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Project story03

地方創生は
モノだけでなく、
心も豊かに。

Project Name
地方創生・VISONプロジェクト
Project Vision
生活サービス本部による
ホスピタリティとウエルネスへの挑戦
Outline
2021年、三重県多気町に開業した複合商業施設「VISON」―。住友林業にとって初のホテル経営に参入したプロジェクト。人々に非日常の豊かな体験を提供するサービスを通じて地域活性化に貢献しています。
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常務執行役員
生活サービス本部長
田中 耕治 Koji Tanaka
1984年入社 経済学部卒

新卒入社で木材建材事業部の営業職からスタート、その後インドネシア、ニュージーランドに駐在する。2011年にはコーポレート・コミュニケーション室長として、住友林業グループ広報・IR、ブランディング、CSRを担当し、現在のコーポレートスローガン「木と生きる幸福。」などCIプロジェクトを推進。2014年からは木材建材事業本部木材建材部長、その後、木材建材事業本部東京営業部長、理事、常務執行役員 木材建材事業本部長を歴任し、2024年より現職に至る。

STORY -- 1


使

三重県多気町──三重県のほぼ中央に位置するこの町は、古来より伊勢本街道、和歌山別街道、熊野街道が通過する交通の要地として発展。県内の海産物や農産物の集積地でもあった。しかし20世紀後半から、他の多くの地方自治体同様に人口減少、高齢化が進んでいる。この状況が継続すると、地域集落の維持や地域資源の保全ができず、限界集落を作り上げてしまう恐れもある。多気町は、こうした課題を解決し、地域の活性化を促すため、多角的な検討を進めた結果着手したのが、商業複合施設「VISON」プロジェクトである。三重県や多気町といった行政と住友林業グループを含む複数の民間企業、三重大学などの教育機関が協力して推進する「産官学」一体の地域活性化事業だ。
住友林業グループが「VISON」への参加を打診されたのは、2017年。それは、「VISON」の中核施設となるホテルの開発・運営事業への参加要請だった。住友林業グループにはそれまで、ホテル開発・運営に関するノウハウ・知見の集積はなかった。しかし、地域経済の発展・雇用の創出を通じて、地方創生に貢献する活動を推進し、地域社会との協働で植林によるカーボン・オフセットを実施するなど、地域活性化支援を社会的使命ととらえて積極的に取り組んできた。今回も、そうした取り組みの延長線上にあると判断し、プロジェクトの参加を決めた。
同年8月には、具体的な建物の基本計画が始動し、翌2018年、住友林業グループはホテル開発・運営事業への正式参画を表明、生活サービス本部が本プロジェクトの担当となった。生活サービス本部は全国32ヶ所の介護事業所運営や、保険事業などを営むグループ会社を統括する事業部だ。社会課題の解決や多様なライフスタイル・価値観に寄り添う事業を通し、高い公益的価値を生み出すことをミッションとしている。
ホテルは人が滞在する場所であり、住宅との親和性は高く、既存の事業リソースを活かせる分野だ。地域活性化に貢献するという大きな目的に加え、ビジネス的側面を見れば、住友林業グループにとっても、BtoCとしてお客様と長く接点を持って継続的かつ安定的に収益を確保できるストックビジネスという、新たな挑戦でもある。その使命は、ホテル業など全く未経験のメンバーによって立ち上げられたプロジェクトチームに託され、「VISONプロジェクト」はスタートした。

STORY -- 2




宿

商業複合施設「VISON」の全体像を示しておきたい。ちなみに「VISON」という名前の由来は「美しい(VI)村(SON)」=美村。東京ドーム24個分にあたる約119haの広大な敷地の中にある。宿泊施設のほか、温浴施設、産直市場、レストラン、ショップ、オーガニック農場など70以上の店舗や施設が軒を連ね、豊かな山海の幸に恵まれた三重の「癒・食・知」を体験できる。中でも注目したいのが、住友林業が建物の基本設計を担当した、三重県産の山海の美食が一堂に集結する国内最大規模の産直市場「マルシェ ヴィソン」だ。緩やかなカーブを描くダイナミックな屋根と連続する大断面木構造が特徴であり、一度見たら忘れられないインパクトがある。
そしてこのVISONの中核となるのが、「ホテルエリア」だ。「野に遊び、野に学べ」をコンセプトにした三つの宿泊施設で、山の傾斜を活かしてデザインされた景観が美しく、「ホテル」棟は5タイプ155室、1棟独立型の「ヴィラ」が6棟、1棟ごとに異なるデザイナーが演出をした4棟40室からなる「旅籠ヴィソン」で構成されている。いずれも木の温もりを感じる内装、自然と調和した心地良い空間で、静寂の中の神秘的な朝靄、遠くから響き渡る鹿の鳴き声、夜は満天の星空など、天然の観光資源が一層の癒しをもたらしてくれる。
この中で、住友林業グループはヴィラ棟の基本設計を担当した。「離れ」をイメージしたヴィラは各棟に多気の自然を一望する露天風呂と外居間が設けられており、シンプル・モダンでハイエンド、ラグジュアリーな滞在を楽しめる。ポイントは三重県産木材をはじめ約7割は国産木材を使用していることだ。三重県は地元の森林を守り育てるために、県産材の利用拡大に取り組んでいる。今回、宿泊施設での県産材の使用に対しては、「三重県木づかい宣言」登録書が授与された。またホテル棟は、客室に室内と同じ広さのテラスを設けているが、テラスとホテル廻りの植栽も住友林業グループが担った。テラス植栽では隣接した部屋で同じ植栽が並ばないようにレイアウトしたことで躍動感溢れる外観を演出している。さらに、客室カードキーの木質化、各宿泊施設への木質造作家具及び木質内装建材、インテリア全般の提案・納入なども担当しており、住友林業グループの調達ネットワークや建築ノウハウが活かされている。「木」にこだわる住友林業らしさが反映された施設となった。

