テキサス州進出後、M&Aは加速する。2016年、東海岸・メリーランド州の大手住宅メーカー、DRB Groupを、翌2017年はユタ州、ソルトレークシティにあるEdge Homes Groupをそれぞれ子会社化した。この新規エリア進出は、地理的な戦略に則っとったものだ。進出するのに相応しいエリアは、テキサス州がそうであったように、雇用が拡大し人口も増大、旺盛な住宅需要があるエリアだ。住友林業がそのターゲットとしたのが「サンベルト」である。サンベルトとは、西海岸のカルフォルニア州南部から東海岸のノースカロライナ州に至る、北緯37度より南の、サウスカロライナ、ジョージア、フロリダ、テネシー、アリゾナ、コロラドなどの州が含まれる温暖なエリアを指す。先端技術産業の集積地が多いことでも知られる。2018年には、新たな事業への挑戦も開始した。米国市場進出以来、戸建分譲住宅を提供してきたが、集合住宅や商業複合施設の開発を手掛ける総合不動産会社、Crescent Communities Groupを子会社化した。米国では、戸建住宅は景気循環の影響を受けやすいとされている。その備えとして他の業態を事業ポートフォリオに組み入れ、安定化させるという戦略だ。また、同年、東海岸で分譲住宅向けの土地を開発するMarkⅢ Properties, LLCの株式も60%取得。現在、分譲住宅事業で5社、集合・商業複合開発事業で1社、宅地開発事業で1社、他にキャビネット製造販売会社1社を傘下に収めている。ちなみにキャビネット製造販売会社Canyon Creek Cabinet Companyの買収も米国での新たなチャレンジの一つである。では、こうした買収先にはどのようにアプローチしているのだろうか。
「私たちの調査からパートナーとして相応しいと思われる企業にアプローチする場合もあれば、先方からM&Aの話を持ち掛けられる場合もあります。ただそれ以上に、人脈で仕事をしてきたという実感があります。多くの人との出会い、そしてそこからの信頼関係づくりが、住友林業のM&Aのベースにあります。」(岩崎)
こうしたM&Aをテコに、住友林業は2019年、全米トップビルダー・ベスト10相当の住宅を供給するまでに成長を遂げた。