国内の戸建住宅マーケットが人口減少の影響を受ける中で、住友林業は成長の活路を海外市場にも見出しているが、国内で注力している分野が「非住宅」市場である。「非住宅」とは、その名が示すように、庁舎などの公共建築物、店舗、オフィス、福祉施設、保育所等々、住宅以外の建築物であり、それらの木質化・木造化を推進する取り組みを加速させている。それを後押ししたのが、2010年に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」だった。日本では、戦後、造林された人工林が資源として利用可能な時期を迎える一方、木材価格の下落等の影響により、森林の手入れが十分に行われず、国土保全など森林の多面的機能の低下が懸念される事態になっている。この状況を克服するために、木を使うことにより、森を育て、林業の再生を図ることが国策と位置付けられたのだ。木構造推進室が進める「非住宅」市場への取り組みは、国策に合致した社会的貢献の意味合いも持つ。一方、それら外的要因のみならず、内的要因があることを木構造推進室長の至田康二は指摘する。
「私が入社した年の国内戸建住宅着工数は一定の規模があったものの、現在、マーケットは伸び悩みの傾向にあります。そうした環境の中で非住宅への取り組みは必然的なものといえますが、同時に内的な要因もあります。木材建材事業本部は、商社として国内外から資材を調達し販売してきました。しかし現在、商社を介在するビジネスモデルは変わりつつあります。サプライヤーが直接お客様に供給するような形態も生まれています。流通におけるコミッションだけでは、その存在価値が問われる状況になりつつある。厳しい競合、供給過多の中で生き残っていくためには、新たな付加価値を提供していく必要があります。そこで私たちは、元請けであるゼネコンに対してサブコンとして、工事を提案し請負う取り組みを開始しました。」(至田)
だが、流通の存在価値が問われているという問題意識は、競合する他商社も同様に抱いており、「プラス工事」の一体化サービスは、すでに競合他社が先行している。追う立場である住友林業は、どのような戦略で市場に臨んでいるのだろうか。