STORY -- 3

HOTEL VISON

VISONは本来2020年にオープンする予定が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大幅な予定変更を余儀なくされた。2021年4月の「マルシェ ヴィソン」を皮切りに、3期に分けて順次オープン。最後のオープンが「HOTEL VISON(3施設全体の呼称)」で同年7月だった。運営は、住友林業(株)、旅行大手のH.I.S.
グループのH.I.S.ホテルホールディングス(株)、地元三重県で複合温泉リゾート施設を運営する(株)アクアイグニスの3社が出資するヴィソンホテルマネジメント(株)が担っている。
現在では宿泊客一人ひとりの目的や背景に合わせたおもてなしが最大の武器となり、サービス品質の評価は高い。そこは意外にも、住友林業のDNAの為せる技だったという意見がある。

「住友林業グループは多彩な事業を展開しており、働く人財にも非常に多様性があります。いろんな考え方を持つ人たちと一緒に合意形成して働くための対応力、柔軟性、誠実さなど、基本的な社会人のポータブルスキルを育む中で、最も重視されるのが「先を読む力」です。ルールで縛らず、臨機応変に相手のニーズを読み取り、2、3歩先回りをして行動することを繰り返し、相手に合わせて察する力、思いやる力、主体的にホスピタリティを体現する力が自然と染み付いています。」(田中)

現場で運営管理していたプロジェクトメンバーも「立ち上げ時は苦労したものの、住友林業のDNAは間違いなく、サービス業に向いている」というほど、矛盾なく、ホテル業界は活躍できるフィールドだった。

「それが人財面での住友林業らしさであり、自然に培われていくDNAだと思います。自分たちが、これまでも普通にやってきたことであったはずです。」(田中)

それでも更なるサービス品質の向上、ブランティング、集客・収益力の向上と課題はあるものの、大手のホテル・旅館ポータルサイトの口コミ評価は上昇中。住友林業グループ独自の集客力で言えば、住宅事業のオーナー様、リフォーム事業のオーナー様など、別事業部のオーナー様向けに割引キャンペーンの実施、契約特典として宿泊券を贈呈するなど、送客に一役買っている。住友林業グループのオーナー顧客をリピーターに取り込んでいく戦略、そのわかりやすいターゲッティングから段階的に進めていることも奏功している。現在、すでにハイクラスなカテゴリへのランクアップを図るため、ロビーや客室のリニューアル、ヴィラでは人気の高いペット同伴客室を倍増するなど、市場ニーズを的確に捉えた新たな付加価値を高める投資も積極的に行われている。

「戸建て住宅事業のオーナー様をはじめ、他事業本部のお客様・お取引先様に多数ご宿泊いただいています。住友林業ではこれまで、お客様への接点が単発に終わってしまうことが多かったわけですが、宿泊事業は気軽に非日常を味わっていただく事ができるため、リピーターになっていただく方も多数います。当本部の介護事業とあわせて、住友林業として生涯にわたりお客様と接点を持つ、良い機会になっています。」(田中)

STORY -- 4

VISON


開業3年目にもなると、オープン景気は一巡し、近隣最大の観光地でもある伊勢神宮との集客が正比例しているという実態も見えてきた。今後より一層、行政や地域を巻き込んだ観光PRなど、VISONの集客・収益の最大化に取り組む必要がある。
2022年に内閣の地方創生推進事業であるデジタル田園都市国家構想に「三重広域モデル」が採択され、多気町、大台町、明和町、度会町、紀北町が連携してデジタル技術を活用した地方創生を目指すプロジェクトがスタートした。VISONを核に、地域内の経済循環を促進させるデジタル地域通貨「美村PAY」をはじめ、仮想自治体DXプラットフォーム「美村」、敷地内を巡回する自動運転EV「MiCa」の導入など、デジタル領域に強い民間企業も参画して、地域課題の解決に向けたさまざまな取り組みが行われている。
VISONを訪れるお客様はホテルの宿泊だけに限らず、さまざまな施設が複合した村全体で楽しい思い出をつくることが最大の目的であり、それが運営側の目標でもある。民間企業も30社以上が関わり、協業連携することや、行政を巻き込み実験的なサービス運用に取り組むなど、様々な可能性を生み出すチャンスがある。それが目下、住友林業グループにおける「VISONプロジェクト」の次のテーマでもある。

「生活サービス本部のやっていることが住友林業のブランド価値を上げ、住友林業のブランド価値が上がれば、他事業本部にも効果が及びます。我々は現在、そんな双方向のシナジーを生んでいく重要なミッションを担っています。地方創生をテーマに、高齢化社会への対応とインバウンドの取り込み等をさらに追及し、新しい事業を立ち上げていく所存です。」(田中)

VISONでは地方の持つ魅力を引き出し、文化・歴史、そして木と結びつくような複合的な施策により、雇用創出・移住やUIターンなど地方創生を実現する、多くの価値創出にも可能性は広がっていく。生活サービス本部は今後、VISONによる地方創生事業の知見をもとに、日本政府が成長産業として掲げる「観光分野」での事業拡大を積極推進していく考えだ。

「消費者の価値も大きく変容し、『物質的な豊かさ』から『心の豊かさ』を重視する傾向にあります。当社長期ビジョンにおいても『人と社会への価値』の提供を掲げる中で、住友林業グループらしい非日常体験の提供を通じて、お客様の感動を生む高品質のサービスとホスピタリティを提供し続けていきたいと考えています。」(田中)