【木の効果】
研究成果ライブラリー

住友林業
E08
  • 生産性効果

木質空間は集中力が長続き!

ここがPoint!
  • 長時間の集中作業を比較
    長時間にわたり、いくつかの集中作業をやる場合に、木質空間と非木質空間で差が見られた。
  • 後半で木の空間が逆転
    一時的な記憶が必要な作業をする場合、最初の内は非木質空間で成績が良い傾向だが、後半になると木質空間で成績がよくなる傾向。
  • 木の空間は疲れにくい
    非木質空間に比べて木質空間では疲労や思考力低下が少なく、集中力が長時間持続するのだろう。
逆唱課題の結果

1.背景・目的

本研究では、木質空間によって人間の認知情報処理(ものの見方・考え方)がどのように変化するかを総合的に検証し、特に木質空間が他の空間に対して、知的作業性を向上させ、作業中の感情や疲労に好影響を及ぼすという仮定のもと他覚的な検討を行い、木質空間の新たな価値を探ることを目指している。
今回は、知的作業中の感情、疲労度に空間の質(木質、非木質)が影響を与えるか否かを心理学的手法によって調べることを目的とした。被験者は、木質、非木質のいずれかの空間にて、様々な課題や作業を行い、その前後の疲労度、気分・感情を計測した。

2.実験概要

被験者

大学生および大学院生51名(男性28名、女性23名)であり、平均年齢は21.1歳(SD=1.5)であった。

実験環境

実験は木質空間および非木質空間で行われた。いずれも縦500cm×横258cm×高さ245cmの空間であり、木質空間には長手方向の壁1面に国産杉無垢材が床と水平方向に貼り付けられた。各実験空間には縦120cm×横75cm×高さ72cmの白い天板机と茶色のイスを二つずつ配置した。机の一方は被験者用、もう一方は実験者用であった。被験者用の机は窓側の壁から100cm 離れた右壁面に設置し、デスクトップパソコン(DELL)および液晶ディスプレイ(EIZO)を配置した。実験者用の机は入口側の壁面に設置し、質問紙および認知課題の回答用紙を配置した。高さ110cm×幅195cmの窓枠には茶色のブラインド、出入り口には外から見えないように高さ186cm×幅140cm のクリーム色のパーティションを設置した。

実験課題

実験は質問紙と認知課題で構成された。認知課題は、ウェクスラー式成人知能検査(WAIS-III、Wechsler、2006)に6種類の課題(絵画完成、絵画配列、行列推理、逆唱、語音整列、積木模様)および操作的ワーキングメモリ(OSPAN)の計7種類であった。
被験者の気分・感情(PANAS およびIPANAT:それぞれ、顕在的および潜在的気分評価)、疲労度(POMS)、環境に対する印象を評価する質問紙の4つを実施した。

3.結果

実験の結果 空間の差異が認知情報処理に与える影響として、逆唱課題の成績は、図1の通り前半では木質空間よりも非木質空間で成績が高いという統計的に有意な傾向がみられた。しかし、後半になると、木質空間が非木質空間よりも成績が高くなる結果となった。
また、顕在的な気分評価であるPANASには各実験空間への入室直前(プレ)、および入室時1間後(ポスト)に行ったが、分析はポストの評定値からプレの評定値を差し引いた差分に対して実施した。図2の通りポジティブ気分に関しては、木質空間で高くなったのに対して、非木質空間では低くなったことが統計的に認められた。
さらに、POMSにおける疲労度および思考力低下の評価では、図3の通り非木質空間よりも木質空間で変化量が小さい、すなわち疲労度および思考力低下が少ないことが統計的に認められた。

図1 逆唱課題の結果
図1 逆唱課題の結果
図2 PANASの結果
図2 PANASの結果
図3 POMSの結果
図3 POMSの結果

4.考察

認知課題成績については、逆唱課題という比較的単純なワーキングメモリを要求する課題で、前半に非木質空間で木質空間よりも成績が高くなるという傾向が示された。ただし、後半では非木質空間よりも木質空間で成績が高い可能性を示す可能性のある結果を得ている。これは、非木質空間では疲労や思考力低下によって集中力が長続きしないが、木質空間であれば疲労や思考力低下が少なく、集中力が長時間持続するためと考えられる。

引用文献:
「木質空間・非木質空間の差異が作業中の感情および疲労度に与える影響」日本建築学会 建築計画 (2014) 609-610, 2014-09-12