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Project story #02



INTRODUCTION
地球環境に多大なインパクトをもたらす、CO2をはじめとした温室効果ガスの削減は、以前から世界的な喫緊の課題と指摘されてきた。CO2削減に向けた様々な取り組みが世界中で進められているなか、大きな効果をもたらすものとして期待されているのが、石油や天然ガスなどの化石燃料に代わる、太陽光や風力を用いた再生可能エネルギーの普及拡大である。この再生可能エネルギーの一つが「バイオマス発電」。「バイオマス」とは、動植物等の生物からつくり出される有機性のエネルギー資源で、一般に化石燃料を除くものを総称している。住友林業は、2011年より、CO2削減による地球環境保護への寄与、また林業振興の観点から、林地未利用木材を燃料用木質チップとして利用する「木質バイオマス発電」事業に取り組んできた。ここでは、国内2つ目となる、北海道・紋別バイオマス発電事業を中心に、住友林業の取り組みを紹介する。

資源環境事業本部
環境・エネルギー部長
高田 晴郎 Seiro Takada
1989年入社 経済学部卒

入社後、業務実習を経て管理部配属。その後、情報システム室、経営企画部を経て、2001年、スミリンツーバイフォー(株)に出向。2010年、木材建材事業本部事業開発部に異動し、国内初めての木質バイオマス発電事業に携わる。2013年には、山林環境本部山林・環境部に異動し、国内2度目となる、北海道・紋別バイオマス発電の事業企画立案を担当。2016年、紋別バイオマス発電(株)に代表取締役社長として着任。2020年4月より現職。

STORY -- 1



木質バイオマス発電が、CO2削減に有効であることを理解するには、「カーボンニュートラル」という考え方を知る必要がある。木質チップを燃料として燃やすと当然CO2が発生する。しかし、元々そのCO2は「木」が成長する過程で大気中から吸収したものであり、トータルとしてCO2の量は変化しないという考え方だ。化石燃料も古代の植物や動物が変化したものだが、これは太古の昔に吸収されたCO2であり、それを現代の大気に放出することはCO2を増やしていることになる。木質バイオマスは「現在の大気中のCO2を吸収し、現在の大気に放出される」のでCO2の増加に実質的につながらないクリーンエネルギーということになる。この「カーボンニュートラル」の考え方に基づき、住友林業は「木質バイオマス発電」事業に着手した。最初に手掛けた場所は首都圏・川崎。首都圏近郊で発生する建築廃材や廃パレットなどから生産されるリサイクル木質チップ、剪定枝などを利用。建築廃材を主燃料とするバイオマス発電としては、当時国内最大規模(発電規模33MW)だった。
それと時を同じくして、住友林業は北海道・オホーツク海沿岸の森林資源調査を進めていた。そのメンバーの一人だったのが、現在、資源環境事業本部の環境・エネルギー部長・高田である。「オホーツク海に面する紋別には当社の社有林があり、1917年からこの地で森林事業を行ってきました。森林事業というのは植林から始まり、木を育てる育林、そして伐採して活用し、また植林するというサイクルで行われます。育林で重要なのは間伐。過密になった森林を適切な生育状況にするために間引く作業ですが、森林に放置された間伐材の賦存量、利用可能性を把握することが、調査の目的の一つでした。その結果、膨大な量の間伐材(森林資源)があるものの、消費地から距離があるため、その利用可能性は乏しいことが判明。そうした中、自分たちで森林資源を利活用する方法として、紋別での木質バイオマス発電事業はスタートしたのです。」(高田)

STORY -- 2


一般的に発電所建設の条件として燃料、系統、水の確保がある。
紋別でのバイオマス発電について、「燃料」は、主に林地未利用の木材である間伐材を使用。発電から変電、送電、配電などの設備を指す言葉である「系統」も適切な手続きを経て確保。「水」に関しても地元自治体から供給される水を利用することができた。ちなみに、なぜ「水」が必要なのかと言うとバイオマス発電は、燃料となるチップを燃やして高温高圧の蒸気をつくり、蒸気の力で発電機につながったタービンを回して発電する。高温高圧の蒸気を液体に戻す、その差圧で効率的にタービンを回すため、液体に戻すための冷却水が必要なのである。そして最も重要であったのが、地域住民の方々からの理解だ。
「当然ながら、木質バイオマス発電事業を行うことに対して、地元の方々の理解・納得を得ることは最優先事項でした。住民説明会を開催しましたが、当初、発電所が町に建設されることに不安を抱く住民の方が少なくなかったのは事実です。たとえば、森林資源を活用することで山が丸裸になるのではないか、海への温排水によって海産資源に影響が出るのではないか、あるいは燃料運搬の多数のトラックの往来で安全が保たれないのではないか等々、不安の声に対してそれらを払拭する丁寧な説明を心掛けました。その結果、元々地域との関係性が深かったこともあり、行政、地域の林産業、市民の方々から、木質バイオマス事業に対する理解と協力を得ることができました。それが、事業推進の大きな力となったと思います。」(高田)
紋別を含む森林資源の豊かなオホーツクの地は、「計画的に間伐・伐採・再植林を行う」森林経営計画を持った「認証林」が最も多いエリアである。地元の協力を得られたことで、地域の森林事業を発電事業に活かし、その収益を森林に還元するサステナブルで循環型の「紋別モデル」ともいうべき、新たな取り組みは加速していった。

