三重県多気町――三重県のほぼ中央に位置するこの町は、古来より伊勢本街道、和歌山別街道、熊野街道が通過する交通の要地として発展、県内の海産物や農産物の集積地でもあった。しかし20世紀後半から、他の多くの地方自治体同様に人口減少、高齢化が進んでいる。この状況が継続すると、地域集落の維持や地域資源の保全ができず、限界集落を作り上げてしまう恐れもある。多気町は、こうした課題を解決し地域の活性化を促すため、多角的な検討を進めた結果着手したのが、商業複合施設「VISON」プロジェクトである。三重県や多気町といった行政と住友林業グループを含む複数の民間企業、三重大学などの教育機関が協力して推進する「産官学」一体の地域活性化事業だ。
住友林業グループが「VISON」への参加を打診されたのは、2017年。それは、「VISON」の中核施設となるホテルの開発・運営事業への参加要請だった。住友林業グループとして初めての試みであり、ホテル開発・運営に関するノウハウ・知見の集積はなかったが、地域活性化に資するプロジェクトであったため参加を決めた。住友林業グループは、これまで地域経済の発展・雇用の創出を通じて、地方創生に貢献する活動を進めてきた。また、地域社会と協働で、植林によるカーボン・オフセットを実施するなど、地域活性化支援を社会的使命ととらえ積極的に取り組んできた。今回も、そうした取り組みの延長線上にあると判断。同年8月には、具体的な建物の基本計画が開始されたのである。翌2018年、ホテル開発・運営事業への正式参画を決定、生活サービス本部が担当することとなった。生活サービス本部は、社会課題の解決や多様なライフスタイル・価値観に寄り添う事業を通し、高い公益的価値を生み出すことをミッションとしており、具体的には全国20ヶ所の介護施設運営や保険事業を営むグループ会社を統括している。生活サービス本部長の髙桐邦彦は、今回の住友林業グループの「VISON」への参加について、「住友林業グループらしさ」を指摘する。