い住宅と暖かい住宅に住む居住者では、要介護者となる年齢に約4歳の差があると言われています。一般的に要介護者のいる世帯にかかる費用は年間80万円であり、高断熱住宅が健康寿命を約4歳のばすことを考えると、約320万円の介護費用をカットできる試算になります。