STORY -- 3




紋別バイオマス発電所は、2014年11月に基礎工事着工、2016年11月に竣工し、翌12月に稼働を開始した(※注1)。発電規模は50MW、年間販売電力量は約3.2億kWhで一般家庭用の約10万世帯分の年間消費量に相当する。燃料は木質チップを中心に、一部燃焼効率を高める補助燃料として、PKS(ヤシの実の種の殻)や石炭を使用している。ここで注目すべきは木質チップだ。「木質バイオマス発電」の燃料である林地未利用材(間伐材等)は、そのまま燃やすわけではない。燃焼効率を高めるために、燃料となる木材は細かく粉砕してチップ化してから使用する。チップ製造の原料は「森林経営計画」に基づいて伐採された燃料用原木もあるが、森林に放置されている間伐材などの林地未利用木材も利用される。間伐材のみならず、端材、根本付近や先端部など製材に適さない木材もチップ製造の原料となる。深い森林から、これら未利用木材をいかに効率的に運び出すか。高田らが最も腐心した課題の一つだった。
「木質チップ製造の燃料である未利用木材は、今まで利用してこなかった資源であり、それを有効活用するということは山の仕事自体が変わるということです。植林、間伐、伐採に加え、今までやってこなかった未利用材の集荷という作業が加わることになりました。もちろん伐採後の集荷はありますが、未利用木材の多くは形状が一定でないため、集荷に手間がかかり、トラック積載効率も悪いなど、地元の林産業に従事している人にとっても、今までにない山の仕事だったのです。集荷の新しい仕組み作りを進めましたが、山から近いところに中間集積所を設置たり、伐採後の再植林のための地拵え作業時に端材を出材したり、様々な工夫を凝らしたことで効率的な集荷・生産体制が実現し、より多くの未利用木材を木質バイオマスチップの燃料として活用することが可能となりました。」(高田)
紋別バイオマス発電事業は、森林資源の有効活用によって森林事業とエネルギー事業が結びつき、両事業の発展を目指すものだが、CO2削減や林業振興に役立つだけでなく、地元雇用の創出など、地域活性化に寄与するものだ。地域に根差した発電所であることも、紋別バイオマス事業の大きな特徴の一つである。

(※注1)紋別バイオマス発電事業は、住友共同電力(株)との共同出資。川崎バイオマス発電事業は、住友共同電力(株)に加え、フルハシEPO(株)との共同出資。

STORY -- 4

300MW

紋別バイオマス発電所稼働後、2017年4月には苫小牧バイオマス発電所(発電規模6.2MW)が稼働した (※注2)。紋別同様に北海道の林地未利用木材を燃料として利用。2018年4月には八戸バイオマス発電所(発電規模12.4MW)が稼働(※注3)、青森県内の林地未利用木材に加え、製材端材などをチップ化し燃料として利用している。そして現在、建設が進められているのが、福岡県の苅田バイオマス発電所だ(※注4)。発電規模は74.9MWで過去最大規模になる。2021年6月稼働の予定だが、稼働すれば発電規模は合計で約177MWとなり、これは約37万4000世帯分の年間使用電力を供給することになる。住友林業が目指すのは、木質バイオマス発電事業を中心に、発電規模300MW体制を構築することである。木質バイオマス事業以外では、茨城県鹿嶋市に発電規模3.4kWの太陽光発電施設を有しており、ソーラーパネルの架台には国産スギ材などの木製架台を使用し、ここでも森林資源の有効活用に取り組んでいる。今後、木質バイオマス事業を核とした再生可能エネルギーの取り組みは、どのようなビジョンを描いているのか。
「紋別では、森林の付加価値向上を目指すことが、発電事業につながりました。発電事業の歴史はまだ浅いものの、長年森林に関わってきた住友林業だからこそ実現したビジネスモデルだと思います。今後、地域の資源を活用したエネルギーの地産地消、地域のニーズに応じたコンパクトな発電事業も必要だと考えており、新たな再生可能エネルギーのモデル創出を検討していきたいと思っています。」(高田)
住友林業は2020年3月、再生可能エネルギー100%化を目指す国際的イニシアティブ「RE100」に加盟した。2040年までに自社グループの事業活動で使用する電力と電力事業における発電燃料を100%再生可能エネルギーにすることを目指すものだ。その住友林業の取り組み、そして「木質バイオマス発電」事業そのものが、社会貢献に直結している。

※注2…苫小牧発電事業は三井物産(株)、(株)イワクラ、北海道ガス(株)との共同出資。
※注3…八戸バイオマス発電所は住友大阪セメント(株)、東日本旅客鉄道(株)との共同出資。
※注4…苅田バイオマス発電事業は(株)レノバ、ヴェオリア・ジャパン(株)、九電みらいエナジー(株)、三原グループとの共同出資。