木質バイオマス発電が、CO2削減に有効であることを理解するには、「カーボンニュートラル」という考え方を知る必要がある。木質チップを燃料として燃やすと当然CO2が発生する。しかし、元々そのCO2は「木」が成長する過程で大気中から吸収したものであり、トータルとしてCO2の量は変化しないという考え方だ。化石燃料も古代の植物や動物が変化したものだが、これは太古の昔に吸収されたCO2であり、それを現代の大気に放出することはCO2を増やしていることになる。木質バイオマスは「現在の大気中のCO2を吸収し、現在の大気に放出される」のでCO2の増加に実質的につながらないクリーンエネルギーということになる。この「カーボンニュートラル」の考え方に基づき、住友林業は「木質バイオマス発電」事業に着手した。最初に手掛けた場所は首都圏・川崎。首都圏近郊で発生する建築廃材や廃パレットなどから生産されるリサイクル木質チップ、剪定枝などを利用。建築廃材を主燃料とするバイオマス発電としては、当時国内最大規模(発電規模33MW)だった。
それと時を同じくして、住友林業は北海道・オホーツク海沿岸の森林資源調査を進めていた。そのメンバーの一人だったのが、現在、資源環境事業本部の環境・エネルギー部長・高田である。「オホーツク海に面する紋別には当社の社有林があり、1917年からこの地で森林事業を行ってきました。森林事業というのは植林から始まり、木を育てる育林、そして伐採して活用し、また植林するというサイクルで行われます。育林で重要なのは間伐。過密になった森林を適切な生育状況にするために間引く作業ですが、森林に放置された間伐材の賦存量、利用可能性を把握することが、調査の目的の一つでした。その結果、膨大な量の間伐材(森林資源)があるものの、消費地から距離があるため、その利用可能性は乏しいことが判明。そうした中、自分たちで森林資源を利活用する方法として、紋別での木質バイオマス発電事業はスタートしたのです。」(高田)