ニュースリリース(2015年)

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2015年04月03日

住友林業株式会社
土浦市

~茨城県指定天然記念物 “真鍋のサクラ”を後世へ~
世界で初めて※1ソメイヨシノの組織培養による苗木増殖に成功

  住友林業株式会社(社長:市川 晃 本社:東京都千代田区 以下、住友林業)は、土浦市(市長:中川 清)および真鍋の桜保存会※2(会長:菊田 和衛)の依頼により、茨城県土浦市立真鍋小学校(校長:廣原 高志 住所:茨城県土浦市真鍋 以下、真鍋小学校)の校庭に植えられている茨城県指定天然記念物である“真鍋のサクラ”(ソメイヨシノ)の保護・保存を目的として後継稚樹の増殖に関する研究開発を進めておりましたが、このたび、バイオテクノロジーの一手法である組織培養法によって、ソメイヨシノの増殖に世界で初めて成功しましたので、お知らせいたします。


茨城県指定天然記念物“真鍋のサクラ”

  “真鍋のサクラ”は、ソメイヨシノという日本を代表する桜の品種であり、1907年(明治40年)に同校の卒業生によって植樹されてから今年で108年を迎え、同品種では青森県弘前公園に植えられている桜に次いで古いものと推定されています。
  これまで、ソメイヨシノは“接ぎ木”※3による増殖が一般に広く用いられており、今回の組織培養法による苗木の増殖成功は世界初の例となります。

“真鍋のサクラ”について

  真鍋小学校の卒業生により1907年に植樹された5本のソメイヨシノ“真鍋のサクラ”は、当初校庭の一隅に植えられましたが、複数回にわたって行われた校庭の拡張工事により、校庭の真ん中の位置を占めるようになりました。 樹齢100年を超えた現在も、春には美しい花を咲かせ、同校の児童のみならず保護者や一般の方々が多く訪れる桜の名所として、1956年と2002年に「真鍋のサクラ」の名称で茨城県の天然記念物に指定されました。
  また同校では、1982年より児童主催の「新入生を迎えるお花見集会」を開催しており、新6年生が新1年生を負ぶって桜のまわりを一周する行事が恒例となっており、毎年多くのテレビ放送や新聞などで紹介されています。

組織培養による増殖を行なった背景

  ソメイヨシノは、江戸時代末期に染井村(現在の東京都豊島区駒込)で育種され、接ぎ木増殖によって全国各地に広がったと言われています。各地で植栽されたソメイヨシノは、周辺が道路舗装で覆われたり、お花見などで土が踏み固められるなど、近年では根の機能が著しく低下しており、枯死や樹木の寿命が短縮化することが危惧されています。しかし一方では、水はけがよく、日光がよく当たる場所ではソメイヨシノも100年以上生育することが分かってきています。特に、“真鍋のサクラ”のように樹齢100年を超えるソメイヨシノが一ヵ所に5本も残っている事例は非常に珍しく、今後、ソメイヨシノの植生を研究する上でも貴重なサンプルと考えられます。
  土浦市および真鍋の桜保存会では、この貴重な桜を後世に受け継いでいくため、様々な樹木の組織培養・苗生産技術を有する住友林業へ技術協力を依頼。これを受けた住友林業筑波研究所では、同技術による真鍋のサクラの増殖技術の研究開発に着手し、このたびの組織培養による苗木増殖に成功しました。
  また組織培養法で増殖した苗は、対象となる樹木の樹齢と比較して“幼若化(若返り現象)”する可能性が高いといわれているほか、病虫害への感染も少ないことから、保護・保存方法として最適な手法であると期待されています。

今後の取り組み ~“真鍋のサクラ”を東日本大震災の被災地復興応援として寄贈~

  このたび組織培養で増殖した苗は、“真鍋のサクラ”の保護・保存に加え、土浦市および真鍋小学校の景観維持や文化の継承に大きく寄与するものであると考えております。住友林業グループと土浦市は、真鍋のサクラの植生について、今後も引き続き調査研究を進めるとともに、真鍋小学校の文化を後世に渡って守り、皆さまに楽しんでいただけるよう努めてまいります。
  増殖した桜の苗木は真鍋の桜保存会を通じて東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市などに寄贈される予定です。

※1 学術資料検索サイト Web of science/Google Scholar/J DreamⅢ 調べ
※2 “真鍋のサクラ”の保護・保存を目的に2008年真鍋小学校の卒業生が中心となって設立された団体
※3 2個以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着し、1つの個体とする手法

ソメイヨシノの古木からの苗木増殖

  最近、これまでのソメイヨシノとは花の形や色が異なるサクラが“ソメイヨシノ”として流通しているという情報が業界関係者から寄せられています。住友林業グループでは、ソメイヨシノという貴重品種の原形となる遺伝子を確実に承継するため、同品種の保護・保存を開始いたしました。具体的には、幾度にも及ぶ増殖により本来のソメイヨシノとは違う形質になってしまっている可能性がある若いソメイヨシノから増殖を行うのではなく、原木から増やされた可能性が高い樹齢100年程度のソメイヨシノを各地域で見出し、各ソメイヨシノのDNA鑑定を行った後、それらのソメイヨシノから苗木を増殖することといたしました。選抜したソメイヨシノの古木は、各地域の標準木に指定し、今後はそれらの古木から増殖された苗木を台木として接ぎ木苗生産を行う予定です。これにより、園芸的にも文化的にも貴重な桜であるソメイヨシノの形質が守られるほか、形質が確認されたソメイヨシノとして付加価値がつくことから、各地域の種苗生産業の発展に寄与できればと考えております。なお、現在までに品種のDNA鑑定が完了している古木は、関東エリアでは“真鍋のサクラ”、東北では“岩手県大槌町の桜”、関西では“醍醐寺のソメイヨシノ”があり、今後、九州、中国、四国、北陸等で各地域の標準木を選出したいと考えております。
  また住友林業では、今回開発した技術をもとに全国の名木・古木の増殖に関するご相談をお受けしていく予定です。
詳しくは、担当部署である「森林・緑化研究センター」(WEBサイト http://sfc.jp/flrc/)までお問い合わせ下さい。

「真鍋のサクラ研究プロジェクト」 これまでの取り組み

2012年   3月   真鍋の桜保存会より住友林業へ“真鍋のサクラ”の組織培養増殖に関する相談依頼
2012年   4月   土浦市より同保存会および住友林業へ“組織増殖許可書”を発行
“真鍋のサクラ”の増殖に着手
2012年   5月   剪定枝を材料として採取
2014年   1月   組織培養による稚樹の増殖に成功
2015年   3月   すべての培養条件を確認完了・確定

組織培養法による増殖施術概要 【組織培養の流れ】

冬芽を採取し、その中から芽の分裂組織(茎頂(けいちょう)部)だけを顕微鏡下で摘出する。
茎頂部を試験管に移し、真鍋のサクラ用に開発した培養液を中に入れ、垂直に回転培養することにより、大量の芽(多芽体(たがたい))を生産する。
多芽体を固体培地で培養することにより、多芽体から芽を伸長させる。
伸長した大量の芽(シュート)を1本ずつ切り分け、発根を促す培養液を添加した人工培養土に植えつけると、 4週間程度で発根し、完全な植物体(幼苗)が再生される。ここまでは、無菌条件下で行なわれる。
外の条件に慣らすため温室内で育苗する(順化処理)。


剪定枝を材料として採取
芽の中から分裂組織(茎頂部) だけを顕微鏡下で摘出

 


芽多体(培養3ヶ月目)


人工土壌に植え付けた幼苗(培養6ヶ月後)

 


無菌条件のビーカーから出された苗木

以上

《お問い合わせ先》
住友林業株式会社
コーポレート・コミュニケーション室 大西・西嶋
TEL:03-3214-2270

土浦市教育委員会文化課 宮本
TEL:029-862-1941

《組織培養のご相談に関するお問い合わせ先》
住友林業株式会社
森林・緑化研究センター
WEBサイト http://sfc.jp/flrc/

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